どんな調査か
ブータン国民総幸福(GNH)指数調査(Gross National Happiness Index / GNH Survey)は、ブータン研究・GNH研究センター(Centre for Bhutan & GNH Studies、CBS)が実施する全国調査である。ブータンは、国内総生産(GDP)ではなく国民総幸福(GNH)を国の目標に掲げている。公式ページは、GNH指数を「ブータン国民の幸福とウェルビーイングを全体的に測る方法」と位置づけ、GNHを高める政策づくりのための測定手段だと説明している。この指数は「GNH幸福度調査」とも呼ばれる。調査は2010年から2022年にかけて不定期に行われ、対象は15歳以上のブータン国民である。
何をどう測っているか
GNH指数は、9つの領域と、それを支える33の指標で組み立てられている。9領域は、生活水準、教育、健康、環境(生態系)、地域の活力、時間の使い方、心理的ウェルビーイング、良い統治、文化の回復力と振興である。調査では、一人ひとりについて各指標が一定の水準(閾値=「充足」とみなす境目)を満たしているかを判定し、その達成状況から国全体のウェルビーイングを分析する。満たしている指標の割合をもとに0〜1のGNH指数を算出する。さらに、満たしている指標の多さによって人々を「深く幸せ」「広く幸せ」「狭く幸せ」「幸せでない」の4つに分類する。公式ページによれば、9領域に沿って38の下位指数、72の指標、151の変数が整えられており、ブータン国民の幸福を定義・分析するのに使われている。2022年調査の回答者は11,052人である。
これまでの歩み
GNH調査は2010年から2022年にかけて、決まった周期を持たない横断調査(その時点の人々を一度ずつ調べる方式)として実施されてきた。直近の2022年調査では、15歳以上の11,052人が対象となった。今回の元資料には各回の報告書の要約が含まれていない。そのため、回ごとのテーマや結果の移り変わりはここでは扱わない。測定の土台にある考え方として、公式ページはGNHの「4つの柱」を示している。4本の柱は、良い統治、持続可能な社会経済開発、文化の保全と振興、環境保全である。これらを詳しく展開したものが9領域であり、9領域は測定・指数・政策審査ツールの基礎とされている。
分かってきたこと
幸福は多くの要因が絡み合って生まれるという枠組み
公式ページは、9領域の構成そのものが、GNHの観点では互いに関連する多くの要因が幸福の条件づくりに重要だと示していると述べている。主観的な気持ちだけを尋ねるのではなく、生活水準・教育・健康・統治・文化・環境などを一つの指数にまとめている。GNHの多次元性と、要素どうしの相互依存性が強調されている。
物質的な安定も幸福の一部として測る
GNHは物質的な豊かさを否定するものではない。公式ページによれば、物質的な安定は重要な要素の一つとして数えられている。人々が十分で公平な生活水準を享受しているかどうかの評価も、調査に含まれている。
人間以外の生命や生態系も幸福の範囲に入る
公式ページは、人間の幸福を他の生命のウェルビーイングと切り離さない立場をとる。そのため、生態系の多様性と回復力がGNHの測定に含まれている。環境保全が柱とされるのは、水やエネルギーを供給するからだけではない。豊かな色や光、汚れのない風、自然の音の静けさといった、人を癒やす刺激をもたらすと考えられているためである。
物質と非物質のバランスがGDPとの違い
公式ページは、物質的な開発と非物質的な開発の均衡、そしてGNHの多次元的で相互依存的な性質こそが、国の進歩の尺度としてGNHをGDPと区別する特徴だとしている。GNH経済は、家庭や家族による社会的・経済的な貢献を重んじる。自由時間や余暇も、幸福に果たす役割があるため重視される。
得点の低い分野を政策で手当てするための道具
GNH指数は、人々の幸福とウェルビーイングを分析するだけのものではない。公式ページによれば、調査で得点の低かった分野について、より良い条件をつくる政策をどう設計するかの指針にもなる。文化については、文化の回復力(文化的アイデンティティ・知識・慣習を保ち発展させ、他の規範や理想からの困難を乗り越える力)が幸福に寄与すると考えられている。