幸せの名言集

社会と幸福の名言30選

「最大多数の最大幸福こそ、道徳と立法の基礎である」

The greatest happiness of the greatest number is the foundation of morals and legislation.

— ジェレミー・ベンサム 『道徳および立法の諸原理序説』(1789)

「最大幸福原理」

社会や法律の善し悪しは、伝統や権威ではなく「できるだけ多くの人が、できるだけ幸福になっているか」で測るべきだ、という原理。幸福を社会の評価基準に据えた点で、現代の幸福度調査やウェルビーイング政策の源流にあたる

心理学では
ベンサムの原理は、幸福を「経験効用(実際に味わった快・不快)」として測り、人々の幸福を足し合わせて社会を評価する発想である。Kahnemanら(1997)はこの考えを現代に引き継いだ。彼らは、経験効用は測定できるものであり、人が選ぶものと実際に心地よく感じるものはずれうると論じた。続くKahnemanら(2004)は、働く女性に前日の出来事と気分を振り返ってもらう「一日再構成法」を開発した。その結果、人と交流する時間は気分がよく、通勤の時間は気分が低いという関連が示された。こうした測定法は、各国の幸福度調査の土台になっている。自分の一日も「何をしたか」と「どう感じたか」を並べて振り返ると、幸福を増やす時間の使い方が見えてくる。 参考:Kahnemanら(1997)「Back to Bentham? Explorations of E…」 ↗/Kahnemanら(2004)「A Survey Method for Characterizing…」
人物
英国の哲学者(1748-1832)。功利主義の創始者
「われらは、世界のまことの幸福を索ねよう。求道すでに道である」

— 宮沢賢治 「農民芸術概論綱要」(1926)

「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」に続く一節

みんなの幸福を探す営みそのものに価値がある

心理学では
この言葉は、心理学でいう「目標追求(goal striving:大切な目標に向かって努力し続けること)」そのものが、達成を待たずに幸福の源になるという見方と重なる。Emmons(1986)は、人が日々追い求めている「個人的努力目標」を調べた相関研究で、自分にとって価値のある目標を持つ人ほど前向きな感情を多く経験していることを示した。またBrunstein(1993)は大学生を一学期にわたって追跡した縦断研究で、心から打ち込んでいる目標が前進していると感じる人ほど、学期を通じて幸福感が上向いていたことを見いだした。心を支えるのはゴールへの到着だけでなく、道を進んでいる手応えである。「みんなの幸せ」という大きな願いも、今日できる小さな一歩に分けて歩み続けることが、日々の充実につながる。 参考:Emmons(1986)「Personal strivings: An approach to…」/Brunstein(1993)「Personal goals and subjective well…」 ↗
人物
日本の詩人・童話作家(1896-1933)。『銀河鉄道の夜』
出典に諸説あり
「国民総幸福(GNH)は、国民総生産(GNP)よりも重要である」

Gross National Happiness is more important than Gross National Product.

— ジグミ・シンゲ・ワンチュク(ブータン第4代国王) 1970年代の発言に基づく国家理念

理念の定式化の経緯には諸説あり

国の進歩は生産量ではなく国民の幸福で測る

心理学では
この名言は、主観的ウェルビーイング(人が自分の人生をどれだけ満ち足りたものと感じているか)を、経済指標以上に大切な社会の物差しとする考え方である。DienerとSeligman(2004)は、豊かな国で所得が大きく伸びても生活満足度がほとんど変わっていないことなどの知見を整理し、幸福の国民指標をつくって政策に生かすよう提言した。Easterlinら(2010)も多くの国の長期データを分析し、経済成長率の高い国ほど幸福度が長期的に伸びているという関連は見られないことを示した。個人の暮らしでも、収入や成果の数字に加えて、人とのつながりや心のゆとりを自分の「進歩」の物差しにすることが、満ち足りた毎日につながる。 参考:DienerとSeligman(2004)「Beyond Money」/Easterlinら(2010)「The happiness–income paradox revis…」
人物
ブータン第4代国王(1955-)。16歳で即位
「GDPは、人生を価値あるものにしているもの以外の、すべてを測っている」

It measures everything, in short, except that which makes life worthwhile.

— ロバート・F・ケネディ カンザス大学演説(1968)

経済指標は幸福の中身を測れない

心理学では
この言葉は、所得や生産量といった客観的な指標と、主観的ウェルビーイング(人が自分の人生に感じる満足や日々の気分)とのずれを突いている。Easterlinら(2010)は多くの国の長期データを分析し、長い目で見ると、経済成長が人生満足度の上昇と結びついていない国が多いことを示した。Diener & Seligman(2004)も研究を幅広く検討し、人間関係や健康、仕事のやりがいが幸福と強く関連するとして、GDPと並ぶ幸福の国家指標を提案している。暮らしの中でも、収入の数字だけでなく、人とのつながりや心の充実を自分なりの指標として時々点検することが、豊かさを見失わない助けになる。 参考:Easterlinら(2010)「The happiness–income paradox revis…」/Diener & Seligman(2004)「Beyond Money」
人物
米国の政治家(1925-1968)。司法長官・上院議員
「幸福は、社会的ネットワークの中を3次の隔たりまで伝播する」

