どんな調査か
「大切なことを測る(Measuring What Matters、略称MWM)」は、オーストラリア政府が2023年に定めた、同国初の国家ウェルビーイング(暮らしの良さ)・フレームワークである。財務省が2023年7月に声明として公表し、アルバニージー政権のもとで国の歩みを測る枠組みとして位置づけられた。ねらいは、GDP・雇用・賃金といった従来の重要指標を超えて、国全体の目を暮らしの良さに向けることである。ただしGDPや雇用を置き換えるのではなく、それを補う指標として扱う。目標として掲げるのは、より健康で、安全で、持続可能で、結束し、繁栄するオーストラリアである。ウェルビーイング・フレームワークは国際的にも「GDPを超えて(beyond GDP)」歩みを総合的に報告するために使われており、MWMはその流れに属する。
何をどう測っているか
枠組みは、健康・安全・持続可能・結束(社会のまとまり)・繁栄の5テーマを柱とし、その下に12の次元、合計50の指標を置く。指標の多くは行政データや各種の統計調査から集めたもので、対象年齢は指標によって異なる。全体を見渡す指標として、総合的な生活満足度(人生全体にどれくらい満足しているかを0〜10で答える質問)を用い、15歳以上が対象である。生活満足度のデータ源は、統計局の一般社会調査(GSS=暮らしや社会参加を幅広く尋ねる全国調査)と、同じ人を毎年追いかけるHILDAパネル調査の二つである。結果は指標ごとのページからなるダッシュボードにまとめられ、毎年更新される。指標や測定項目の選定と、政策決定への組み込みは引き続き財務省が担い、2024年からはダッシュボードの年次更新の報告をオーストラリア統計局(ABS)が担当している。
これまでの歩み
2023年7月、財務省が声明「Measuring What Matters: Australia's First Wellbeing Framework」を公表し、5テーマ・50指標の枠組みを示した。この声明は、ここ数十年で20指標が改善、7指標が横ばい、12指標が悪化したと総括し、生活満足度は2014〜19年の約7.5から2020年に7.2へ下がったと記した。2024年8月23日、ABSが初の年次更新を公開し、50指標のうち8割超を新しいデータで更新した。あわせて、データの穴を埋めるために一般社会調査(GSS)を毎年実施する予算措置が話題となった。2025年9月15日にはABSとして2回目の年次更新が公表され、50の指標ページのうち44で データを更新し、そのうち35で見出しとなる主要な測定値を更新した。主要な値が更新されなかった指標についても、可能な範囲で補足情報を載せて最新の状況を示している。2026年からは拡充されたGSSにより、毎年更新される指標と測定値の数が増える予定である。
分かってきたこと
長い目で見ると改善した指標が多い
2023年の財務省の声明は、ここ数十年の動きとして20指標が改善、7指標が横ばい、12指標が悪化したとまとめた。改善が悪化を上回るという総括であり、枠組みの最初の全体像となった。一方で悪化した指標も12あり、良い面と課題の両方を並べて見せる形をとっている。
生活満足度は調査によって見え方が違う
一般社会調査(GSS)では、生活満足度の平均は2014年の7.6から2020年の7.2へ下がった。2023年の声明は、2014〜19年の約7.5から2020年に7.2へ低下したと記している。これに対してHILDAパネル調査では、2014〜2023年の平均が7.9で安定していた。同じ「生活満足度」でも、調査によって水準も動きも異なる。
2025年更新:住まいの負担や環境で改善
2025年の更新では、家賃上昇の鈍化と住宅ローン金利負担の鈍化が改善点として示された。環境面では、保全される陸地・水域の拡大と再生可能エネルギーの進展も改善として挙げられた。暮らしの負担と持続可能性の両方で前向きな動きが見られたのが2025年版の特徴である。
2025年更新:「安全だと感じる」人が大きく減った
2025年の更新で最大の課題とされたのは、「安全だと感じる」人の割合が2025年までの1年で大きく下がったことである。資料はこの低下を世界情勢を踏まえたものとして位置づけている。改善が目立つ一方で、安全のテーマには懸念が残ることを示している。
データをそろえる体制づくりが進んでいる
2024年に年次更新の報告がABSへ移り、同年の更新で50指標のうち8割超が新しいデータになった。データの穴を埋めるため、一般社会調査を毎年実施する予算措置もとられた。2025年は44の指標ページを更新し、2026年からは拡充されたGSSで毎年更新される指標がさらに増える予定である。