47の思想——幸せの読み方カード
1枚のカードは12の節でできています。ひとことで言うと/そもそもどんな思想?/この思想が言う「幸せ」/幸せに近づく道/幸せのかたち(8つの目盛り)/現代の研究から/系譜と発達段階/現代の言葉に翻訳すると/気をつけたいこと/現代へのヒント/もっと知りたい/用語解説。同じ8つの目盛りが全カードにあるので、2枚を並べれば違いが見えます。
幸せの動き(マップ1の型)で絞り込む: すべて①開花②除去・回復③認識転換④関係構成⑤贈与・応答⑥生命力・身体⑦副産物⑧制度・集計適用不能
インド系(10)
仏教(上座部)
渇きの火(渇愛=欲しがり続ける心)が吹き消されたとき(涅槃)、もう何も追い求めなくてよい安らぎが残る
②除去・回復
仏教(大乗)
自分ひとりの解脱(迷いの世界からの脱出)を後回しにして一切衆生(すべての生きもの)の救いを先に置くとき、はじめて世界と自分が共に開かれる
④関係構成
禅
悟りを求める心そのものをやめ、ただ坐る(只管打坐)そのことがすでに仏の姿であると知る
③認識転換
密教・チベット仏教
煩悩(怒り・欲などの心の乱れ)を捨てるのではなく修行の燃料に変え、この身このままで仏となる(即身成仏)歓び
⑥生命力・身体
仏教(浄土)
自分の力では救われないと知って阿弥陀仏の本願(すべての人を救うという誓い)にすべてを委ねたとき(他力)、この身このままで救いが定まり、報恩(お礼)の念仏とともに安心して生きる
⑤贈与・応答
仏教(日蓮)
法華経を身をもって受け持ち(南無妙法蓮華経と唱える唱題)、苦難をむしろ正しい道の証しとして、この世界そのものを仏の国土に変えていく(立正安国=正しい教えで国を安らかにする)なかで生き抜く
④関係構成
ヒンドゥー(ヴェーダーンタ)
「私は有限な個人だ」という思い込みが錯覚だと見抜いたとき(本当の自己=アートマンは宇宙の根源=ブラフマンと同一)、存在そのものが歓喜になる
③認識転換
ヒンドゥー(ギーター)
結果への執着を手放して自分の務めを果たすとき(無執着の行為)、行為そのものが神への捧げ物(バクティ=神への信愛)になる
⑤贈与・応答
ジャイナ教
あらゆる生きものを傷つけない(アヒンサー=不殺生)徹底が、魂にこびりついた業(行為の残りかす)を落として魂を軽くし、無限の知と至福へ浮上させる
②除去・回復
シク教
神の名を唱え、正直に働き、得たものを分かち合う(シク教の三つの柱)なかで、心は自ずと静かな歓喜(サハジ)に落ち着く
④関係構成
東アジア(6)
儒教(原始)
親子・君臣・友人といった人と人の関係(人倫)のなかで徳を修め、学ぶことを楽しみ、天から与えられた役割(天命)に安んじて生きる充実
④関係構成
新儒教
私欲を去って天理(宇宙にも人にも通じる理法)と一体になったとき自ずから湧く、貧富に左右されない楽(孔子と顔回の楽)
②除去・回復
道家(老荘)
作為(人為的な計らい)を捨て、万物の自ずからなる働き(無為自然)に身を委ねた、無心で自在な遊び(逍遥遊)
③認識転換
道教
気(生命エネルギー)を養い、身体と精神を全うして長生(不老長寿)に至り、身体ごと道(宇宙の根源的な働き)に合一する充足
⑥生命力・身体
神道
穢れ(生命力をくもらせるもの)を祓い、清き明き心(隠しごとのない素直な心)で、神々と共に今この生を明るく生き栄えること
②除去・回復
修験道
山に入り、いったん死んで生まれ変わる行(擬死再生)を経て身体ごと仏の働きを現し、その験力(修行で得た力)で人々の現世の安寧を実現すること
⑥生命力・身体
アブラハム系(6)
ユダヤ教
神との契約(トーラー=律法)に忠実に生き、共同体と世界を正していく(ティクン・オラム=世界の修復)なかで与えられる全体的な充足(シャローム)
⑤贈与・応答
カバラ・ハシディズム
神への密着(デヴェクート)に至り、この世に隠れている神性を喜びのうちに開く生
⑤贈与・応答
キリスト教
神との交わりにおいて人が真に人となる、自分の力ではなく恩寵(神からの無償の贈り物)として与えられる至福
⑤贈与・応答
キリスト教観想的思想
祈りと修行による心の純化を経て神の働き(エネルゲイア)にあずかり、被造物のままで神に似たものへ変えられていく(神化)歩み
⑤贈与・応答
イスラム教
神への帰依(イスラーム=すべてを神にゆだねること)と想起(ズィクル=神を思い出し続けること)によって心が鎮まり、現世と来世の双方で成功する生
②除去・回復
スーフィズム