— ニコラス・クリスタキス&ジェームズ・ファウラー Christakis & Fowler (2008) BMJ

あなたの幸福は友人の友人の友人にまで届く

心理学では
この名言は、感情伝染(周囲の人の気分や表情が自分に移る現象)が直接の知り合いを越え、社会的ネットワーク全体に広がることを言い表している。Fowler & Christakis(2008)は、米国フラミンガム心臓研究の参加者を長期にわたって追跡した縦断データを分析し、幸福な人とつながっている人ほど後に幸福になりやすく、その関連が友人の友人の友人まで見られることを報告した。Kramerら(2014)もSNS上の大規模実験で、表示される投稿の感情を操作すると、利用者自身の投稿の感情も同じ向きに変わることを示した。自分の上機嫌は、周囲への贈り物にもなる。家庭や職場で明るいあいさつを一つ交わすことが、まだ会ったことのない誰かの幸福につながる。 参考:Fowler & Christakis(2008)「Dynamic spread of happiness in a l…」/Kramerら(2014)「Experimental evidence of massive-s…」 ↗
人物
米国の社会科学者(イェール大学/カリフォルニア大学)
「一人で見る夢は、ただの夢。みんなで見る夢は、現実になる」

A dream you dream alone is only a dream. A dream you dream together is reality.

— オノ・ヨーコ 発言(ジョン・レノンが引用して広まった)

レノンの言葉として流通するがオノ・ヨーコの言葉

夢の共有が実現の条件である

心理学では
この名言は、共有ビジョン(メンバーが同じ将来像を思い描くこと)から生まれる集合的効力感(「自分たちが力を合わせればできる」という集団の信念)の働きを言い当てている。Stajkovicら(2009)のメタ分析(多数の研究をまとめた分析)では、集合的効力感の高いチームほど成果も高いことが示された。また、van Zomerenら(2008)が社会運動などの研究を統合した分析でも、「自分たちなら変えられる」という感覚を持つ人ほど、社会を変える集団行動に参加しやすいことが分かっている。夢を胸にしまわず、言葉にして仲間と分かち合うことが、実現への第一歩になる。 参考:Stajkovicら(2009)「Collective efficacy, group potency…」 ↗/van Zomerenら(2008)「Toward an integrative social ident…」 ↗
人物
日本出身の芸術家・音楽家(1933-)
「生命のほかに富はない(There is no wealth but life)」

There is no wealth but life. Life, including all its powers of love, of joy, and of admiration.

— ジョン・ラスキン 『この最後の者にも』(1860)

ガンジーが同書に感銘を受け『サルボダヤ』として翻案

富の定義を貨幣から生命の豊かさへ転換する

心理学では
ラスキンの言葉は、富を金銭の量ではなく「主観的ウェルビーイング(人生への満足感や日々の感情の豊かさ)」で測り直す発想である。Diener & Seligman(2004)は、所得と幸福に関する多くの研究を検討した。そして、豊かな国では経済が成長しても生活満足度は同じようには高まっていないことを示し、社会の豊かさを測るには幸福の指標が欠かせないと論じた。また、Kasser & Ryan(1993)の調査では、経済的成功を人生の中心目標に置く人ほど、活力や自己実現の感覚が低く、不安や抑うつが高い傾向が見られた。お金の計算に追われる日こそ、誰と過ごし、何に心を動かされたかという「生命の収支」を振り返る。それが本当の豊かさを育てる助けになる。 参考:Diener & Seligman(2004)「Beyond Money」/Kasser & Ryan(1993)「A dark side of the American dream:…」
人物
英国の思想家・美術評論家(1819-1900)。ガンジーに影響
「人間は、ポリス(共同体)的動物である」

Man is by nature a political animal.

— アリストテレス 『政治学』第1巻

人間の本性は共同体の中でのみ完成する

心理学では
アリストテレスの言葉は、心理学でいう所属欲求(他者と安定したつながりを持ちたいという基本的な動機)にあたる。Baumeister & Leary(1995)は数多くの先行研究を検討した理論論文で、この欲求が人間にとって根源的な動機であり、満たされないと心身の不調につながると論じた。さらにHolt-Lunstadら(2010)は、多数の追跡研究をまとめたメタ分析で、社会的なつながりが豊かな人ほど死亡リスクが低いことを示した。人との結びつきは、心の満足だけでなく生きることそのものを支えている。家族や職場に加えて、地域や趣味の集まりなど複数の居場所を持つことが、よく生きる土台になる。 参考:Baumeister & Leary(1995)「The need to belong: Desire for int…」/Holt-Lunstadら(2010)「Social Relationships and Mortality…」 ↗
人物
古代ギリシャの哲学者(BC384-322)
出典に諸説あり
「一人の子どもを育てるには、村中の人の力が必要である」

It takes a village to raise a child.

