マップ8 時間軸——幸福はいつ実現するか
この地図の結論
幸福が「いつ」実現するかは五つに分かれ、現代の尺度はそのうち一つ(現世の今の満足)しか測っていない。現世のみに置くのは西洋近代の哲学、「今ここ」に集約するのは宗派を越えて神秘主義潮流と非目的論的哲学(禅・道家(老荘)・ストア派・エピクロス派・スーフィズム・カバラ・ハシディズム・観想〔静かに神や真理を見つめる祈り〕)、世代・祖先に置くのは先住民系と神道・儒教(原始)、永遠に置くのは一神教とプラトン・カント・ニーチェである。実務上の帰結:「今の生活に満足しているか」という問いは、世代軸(祖先から子孫へ続く生の連続)と永遠軸(時間の外にあるものとの関係)を構造的に取り落とす。長期的な幸福を扱う組織や地域では、「七世代先」型の時間軸を設計に入れる先住民系の発想が、持続可能性の議論と直接つながる。
この地図の目盛りの定義
◎○△×の件数は「47の思想をこの見方で分類した内訳(=見方の多様さ)」であって、実証研究の裏づけや、思想の優劣を表すものではありません。
| 目盛り | 定義 |
|---|---|
| 現世 | この世の生のうちに幸福が実現する。無事・繁栄・関係・徳の実践などが、死ぬまでの人生の内側で語られる |
| 来世・輪廻 | 死後の生(天国・浄土・来世の生まれ変わり)において、あるいは輪廻(生まれ変わりの繰り返し)からの離脱として幸福が実現する |
| 今ここ | 過去・未来ではなく、この瞬間の在り方そのものが幸福の場である。時間の長さではなく現在の質を問う |
| 世代・祖先 | 幸福が個人の一生を超え、祖先から子孫へ続く生命の連続(家・氏族・土地)のなかで語られる |
| 永遠 | 時間の外にあるもの(神・イデア・道・梵)との関係や一致において幸福が成立する。時間的な持続とは異なる |
| 思想 | 現世 | 来世・輪廻 | 今ここ | 世代・祖先 | 永遠 |
|---|---|---|---|---|---|
| インド系(沙門) | |||||
| 仏教(上座部) | ● | ● | |||
| 仏教(大乗) | ● | ● | |||
| 禅 | ● | ||||
| 密教・チベット仏教 | ● | ● | |||
| 仏教(浄土) | ● | ● | |||
| 仏教(日蓮) | ● | ● | |||
| インド系(ヴェーダ) | |||||
| ヒンドゥー(ヴェーダーンタ) | ● | ● | |||
| ヒンドゥー(ギーター) | ● | ● | ● | ||
| インド系(沙門) | |||||
| ジャイナ教 | ● | ● | |||
| インド系 | |||||
| シク教 | ● | ● | |||
| 東アジア | |||||
| 儒教(原始) | ● | ● | |||
| 新儒教 | ● | ● | |||
| 道家(老荘) | ● | ||||
| 道教 | ● | ● | ● | ||
| 神道 | ● | ● | ● | ||
| 修験道 | ● | ● | |||
| アブラハム系 | |||||
| ユダヤ教 | ● | ● | ● | ||
| カバラ・ハシディズム | ● | ● | |||
| キリスト教 | ● | ● | |||
| キリスト教観想的思想 | ● | ● | |||
| イスラム教 | ● | ● | ● | ||
| スーフィズム | ● | ||||
| 古代地中海哲学 | |||||
| プラトン | ● | ||||
| アリストテレス | ● | ||||
| ストア派 | ● | ||||
| エピクロス派 | ● | ||||
| キュニコス派・ピュロン主義 | ● | ||||
| 西洋近現代 | |||||
| 功利主義 | ● | ||||
| カント | ● | ||||
| ニーチェ | ● | ● | |||
| 実存主義 | ● | ||||
| プラグマティズム | ● | ||||
| 現代の徳倫理学 | ● | ||||
| ケイパビリティ・アプローチ | ● | ||||
| 世俗的人文主義 | ● | ||||
| アドラー(個人心理学) | ● | ||||
| ユング(分析心理学) | ● | ||||
| ポジティブ心理学1.0 | ● | ||||
| ポジティブ心理学2.0 | ● | ||||
| ポジティブ心理学3.0 | ● | ● | |||
| 関係的・土着 | |||||
| Ubuntu | ● | ||||
| アフリカ哲学の共同体主義 | ● | ||||
| 先住民的世界観(総論) | ● | ||||
| スマック・カウサイ | ● | ||||
| マオリ | ● | ||||
| アイヌ | ● | ||||
| 北米先住民(Hózhó/Mino-Bimaadiziwin) | ● | ||||
●=その思想が幸福の実現の場として重視する時間
読み取れること
・「今ここ」に集まるのは禅・道家(老荘)・ストア派・エピクロス派・スーフィズム・カバラ・ハシディズム・キリスト教観想的思想——宗派を越えて、神秘主義潮流と非目的論的哲学は「今」に集約する。
・「世代・祖先」を重視するのは儒教・神道・道教と土着思想7行。幸福の時間が個人の一生を超えて前後に延びる。
・西洋近代(功利主義〜世俗的人文主義)はほぼ「現世」一択。カントとプラトンだけが「永遠」を要請する。
・「来世・輪廻」を前提にしつつ「今ここ」を強調する(仏教(上座部)・仏教(大乗)・密教・チベット仏教・イスラム教)という両立が、宗教思想では珍しくない。
・「今ここ」に集まるのは禅・道家(老荘)・ストア派・エピクロス派・スーフィズム・カバラ・ハシディズム・キリスト教観想的思想——宗派を越えて、神秘主義潮流と非目的論的哲学は「今」に集約する。
・「世代・祖先」を重視するのは儒教・神道・道教と土着思想7行。幸福の時間が個人の一生を超えて前後に延びる。
・西洋近代(功利主義〜世俗的人文主義)はほぼ「現世」一択。カントとプラトンだけが「永遠」を要請する。
・「来世・輪廻」を前提にしつつ「今ここ」を強調する(仏教(上座部)・仏教(大乗)・密教・チベット仏教・イスラム教)という両立が、宗教思想では珍しくない。