自我が神のうちに消え(ファナー)、神によって生き直される(バカー)ときに開かれる境地
⑤贈与・応答
古代地中海哲学(5)
プラトン
魂の三部分(理性・気概・欲望)が、善のイデア(善そのものの原型)を知る理性に統べられ、内的に調和している状態
①開花
アリストテレス
徳(人間としての優れた性質)に基づく魂の活動を、一生涯にわたって十全に発揮しきる状態(エウダイモニア)
①開花
ストア派
宇宙の理法(ロゴス)に同意し、自分次第のもの(判断と意志)だけを善悪とみなして生きる、揺るがない状態(アパテイア)
③認識転換
エピクロス派
身体に苦痛がなく心に動揺がない安定状態(アタラクシア)を、思慮と友愛によって保つこと
②除去・回復
キュニコス派・ピュロン主義
世間の慣習も(キュニコス派)、「これが正しい」という信念そのものも(ピュロン主義=判断を保留する懐疑主義)手放したとき、求めずして訪れる自足と平静
⑦副産物
西洋近現代(13)
功利主義
快や苦を感じうる者すべて(人間以外の動物も含む)の快の総和が最大になる状態こそ、幸福であり善である
⑧制度・集計
カント
幸福は人生の目的ではなく、道徳的に正しく生きて幸福に値する者になることこそ、人間に課された課題
適用不能
ニーチェ
幸福とは力が増大している感覚(力への意志)であり、自分の運命を「然り」と肯定しうる強さ(運命愛)
⑦副産物
実存主義
幸福ではなく、不安と無意味を引き受けて自ら意味を創り出す生の本来性(自分の生を自分で引き受けること)が問われる
⑦副産物
プラグマティズム
幸福とは完成した状態ではなく、経験が絶えず成長し続ける過程(成長そのもの)である
①開花
現代の徳倫理学
徳(勇気・正直・思いやりなど)を発揮することそのものが幸福の一部をなす、人間としてよく生きること(アリストテレスの現代的な復興)
①開花
ケイパビリティ・アプローチ
善き生とは、自分が価値あると考える生き方を実際に選べる実質的自由(ケイパビリティ=できることの幅)の広がりである(センとヌスバウムの理論)
⑧制度・集計
世俗的人文主義
神を前提にしないこの世界で、理性と共感により、今ここでの人間の充実を実現すること
①開花
アドラー(個人心理学)
自分は共同体の役に立っているという感覚(共同体感覚)を持って生きられれば、劣等感は勇気に変わり幸福は自ずと訪れる
④関係構成
ユング(分析心理学)
幸福は追い求めるものではなく、影(自分が認めたくない側面)を含めた自分の全体を生きる個性化(自分らしい全体になっていく過程)の途上で、悲しみと対をなして訪れるもの
⑦副産物
ポジティブ心理学1.0
快い感情・没頭・意味・良い関係・達成(PERMA)という測れる要素を、自分の強み(性格の良い面)を使って増やしていけば、幸福(フラーリッシング=開花)は科学的に築ける
①開花
ポジティブ心理学2.0
苦しみを避けるのではなく意味へ変え、明るさと暗さの両方を抱えて生きるとき(悲劇的楽観)、幸せは浅い快から「成熟した幸せ」へ深まる
⑦副産物
ポジティブ心理学3.0
幸せは個人の中だけにあるのではなく、文化・関係・制度・生態系という複雑なシステムのなかで立ち上がる——だから幸せの物差しも一つではない
④関係構成
関係的・土着(7)
Ubuntu
人は他者を通してはじめて人になる(南部アフリカの人間観)——調和のうちに人間性を実現すること
④関係構成
アフリカ哲学の共同体主義
共同体の中で徳ある人格を達成し(人格は生まれつきではなく共同体との関係のなかで獲得される)、関係の網を正しく保つこと
④関係構成
先住民的世界観(総論)
人以外の存在(動物・植物・精霊)・祖先・土地との関係を正しく結び直し、生を続かせること
④関係構成
スマック・カウサイ
大地(パチャママ=母なる大地)と共同体と釣り合いながら、満ち足りた生(スマック・カウサイ=アンデス先住民の「良く生きる」)を共に生きること
④関係構成
マオリ
先祖から受け継いだ関係とマナ(人や物に宿る霊的な力・威信)を保ち、四つの柱(身体・心・家族・霊性)が均衡する状態
④関係構成
アイヌ
カムイ(熊・火・道具などに宿る神々)と人が互いに贈り合い、暮らしと心が「ピリカ(良い)」であること
④関係構成
北米先住民(Hózhó/Mino-Bimaadiziwin)
人も土地も祖先も「すべての関係(親族)」として結ばれ、調和と均衡(ナバホの Hózhó、アニシナベの Mino-Bimaadiziwin=良い生き方)のうちに善く生きること
④関係構成