— アフリカのことわざ(とされる) 出所不詳

※アフリカの特定言語への帰属は確認されていない

子育ては家族だけでなく共同体の仕事である

心理学では
この名言は、進化人類学や発達心理学でいう「共同養育(アロペアレンティング:親以外の人も子どもの世話を分担すること)」の考え方と重なる。Hrdy(2009)は、人類は祖母や年長のきょうだい、近隣の人々が子育てを分担する「協力的な育児者」として進化してきたと論じた。Sear & Mace(2008)は、さまざまな社会の人口学的研究を検討したレビューで、祖母などの親族が身近にいる子どもほど生存率が高い傾向を示した。子育てを親だけで抱え込まず、祖父母や友人、地域の支援や保育サービスを遠慮なく頼ることが、親と子の双方の安心につながる。 参考:Hrdy(2009)「Mothers and others」 ↗/Sear & Mace(2008)「Who keeps children alive? A review…」 ↗
出典に諸説あり
「地球は、すべての人の必要を満たすだけのものを与えてくれる。しかし、すべての人の強欲を満たすことはできない」

Earth provides enough to satisfy every man's needs, but not every man's greed.

— マハトマ・ガンジー(とされる) 側近ピアレリの記録(1947)に基づく

※定型文はピアレリによる要約とされる

必要(need)と強欲(greed)の区別が持続可能性の鍵

心理学では
この名言の「強欲」は、心理学でいう物質主義(富や所有物を幸せの中心に置く価値観)に重なる。Dittmarら(2014)は多数の研究を統合したメタ分析を行い、物質主義的な価値観が強い人ほど人生満足感が低く、不安や抑うつが高い傾向にあることを示した。またBrown & Kasser(2005)の相関研究では、環境に配慮した行動をとる人ほど主観的幸福感が高かった。さらに、その両方に、成長やつながりを重んじる内発的価値(内側から満たされる目標)が共通して関わっていた。足るを知る姿勢は、自分の幸せと地球の持続可能性を同時に支える。買い物の前に「必要か、欲しいだけか」と一呼吸おき、人との時間や学びに目を向けることが、心と地球の豊かさにつながる。 参考:Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」/Brown & Kasser(2005)「Are Psychological and Ecological W…」 ↗
人物
インド独立運動の指導者(1869-1948)
「幸福な社会の鍵は、所得だけではない。社会的支援、健康、自由、寛容、そして信頼である」

— ジョン・ヘリウェルほか 『世界幸福度報告(World Happiness Report)』の中核的知見

国の幸福度の大部分は6つの要因で説明される

心理学では
この名言は、社会の幸福を所得だけでなく、社会関係資本(人と人とのつながりや信頼という、目に見えない共有の資源)からとらえる視点を示している。Helliwell & Putnam(2004)は、複数の国の大規模調査データを分析し、家族や友人、地域とのつながりが多く、隣人や警察などを信頼できると答えた人ほど、所得や健康を考慮しても生活満足度が高いことを示した。寛容さについては、Dunnら(2008)が実験を行っている。渡されたお金を他人のために使うよう指示された人は、自分のために使った人より、その日の幸福感が高まった。日々の暮らしでは、収入を増やす努力と並んで、身近な人との関係を育て、ささやかな親切を重ねることが、自分と周りの幸福の土台をつくる。 参考:Helliwell & Putnam(2004)「The social context of well–being」/Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」
人物
カナダの経済学者。世界幸福度報告の共同編集者
「誰も置き去りにしない(Leave no one behind)」

Leave no one behind.

— 国連・持続可能な開発目標(SDGs) 「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015)

SDGsの中心理念

最も脆弱な人々の幸福を社会の基準とする

心理学では
この言葉は、社会の豊かさを平均値ではなく分配で測る視点を示している。哲学者ロールズのマキシミン原理(最も不遇な人の状態をできるだけよくすることを優先する考え)とも響き合う。幸福研究でも、Kalmijn & Veenhoven(2005)は、国ごとの幸福度の「ばらつき」(幸福の不平等)を、平均とならぶ社会の質の指標として用いることを提案した。またOishiら(2011)は米国の長期にわたる全国調査を分析し、所得格差が大きい年ほど人々の幸福感が低いことを示した。この関連は公平感や他者への信頼の低さによって説明され、特に低所得層ではっきり表れていた。職場や地域でも、いちばん困っている人の声にまず耳を傾けることが、全体の安心と信頼を育てることにつながる。 参考:Kalmijn & Veenhoven(2005)「Measuring Inequality of Happiness …」 ↗/Oishiら(2011)「Income Inequality and Happiness」
人物
国連加盟193か国が採択
出典に諸説あり
「地球は、先祖から受け継いだものではない。子どもたちから借りているものだ」

We do not inherit the earth from our ancestors; we borrow it from our children.

