幸せの名言集

禅語の名言4選

雲門文偃(864-949)は唐末の禅僧

「冷暖自知 ── 水を飲んで、冷たいか温かいかは自分で知る」

— 禅語 『景徳伝灯録』ほか

本当の理解は、自分の体験からしか得られない

心理学では
この禅語は、心理学でいう体験学習(経験を振り返り、自分なりの理解へと練り上げる学び方)の核心を突いている。Kolb(1984)は、学びを「具体的な体験→振り返り→概念化→試してみる」という循環としてとらえ、知識は聞いて受け取るものではなく、体験を通して自ら作り上げるものだと論じた。Freemanら(2014)は、大学の理系授業を比べた研究をメタ分析(多数の研究を統合する分析)し、講義を聞くだけの授業より、学生が自ら手を動かし考える能動的学習のほうが成績が高く、落第も少ないことを示した。気になることは評判だけで判断せず、まず小さく試し、その感触を自分の言葉で振り返ることが成長につながる。 参考:Kolb(1984)「Experiential Learning : Experience…」 ↗/Freemanら(2014)「Active learning increases student …」 ↗
「吾れ唯だ足るを知る(吾唯足知)」

— 禅語 京都・龍安寺のつくばいの意匠で有名

「知足」の思想は『老子』『仏遺教経』に遡る

「吾・唯・足・知」の四文字が中央の「口」を共有する、石のつくばい(手水鉢)の意匠で有名。「わたしは、ただ、足りていることを、知っている」── 足りないものではなく、すでに在るものから世界を見る構え

心理学では
「足るを知る」は、心理学でいえば感謝傾向(すでに在るものに気づき、ありがたく感じやすい性質)に近く、快楽順応(慣れで満足が薄れ、次を求め続けること)に流されない構えである。Larsen & McKibban(2008)は大学生を対象に身の回りの持ち物を評価してもらう相関研究を行い、欲しい物を持っていることとは別に、いま持っている物を欲しく思えている人ほど幸福感が高いことを示した。McCulloughら(2002)の相関研究でも、感謝傾向の高い人ほど人生満足度が高く、ねたみや物質主義が弱かった。新しい物を求める前に、手元の物や身近な人の価値を味わい直すことが、満ち足りた日々につながる。 参考:Larsen & McKibban(2008)「Is Happiness Having What You Want,…」 ↗/McCulloughら(2002)「The grateful disposition: A concep…」
「日々是好日」

— 禅語 『碧巌録』第6則(雲門文偃)

「にちにちこれこうにち」等の読みがある

「毎日が良い日」という単純な楽観の言葉ではない。晴れの日も雨の日も、良し悪しの判断そのものを手放してそのまま受け取れば、どの日も二度とない、かけがえのない一日になる ── という禅の境地

心理学では
この言葉は、心理学でいうマインドフルネスの「判断しない態度」(non-judging:体験に良い・悪いの評価を下さず、そのまま受けとめること)に重なる。Baerら(2006)は、マインドフルネスを複数の側面に分けて測る質問紙を作り、この「判断しない」ことを独立した中核要素のひとつとして位置づけた。さらにFordら(2018)は、実験室・日記・縦断の各研究を通じて、つらい感情や考えを否定せずに受け入れる習慣がある人ほど、ストレスの場面で否定的な感情が少なく、半年後の抑うつ症状も少ないことを示した。雨の日に「最悪だ」と決めつける前にひと呼吸おき、その日の空気や出来事をそのまま味わう。その小さな習慣が、どの一日もかけがえのないものとして受け取る力につながる。 参考:Baerら(2006)「Using Self-Report Assessment Metho…」/Fordら(2018)「The psychological health benefits …」 ↗
「喫茶喫飯(茶を飲むときは茶を飲み、飯を食うときは飯を食う)」

— 禅語 禅の日常底の教え

「平常心是道」と並ぶ日常禅の言葉

お茶を飲むときはお茶を飲むことに、ご飯を食べるときは食べることになりきる、という禅の教え。何かをし「ながら」の心ここにあらずの状態を離れ、目の前の一事に心を置くことが、そのまま充実した生になる

心理学では
この教えは、心理学でいう「マインドフルネス(いまの体験に評価をはさまず注意を向けること)」にあたり、その逆が「マインド・ワンダリング(心が目の前から離れてさまようこと)」である。Killingsworth & Gilbert(2010)は、スマートフォンで日常の気分と注意の向き先をくり返し尋ねる研究を行い、心が今の活動から離れているときほど幸福感が低いことを示した。またHanleyら(2015)の実験では、皿洗いの湯の温かさや泡の感触に注意を向けた人は、ふつうに洗った人より緊張が和らぎ、意欲的な気分が高まった。お茶の一杯や食事を、画面から目を離して五感で味わう時間にすることが、日々の小さな充実につながる。 参考:Killingsworth & Gilbert(2010)「A Wandering Mind Is an Unhappy Min…」/Hanleyら(2015)「Washing Dishes to Wash the Dishes:…」 ↗

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