幸せの名言集

感謝傾向の名言28選

「感謝は最大の徳であるだけでなく、あらゆる徳の親である」

Gratitude is not only the greatest of virtues, but the parent of all the others.

— キケロ 『プランキウス弁護』

感謝はすべての美徳の土台である

心理学では
キケロの言葉は、感謝をほかの善い行いを生み出す源とみる見方である。心理学ではこれを、感謝の「道徳的感情」(他者の善意に気づき、自分も善くふるまおうとする心の動き)としての働きととらえる。McCulloughら(2001)は先行研究を整理し、感謝には受けた恩恵に気づかせる働きと、恩を返したり他者を助けたりする行動を後押しする働きがあると論じた。Bartlett & DeSteno(2006)の実験では、手助けを受けて感謝の気持ちを抱いた参加者ほど、手間のかかる頼みごとに進んで応じ、その相手が恩人でない見知らぬ人であっても助けた。感謝が親切の連鎖を生むことを示す結果である。日々受けた小さな親切に目をとめ、言葉にして伝えることが、自分自身の善いふるまいを育てる第一歩になる。 参考:McCulloughら(2001)「Is gratitude a moral affect?」/Bartlett & DeSteno(2006)「Gratitude and Prosocial Behavior」
人物
古代ローマの政治家・哲学者(BC106-43)
「感謝の心が高まれば高まるほど、それに正比例して幸福感が高まっていく」

— 松下幸之助 著書・発言

感謝と幸福は比例して深まる

心理学では
この言葉は、感謝傾向(人の親切や日々の恵みにありがたみを感じやすい性格的な傾向)と主観的幸福感(人生を満ち足りたものと感じる度合い)の結びつきを言い表している。McCulloughら(2002)の調査では、感謝傾向の強い人ほど人生満足度や前向きな感情が高く、抑うつや妬みが低かった。Emmons & McCullough(2003)の実験では、感謝したことを定期的に書き留めた人は、わずらわしい出来事を書いた人より自分の人生を前向きに評価した。感謝は生まれつきの性格であるだけでなく、育てられる習慣でもある。寝る前に「ありがたかったこと」を三つ思い出すことが、幸福感を少しずつ積み上げる助けになる。 参考:McCulloughら(2002)「The grateful disposition: A concep…」/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」
人物
パナソニック創業者(1894-1989)。「経営の神様」
「感謝とは、心の記憶である」

La reconnaissance est la mémoire du cœur.

— ジャン=バティスト・マシュー フランスの聖職者の言葉として伝わる

仏語原文

受けた恩を心に留め続けることこそ感謝

心理学では
この名言は、感謝を一時の感情ではなく、受けた恩恵を記憶にとどめ、折にふれて思い返す心の働きとしてとらえている。心理学では、日ごろから感謝を感じやすい性質を感謝傾向(ありがたさに気づきやすい個人差)と呼ぶ。Watkinsら(2004)は大学生を対象とした研究で、感謝傾向の高い人ほど過去を振り返るとき、楽しい出来事の記憶を多く思い出すことを示した。また、Emmons & McCullough(2003)の実験では、ありがたかった出来事を毎週書き留めた人は、わずらわしい出来事を書いた人に比べて、生活全体をより肯定的に評価するようになった。一日の終わりに、誰かから受けた小さな親切を一つ思い出して書き留めることが、心の記憶を育てる助けになる。 参考:Watkinsら(2004)「Counting your blessings: Positive …」 ↗/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」
人物
フランスの聖職者・聾教育者(1743-1818)
「幸せだから感謝するのではない。感謝するから幸せなのだ」

It is not happiness that makes us grateful, but gratefulness that makes us happy.

— デヴィッド・スタインドル=ラスト TEDトーク・著作

因果は「感謝→幸福」の向きにある

心理学では
この名言は、感謝を幸福の結果ではなく原因とみる考え方である。心理学では、感謝の実践(ありがたいことに意図して目を向け、言葉にすること)が幸福感を高めるかどうかが、実験で調べられてきた。Emmons & McCullough(2003)は大学生らを無作為に分け、感謝したことを毎週書き留めた群が、わずらわしい出来事を書いた群などより、生活を前向きに評価するようになることを示した。Seligmanら(2005)のオンライン実験でも、その日のよかったことを三つ書く課題が幸福感を高め、抑うつ感を和らげた。寝る前に今日の「ありがとう」を三つ書き出す習慣が、幸せを育てる土台になる。 参考:Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」/Seligmanら(2005)「Positive Psychology Progress: Empi…」
人物
オーストリア出身のベネディクト会修道士(1926-)
「恩恵を感謝して受け取る者は、その負債の最初の返済をすでに済ませている」

He who receives a benefit with gratitude repays the first installment on his debt.