— ネイティブアメリカンの格言とされる 出所は特定されていない(環境運動を通じて世界に流布)

※部族・人物への帰属は確認されていない(ウェンデル・ベリー由来説など諸説)

所有の向きを反転させる言葉。過去からの相続なら使い尽くしてもよいが、未来からの借り物なら返す義務がある。世代間の責任を「借用」の比喩で一挙に理解させる

心理学では
この名言は、心理学でいう世代継承性(ジェネラティビティ:次の世代を育み、何かを残そうとする関心)を、地球という規模で言い表している。Zavalら(2015)の実験では、アメリカの成人に「自分が後世にどう記憶されたいか」を書いてもらうと、書かなかった人に比べて環境団体への寄付や環境に配慮する意図が高まった。また、行動の遠い先の結果まで考える傾向(将来結果の考慮)が強い人ほど環境への関心が高いことも、Strathmanら(1994)の研究で示されている。買い物や電気の使い方を選ぶとき、「これを子どもたちに返すとき、どんな状態だろうか」と一度思い浮かべることが、無理のない環境配慮につながる。 参考:Zavalら(2015)「How Will I Be Remembered? Conservi…」 ↗/Strathmanら(1994)「The consideration of future conseq…」 ↗
出典に諸説あり
「すべてのものは、つながっている。人間は生命の織物を織ったのではない。その中の一本の糸にすぎない」

Man did not weave the web of life; he is merely a strand in it.

— シアトル酋長(とされる) 1854年の演説とされるが、現存する有名版は後世の脚色を含む

※流布版は1971年のテレビ脚本に由来する部分が大きい(要注記)

人間を自然の支配者ではなく、生命の網の目の一部として位置づける世界観。「生命の織物に何をしようと、それは自分自身にしていることなのだ」と続き、環境思想の記念碑的テキストとして世界に広まった

心理学では
この名言は、心理学でいう「自然とのつながり感」(自分を自然の一部と感じる度合い)を言い表している。Mayer & Frantz(2004)はこの感覚を測る尺度を作った。そして相関研究によって、つながり感が強い人ほど人生満足度が高く、環境に配慮した行動をとりやすいことを示した。Capaldiら(2014)のメタ分析(多数の研究を統合する手法)でも、自然とのつながり感が強い人ほど幸福感が高いという関連が確認されている。なお、この有名な文面は後世の脚色を含むが、そこに描かれた世界観は研究の知見とよく響き合う。通勤路の街路樹や空の色に目を向け、自分も生命の織物の一本の糸だと感じる時間をもつことが、心のゆとりにつながる。 参考:Mayer & Frantz(2004)「The connectedness to nature scale:…」 ↗/Capaldiら(2014)「The relationship between nature co…」
人物
スクワミッシュ族・ドゥワミッシュ族の首長(1786頃-1866)
「マラマ・アイナ ── 大地を慈しみ世話をすれば、大地があなたを養ってくれる」

Mālama 'āina.

— ハワイの伝統的価値観 ハワイ語(マラマ=世話する・慈しむ、アイナ=大地)

現代ハワイの環境教育・観光倫理の中心概念

土地は所有物ではなく、世話をし合う関係の相手であるという考え方。大地を慈しむ(マラマ)ことと大地に養われることは一つの循環であり、人の幸福は土地との関係の健全さと切り離せないとする

心理学では
この名言は、心理学でいう「自然とのつながり(nature connectedness:自分を自然の一部と感じる感覚)」と、自然を世話することが自分の幸福にも返ってくるという互恵的な関係を言い表している。Capaldiら(2014)は多数の研究を統合したメタ分析で、自然とのつながりを強く感じる人ほど、幸福感や活力、ポジティブな感情が高いことを示した。またBrown & Kasser(2005)は、青年と成人を対象とした相関研究で、環境に配慮した行動をとる人ほど主観的幸福感(自分の人生への満足や快の感情)が高く、環境への配慮と自分の幸福は両立することを見いだした。庭や鉢植えの手入れ、近所の清掃、地元の食材選びといった小さな世話を習慣にすることが、土地と自分の双方を養う循環につながる。 参考:Capaldiら(2014)「The relationship between nature co…」/Brown & Kasser(2005)「Are Psychological and Ecological W…」 ↗
「アフリカでは、老人が一人死ぬと、図書館が一つ焼け落ちる」

In Africa, when an old man dies, a library burns to the ground.

— アマドゥ・ハンパテ・バー ユネスコ総会での発言(1960)

文字に残らない口承文化では、長老の記憶こそが歴史書であり百科事典である、という訴え。高齢者を「支えられる側」ではなく共同体の知の保管庫として位置づけ直す言葉として、世界中で引用されてきた

心理学では
この名言は、高齢者を共同体の知の担い手とみなす見方であり、心理学でいう世代継承性(ジェネラティビティ:次の世代を育て、何かを受け渡そうとする関心)と重なる。McAdams & de St. Aubin(1992)は、この関心を質問紙や人生の語りから捉える理論と測定の枠組みを示し、高齢期の発達の中心テーマとして位置づけた。さらにGruenewaldら(2007)は、高齢者を追跡した縦断研究で、自分は他者の役に立っていると感じている人ほど、その後に障害を負ったり亡くなったりする割合が低いことを示した。知を伝える役割は、受け取る側だけでなく伝える側も支えるのである。身近な年長者に昔の話や仕事のコツを尋ねることは、知を受け継ぐと同時に、相手の役割と誇りを支えることにつながる。 参考:McAdams & de St. Aubin(1992)「A theory of generativity and its a…」 ↗/Gruenewaldら(2007)「Feelings of Usefulness to Others, …」 ↗
人物
マリの作家・民族学者(1901-1991)。西アフリカ口承文化の記録者
「いかなる決定も、これから生まれる七世代先の人々への影響を考えて行わなければならない」

In every deliberation, we must consider the impact on the seventh generation.

