どんな調査か
「生活の質フレームワーク」(Quality of Life Framework for Canada)は、カナダ政府が国の暮らしの良し悪しを経済指標だけでなく多面的に測るための枠組みである。カナダ財務省が2021年の予算で公表し、カナダ統計局(Statistics Canada)がデータの収集と公開を担っている。統計局は「生活の質ハブ(Quality of Life Hub)」というウェブサイトを設け、主観的な指標と客観的な指標の両方について、最新の公表、データ、参考資料をまとめて提供している。主観的な指標とは、本人が自分の暮らしをどう感じているかを尋ねる指標である。暮らし全体を示す生活満足度などは、15歳以上を対象とするカナダ社会調査(Canadian Social Survey、CSS)で継続的に追跡されている。
何をどう測っているか
枠組みは、繁栄、健康、社会、環境、良い統治の5つの領域で構成される。これに暮らし全体を表す中心指標が加わる。指標の数について、概要の説明では約85とされている。一方、統計局のハブでは「ninety-two(九十二)」の指標と3つの中心指標としている。ハブが示す中心指標は、生活満足度、人生の意味・目的の感覚、将来の見通しの3つである。将来の見通しは「将来に希望を持っていることが『いつも』または『よく』ある」と答えた人の割合で示す。生活満足度は0〜10の尺度で自分の人生を評価してもらい、8〜10と答えた人を「満足度が高い」として、その割合を指標にする。人生の意味・目的の感覚も、同じく「高い」と答えた人の割合で示す。枠組みには、すべての領域に横断的に当てはめる2つの視点(レンズ)もある。「公平と包摂」と「持続可能性とレジリエンス(回復力)」である。カナダ社会調査は毎回約2万世帯に回答を依頼する横断調査である。横断調査とは、毎回その時点の人々を対象に行う調査を指す。この調査は四半期ごとに繰り返し実施されている。結果は統計表として公開される。たとえば生活満足度は表13-10-0843-01、意味・目的は表13-10-0845-01、将来の見通しは表13-10-0847-01で確認できる。
これまでの歩み
枠組みは2021年の予算で公表され、それ以降、カナダ社会調査の結果が四半期ごとに統計表へ追加されてきた。2024年8月15日の更新では、2024年4〜6月に集めたデータが10指標の表に加わった。対象は生活満足度、人生の意味・目的の感覚、孤独感、メディアへの信頼などである。2025年9月10日の更新では、2025年4〜6月のデータが4指標に加わった。対象は生活満足度、人生の意味・目的の感覚、将来の見通し、地域環境への満足度である。2026年1月14日の更新では、家計の「やりくり(making ends meet)」の指標に、2023年10月から2025年6月までのデータが追加された。同時に、可視化ツール「カナダの生活の質の主な指標」も更新された。これらの更新告知自体には数値がほとんど載っておらず、どの表が新しくなったかを知らせる案内が中心である。ハブでは、2025年2月の「生活の質指標の隔年見直し(Biennial Review)」も紹介されている。
分かってきたこと
生活満足度が高い人の割合は下がってきた
生活満足度が8〜10の「高い」人は、2021年夏には54.0%だった。2024年冬には48.6%まで下がっている。2025年第2四半期は46.1%で、半数を下回る水準が続いている。
若い世代の低下が大きい
年齢別に見ると、生活満足度の低下は特に25〜34歳で大きかった。満足度の下がり方は、世代によって一様ではない。若い大人の層の変化が目立っている。
主観と客観を組み合わせて暮らしを見る
この枠組みは、所得や健康などの客観的な指標と、満足度や孤独感などの主観的な指標を同じ土台に並べている。生活満足度、意味・目的、将来の見通しを中心指標に置き、暮らし全体の手応えを確かめる設計になっている。公平と包摂、持続可能性とレジリエンスという2つの視点を全領域に当てはめることで、平均値だけでは見えにくい偏りや将来への影響にも目を向けるつくりである。
データは細かい地域単位まで公開が広がっている
ハブには複数の対話型ダッシュボードが用意されている。カナダ全体の「カナダの生活の質」のほか、「自治体生活の質ダッシュボード」と、国勢調査の区画(census subdivision)ごとの指標がある。家計のやりくり、孤独感、メディアへの信頼なども四半期ごとに更新され、暮らしの様々な側面を時系列で追える。