— イロコイ連邦の教え 「偉大な平和の法」に基づく口承の原則

口承のため文言には揺れがある

目先の損得ではなく、およそ150年先の子孫にとって良いかどうかを意思決定の基準にせよ、という統治の原則。「七世代の原則」として現代の環境思想や企業理念に大きな影響を与えた

心理学では
この教えは、将来の価値を小さく見積もる時間割引(先の利益ほど軽く感じてしまう心の傾向)に、決まりごととして歯止めをかける知恵である。Hauserら(2014)は、資源を次の世代へ引き継いでいく実験を行い、各自の判断に任せると多くの集団で資源が尽きる一方、全員の投票で採る量を決める仕組みにすると資源が保たれることを示した。またKamijoら(2017)の実験では、話し合いに「仮想将来世代」(未来の人々の立場で発言する役)を加えると、将来に配慮した案が選ばれやすくなった。大きな決断の前に「孫の世代ならどう判断するか」と一度立場を替えて考えることが、目先に流されない選択につながる。 参考:Hauserら(2014)「Cooperating with the future」 ↗/Kamijoら(2017)「Negotiating with the future: incor…」 ↗
人物
北米五大湖周辺の先住民連合イロコイ(ホデノショニ)の口承法
「ウレシパ ── 互いに、育て合う」

Ureshipa (raising each other).

— アイヌの言葉 アイヌ語の「ウレシパ(互いに育てる)」。大地は「ウレシパモシリ(育て合う大地)」

人が一方的に自然を利用するのでも、親が一方的に子を育てるのでもない。人と人、人と自然が「互いに育て合う」関係にあるという、アイヌの共生の世界観を表す一語

心理学では
ウレシパは、心理学でいう互恵的な関係(与える側と受ける側が固定されず、支えが循環する関係)の考え方に重なる。Drigotasら(1999)はカップルを対象とした一連の研究で、相手の「なりたい自分」を引き出すように接し合う関係ほど、本人がその理想に近づき、関係の満足も高いことを示した。この現象は、彫刻家が石から像を掘り出す姿になぞらえて「ミケランジェロ現象」と呼ばれる。またBrownら(2003)は高齢の夫婦を追跡した縦断研究で、周囲を支える側に回っていた人ほど死亡リスクが低いことを報告している。育てる側もまた育っているのである。家庭や職場で教える・助ける場面を「互いに育つ機会」ととらえ直すことが、関係と自分の双方を豊かにする。 参考:Drigotasら(1999)「Close partner as sculptor of the i…」 ↗/Brownら(2003)「Providing Social Support May Be Mo…」 ↗
人物
アイヌ民族の伝統的世界観
「隣人が飢えているのに、自分だけ満腹で夜を過ごす者は、真の信仰者ではない」

He is not a believer whose stomach is filled while the neighbor to his side goes hungry.

— ムハンマド(ハディース) ブハーリー等の伝承に基づく

個人の信仰の完成度を、祈りの回数ではなく「隣人の腹具合」で測るという規定。自分だけの救い・自分だけの幸福は、そもそも成立しないという共同体的幸福観の宣言

心理学では
この名言は、幸福を個人の内側で完結するものではなく、周囲の人々の暮らしと結びついた「相互依存的な幸福」としてとらえている。心理学では、向社会的行動(見返りを求めず他者のためになる行い)が、本人の幸福とも関連することが知られている。Dunnら(2008)は実験を行い、お金を自分ではなく他者のために使うよう指示された参加者のほうが、その日の幸福感が高まることを示した。またOishiら(2011)は、米国の長期にわたる全国調査を分析し、所得格差が大きい年ほど人々の幸福感が低く、その背景に他者への信頼感や公平感の低下があることを報告した。身近な人の困りごとに目を向け、食事や時間を分け合うことが、自分自身の満ち足りた夜にもつながる。 参考:Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」/Oishiら(2011)「Income Inequality and Happiness」
人物
イスラム教の預言者(570頃-632)の言行録。喜捨(ザカート)はイスラムの五行の一つ
「あなたのすることは、世界に違いをつくる。だから、どんな違いをつくりたいのかを、決めなければならない」

You cannot get through a single day without having an impact on the world around you. What you do makes a difference, and you have to decide what kind of difference you want to make.

— ジェーン・グドール 講演・著作より

「自分ひとりが何をしても変わらない」という無力感への反論。影響を与えるかどうかは選べない(必ず与えてしまう)。選べるのは、その中身だけだ ── チンパンジー研究と環境活動に生涯を捧げた科学者の言葉

心理学では
この名言は、心理学でいう「向社会的インパクトの知覚(自分の行動が誰かの役に立っていると感じること)」の大切さを示している。「何をしても変わらない」という学習性無力感(無力さを学んで行動をやめてしまう状態)を、行動の中身を選ぶ姿勢へと切り替える言葉である。Grantら(2007)は大学の資金集めの電話係を対象に実験を行い、奨学金を受けた学生と短く対面した群は、対面しなかった群に比べて、その後の電話の粘り強さと集めた金額が高まることを示した。また、Martela & Ryan(2016)の実験では、人を助ける行動が幸福感を高めた。その効果には、他者に良い影響を与えているという感覚が関わっていた。自分の仕事の先にいる誰かを思い浮かべ、つくりたい違いを一つ言葉にしておくことが、行動を続ける力につながる。 参考:Grantら(2007)「Impact and the art of motivation m…」 ↗/Martela & Ryan(2016)「The Benefits of Benevolence: Basic…」
人物
英国の霊長類学者(1934-)。タンザニア・ゴンベでのチンパンジー研究で行動科学を変えた
「企業は社会の公器である」

— 松下幸之助 著書・講話(『実践経営哲学』ほか)

「水道哲学」(良質なものを水道の水のように安く豊富に)とともに知られる

企業は株主や経営者の私物ではなく、社会から人材・資源・信用を預かって活動する「公の器」である。だから事業を通じて社会に貢献し、関わる人を幸せにすることが企業の本来の使命だ、という経営哲学

心理学では
この名言は、心理学でいう組織の「パーパス」(社会に対する存在意義)と、働く人の「向社会的インパクト」(自分の仕事が他者の役に立っているという実感)を、企業経営の根本に据えた考え方である。Gartenbergら(2019)は米国の多くの企業の従業員調査を分析し、自社の仕事に意味を感じ、経営の方向性も明確だと受け止める従業員が多い企業ほど、財務業績も良好であることを示した。またGrantら(2007)は、大学の寄付募集の電話をかける担当者を対象にフィールド実験を行い、奨学金を受けた学生と短時間対面しただけで、電話をかけ続ける粘り強さと集めた寄付額が高まることを明らかにした。自分の仕事が誰をどう幸せにしているかを職場で語り合い、確かめ合うことが、働く意欲と組織の力を育てる。 参考:Gartenbergら(2019)「Corporate Purpose and Financial Pe…」 ↗/Grantら(2007)「Impact and the art of motivation m…」 ↗
人物
パナソニック創業者(1894-1989)。「経営の神様」
「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」

— 稲盛和夫 京セラの経営理念(1961)

創業まもない京セラで、若手社員の待遇要求をきっかけに定められた理念。会社の目的を利益ではなく「従業員の物質的・精神的な両方の幸福」に置き、その上で社会貢献を掲げた ── 経営理念に「幸福」を明記した日本の代表例

心理学では
この理念は、従業員ウェルビーイング(働く人の心身と生活の良好さ)を待遇と心の充足の両面から求め、そのうえで向社会的動機づけ(他者の役に立ちたいという意欲)を仕事の目的に据えたものである。Harterら(2002)は多数の企業の事業所を対象としたメタ分析で、従業員の満足度やエンゲージメント(仕事への熱意)が高い事業所ほど、生産性や定着率が高いことを示した。またGrantら(2007)の実験では、大学の募金電話係が奨学金を受けた学生と直接会うと、その後の電話にかける時間や集めた寄付額が増えた。自分の暮らしの満足と、仕事が誰を支えているかの両方に目を向けることが、長く働く力につながる。 参考:Harterら(2002)「Business-unit-level relationship b…」/Grantら(2007)「Impact and the art of motivation m…」 ↗
人物
京セラ・KDDI創業者(1932-2022)。JAL再建も主導
「環境が人をつくる。だから、働く人に良い環境を与えよ」

— ロバート・オウエン ニュー・ラナーク工場での実践と著作(『新社会観』1813)の趣旨

産業革命の劣悪な労働環境の時代に、自らの紡績工場で労働時間の短縮・児童労働の制限・労働者住宅や学校の整備を実践した経営者の思想。人格は環境の産物だから、人を責める前に環境を変えよ ── 人事管理・福利厚生の歴史的出発点

心理学では
この名言は、職業性ストレス研究の「仕事の要求度—コントロールモデル」(仕事の負担の大きさと、自分で決められる裁量の幅の組み合わせが心身の健康を左右するという考え方)と重なる。Karasek(1979)は米国とスウェーデンの働く人の大規模調査を分析し、要求が高く裁量の乏しい仕事に就く人ほど、疲労や抑うつが強いことを示した。さらにMoenら(2016)はIT企業の職場を対象に、働く時間や場所を社員が選べるよう職場の仕組みそのものを変える無作為化実験を行った。その結果、燃え尽きや主観的ストレスが減り、仕事の満足度が高まった。人を責める前に、裁量と支えのある環境を整えることが、働く人の幸福と組織の力の両方につながる。 参考:Karasek(1979)「Job Demands, Job Decision Latitude…」 ↗/Moenら(2016)「Does a Flexibility/Support Organiz…」 ↗
人物
英国の実業家・社会改革家(1771-1858)。「人事管理の父」とも呼ばれる
出典に諸説あり
「老人たちが、自分がその木陰に座ることのない木を植えるとき、社会は偉大になる」

A society grows great when old men plant trees in whose shade they shall never sit.

— ギリシャのことわざとされる 出所不詳

※ギリシャの古典には確認されておらず、出所不詳

自分は恩恵を受けられないと知りながら、次の世代のために木を植える ── その損得を超えた行為こそが、良い社会の定義だということわざ。植樹という具体的な像で、世代間の利他を語る

心理学では
このことわざは、心理学でいう生成継承性(次の世代を育て、何かを遺そうとする関心)を表している。Zavalら(2015)の実験では、「未来の世代にどう記憶されたいか」を書いた人は、環境を守る意図が強まり、環境団体への寄付も増えた。遺したいという思いが、自分が見ることのない未来への行動を後押ししたのである。またGruenewaldら(2012)は高齢者の縦断研究で、他者に貢献していると感じる人ほど、その後の身体機能の低下や死亡のリスクが低いことを示した。木を植えることは、植える人自身の支えにもなる。後輩に技を教えるなど、身近な「植樹」を一つ始めることが、社会と自分の双方を豊かにする。 参考:Zavalら(2015)「How Will I Be Remembered? Conservi…」 ↗/Gruenewaldら(2012)「Contributing to Others, Contributi…」 ↗
「幸福な人間の戸口には、ハンマーを持った誰かが立って、不幸な人々が存在することを、絶えずノックで思い出させるべきだ」

There ought to be behind the door of every happy, contented man some one standing with a hammer continually reminding him with a tap that there are unhappy people.

— アントン・チェーホフ 短編「すぐり」(1898)

念願の地主となり幸福に浸る兄を見た語り手の独白。幸福はしばしば、見えない場所にある他者の不幸の上に静かに成立している ── 幸福そのものではなく「幸福の忘却作用」への警告として、幸福論の中で異彩を放つ一節

心理学では
この一節は、満ち足りた境遇が他者の苦しみへの共感(相手の痛みを感じ取り、和らげたいと願う心の動き)を鈍らせうることを鋭く突いている。Stellarら(2012)は、社会経済的地位の異なる人々に、他者が苦しむ映像を見せる研究を行った。その結果、地位の高い人ほど思いやりの感情や心拍の反応が弱い傾向が見いだされた。一方、Dunnら(2008)の実験では、お金を他者のために使った人のほうが、自分のために使った人より幸福感が高まった。他者を思い出すことは幸福を損なわず、むしろ深める。身近な人の困りごとに目を向け、小さな手助けを習慣にすることが、幸福を独りよがりにしない支えになる。 参考:Stellarら(2012)「Class and compassion: Socioeconomi…」 ↗/Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」
人物
ロシアの作家・医師(1860-1904)。近代短編小説の完成者
「国家は先祖より子孫へ伝え候国家にして、我私すべき物にはこれ無く候」

— 上杉鷹山 「伝国の辞」(1785、家督を譲る際の三か条)

藩は先祖から子孫への預かりものであって、藩主の私物ではない ── 破産寸前の米沢藩を再建した名君が、次代へ手渡した統治の原則。人民は国家に属する宝であり、藩主は人民のために存在する、と続く

心理学では
この言葉は、組織や資源を自分の所有物ではなく「預かりもの」として扱う「スチュワードシップ(受託者としての責任感)」の考え方にあたる。Davisら(1997)は、経営者を私利で動く存在とみる従来の見方に対し、組織全体の利益に自らを重ねて働く「執事」としての経営者像を理論として示した。またWade-Benzoni(2002)は資源配分の実験で、前の世代から多くを受け取った条件の人ほど、次の世代にも多くを残す選択をすることを明らかにした(世代間の互恵性)。受け継いだものへの意識が、次へ手渡す行動を後押しするのである。仕事でも家庭でも、引き継いだものを「誰から受け取り、誰に渡すのか」と問い直すことが、目先の損得を超えた判断につながる。 参考:Davisら(1997)「Toward a Stewardship Theory of Man…」 ↗/Wade-Benzoni(2002)「A GOLDEN RULE OVER TIME: RECIPROCI…」 ↗
人物
江戸中期の米沢藩主(1751-1822)。「為せば成る」でも著名。J・F・ケネディが尊敬する日本人に挙げたとされる
「人の持つ本質は、光だと、俺は信じている」

— 嬴政(原泰久『キングダム』) 『キングダム』(集英社)

「人は愚かで、闇の生き物だ」と断じる敵に対し、のちに中華統一を成す若き王が返した人間観。戦乱の時代の底で、それでも人間の本質を光と置く ── この前提の違いが、恐怖による支配か、信頼による統治かという国家構想の分岐点として描かれる

心理学では
この言葉は、心理学でいう一般的信頼(見知らぬ他者も基本的には善意で行動すると考える傾向)を、人間観の土台に据えたものである。Cohnら(2019)は世界各地の都市で、財布を「拾った落とし物」として職場の窓口に届けるフィールド実験を行った。その結果、多くの人が持ち主に連絡を取ろうとし、中身の金額が多いほど返却が増えることが分かった。一方で、人々はこの誠実さを実際より低く見積もっていた。またHelliwell & Wang(2011)の調査研究では、周囲の人を信頼できると感じている人ほど生活満足度が高いことが報告されている。人を疑う前に、まず相手の善意を前提に一歩を踏み出すことが、職場や地域に信頼の循環を生む力になる。 参考:Cohnら(2019)「Civic honesty around the globe」 ↗/Helliwell & Wang(2011)「Trust and Wellbeing」 ↗
「絶望してはいけない。……人生は自由で、美しいものなのだ」

You, the people, have the power to make this life free and beautiful.

— チャップリン(映画『独裁者』) チャールズ・チャップリン監督・主演(1940)の最後の演説

独裁者と間違えられた床屋が、世界に向けて放送するラジオ演説。憎しみは過ぎ去り、独裁者は死に、力は人民に還る ── ファシズムの絶頂期に、笑いの王が全キャリアを賭けて訴えた人間性への信頼。映画史上最も有名な6分間の演説

心理学では
この演説の「絶望してはいけない」という呼びかけは、心理学でいう希望(目標へ向かう意志と、そこへ至る道筋を思い描ける感覚)を、暗い時代の社会全体へ手渡す試みである。Fredricksonら(2003)は、米国同時多発テロの前後で大学生を追跡した縦断研究で、危機のさなかにも希望や感謝、愛情といった肯定的感情を抱けた人ほど、その後の抑うつ症状が少なく、回復力(レジリエンス)を保っていたことを示した。厳しい現実から目をそらさずに、それでも人生の美しさに目を向ける姿勢は、苦境を乗り越える力と結びついている。つらい知らせが続くときこそ、身近な人と希望を言葉にして分かち合うことが、自分と周りを支える力になる。 参考:Fredricksonら(2003)「What good are positive emotions in…」
人物
チャップリン(1889-1977)は英国出身の映画人。初のトーキー長編で沈黙を破った
「この子らを、世の光に」

— 糸賀一雄 『この子らを世の光に』(1965)

「この子ら"に"世の光を(恵んでやる)」ではなく、「この子ら"を"世の光に」。重い障害のある子どもたちは保護の対象ではなく、人間の尊厳と発達の可能性を社会に示す光そのものである ── 助詞一文字に思想のすべてが宿った、日本の福祉の金字塔の言葉

心理学では
この言葉は、障害をその人に欠けた部分としてではなく、その人の力と価値から捉える「ストレングス視点(弱さより強みや可能性に注目する見方)」を、社会全体に向けて示すものである。Hastings & Taunt(2002)は発達障害のある子どもの家族に関する研究を整理した。その結果、多くの家族が子育てを通じて喜びや人生観の深まり、家族の絆を感じていると報告している。Pettigrew & Tropp(2006)のメタ分析(多数の研究の統合)でも、障害のある人を含む異なる集団と接する機会が多い人ほど、偏見が少なかった。身近な人の存在そのものの価値に目を向け、共に過ごす時間を持つことが、誰もが尊重される社会につながる。 参考:Hastings & Taunt(2002)「Positive Perceptions in Families o…」 ↗/Pettigrew & Tropp(2006)「A meta-analytic test of intergroup…」 ↗
人物
日本の社会福祉の父(1914-1968)。近江学園・びわこ学園を創設
「一人の子ども、一人の教師、一冊の本、そして一本のペンが、世界を変えられるのです」

One child, one teacher, one book, one pen can change the world.

— マララ・ユスフザイ 国連本部でのスピーチ(2013)

女子教育を訴えて銃撃された16歳が、回復後に国連で語った結び。変革の単位を「一人・一冊・一本」まで分解することで、誰の手にも変革の道具があることを示した ── 史上最年少ノーベル平和賞受賞者の宣言

心理学では
この言葉は、心理学でいう「スモール・ウィン(小さな勝利)」の考え方に重なる。Weick(1984)は、社会問題を巨大なものとして捉えると、人は無力感や過度の緊張から動けなくなると論じた。一方で、問題を手の届く小さな単位に区切ると行動が生まれ、その積み重ねが大きな変化につながるとした。小さな働きかけの力は、実験でも確かめられている。Walton & Cohen(2011)は、大学の新入生に「入学当初の不安は誰もが抱き、やがて薄れる」と伝える短い介入を行った。その結果、黒人学生の成績と健康が数年にわたって向上した。大きな課題を前にしたら、まず今日できる一人への声かけや、一冊の本を手渡すことから始める。その一歩が変化の起点になる。 参考:Weick(1984)「Small wins: Redefining the scale o…」 ↗/Walton & Cohen(2011)「A Brief Social-Belonging Intervent…」
人物
パキスタンの人権活動家(1997-)。ノーベル平和賞(2014)

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