— セネカ 『恩恵について』

感謝の表明自体が恩返しの始まりである

心理学では
セネカの言葉は、感謝の表明(ありがとうを言葉や態度で相手に伝えること)が、それ自体で恩人への「お返し」として働くことを指している。Algoe(2012)の「見つけ・思い出させ・結びつける」理論は、感謝が良い相手に気づかせ、その大切さを思い出させ、関係を強く結びつける働きをもつと説く。Grant & Gino(2010)の実験では、手助けをした人が相手から感謝の言葉を受け取ると、自分は人の役に立つ価値ある存在だと感じ、その後の手助けにも進んで応じた。感謝を伝えることは、相手に「役に立てた」という手応えを返す行為なのである。恩を受けたら、何がどう助かったのかを具体的に添えて一言伝えることが、関係を育てる最初の返礼になる。 参考:Grant & Gino(2010)「A little thanks goes a long way: E…」/Algoe(2012)「Find, Remind, and Bind: The Functi…」
人物
古代ローマのストア派哲学者(BC4頃-AD65)
「感謝は教養の果実である。粗野な人々の間には見られない」

Gratitude is a fruit of great cultivation; you do not find it among gross people.

— サミュエル・ジョンソン ボズウェル『ジョンソン伝』

感謝は自然発生ではなく、育まれる能力である

心理学では
「感謝は教養の果実」という言葉は、心理学でいう感謝傾向(日々の恩恵に気づき、ありがたく感じやすい性格的な傾向)が、学びによって育つことを示している。McCulloughら(2002)は感謝傾向を測る尺度GQ-6を作り、相関研究で、感謝しやすい人ほど人生満足度や他者への思いやりが高いことを示した。さらにFrohら(2014)は、小学生に「相手の意図、かけた手間、自分にとっての価値」を考える授業を行う実験で、感謝の考え方と気持ちが高まり、お礼状を書く子どもも増えたことを報告した。受け取った親切の背景を一度言葉にしてみる習慣が、感謝の心を育てる助けになる。 参考:McCulloughら(2002)「The grateful disposition: A concep…」/Frohら(2014)「Nice Thinking! An Educational Inte…」 ↗
人物
英国の文学者・辞書編纂者(1709-1784)
「感謝は最高の思考の形であり、驚きを伴う感謝は幸福を二倍にする」

Gratitude is the highest form of thought, and gratitude is happiness doubled by wonder.

— G・K・チェスタトン 随筆より

驚き(wonder)と感謝の結合が幸福の頂点

心理学では
チェスタトンの言う「驚きを伴う感謝」は、心理学でいう感謝(受け取った恵みを認め、ありがたく思う感情)と畏敬(自分を超える大きなものに心を打たれる感情)の結びつきに当たる。Ruddら(2012)の実験では、畏敬を感じた体験を思い出した人は、時間にゆとりを感じ、その場の人生満足度も高まった。またKooら(2008)の実験では、人生のよい出来事を「もし起きていなかったら」と想像させると、当たり前になっていた恵みが驚きとともに見直され、気分が改善した。身近な人や物が自分の暮らしに存在する偶然を一日に一つ思い描くことが、感謝を新鮮に保つ助けになる。 参考:Ruddら(2012)「Awe Expands People’s Perception of…」/Kooら(2008)「It's a wonderful life: Mentally su…」 ↗
人物
英国の作家・批評家(1874-1936)
「足るを知る者は富む」

— 老子 『老子』第33章

充足を知ることが本当の豊かさである

心理学では
「足るを知る」とは、すでに手にしているものに目を向け、その価値を味わう心の構えである。心理学では、感謝傾向(日常の恵みに気づき、ありがたく思いやすい性質)の高さや、物質主義(富や所有を幸せの尺度にする価値観)の低さに重なる。Dittmarら(2014)は多数の研究を統合したメタ分析を行い、物質主義的な価値観が強い人ほど生活満足度や幸福感が低い傾向にあることを示した。さらにTsangら(2014)は大学生を対象とした調査で、物質主義的な人ほど感謝を感じにくく、そのことが生活満足度の低さと結びついていることを報告している。寝る前に、その日「足りていた」ものを三つ思い浮かべる習慣は、いまある豊かさに気づく助けになる。 参考:Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」/Tsangら(2014)「Why are materialists less happy? T…」 ↗
人物
古代中国の思想家。道家の祖
「吾れ唯だ足るを知る(吾唯足知)」

— 禅語 京都・龍安寺のつくばいの意匠で有名

「知足」の思想は『老子』『仏遺教経』に遡る

「吾・唯・足・知」の四文字が中央の「口」を共有する、石のつくばい(手水鉢)の意匠で有名。「わたしは、ただ、足りていることを、知っている」── 足りないものではなく、すでに在るものから世界を見る構え

心理学では
「足るを知る」は、心理学でいえば感謝傾向(すでに在るものに気づき、ありがたく感じやすい性質)に近く、快楽順応(慣れで満足が薄れ、次を求め続けること)に流されない構えである。Larsen & McKibban(2008)は大学生を対象に身の回りの持ち物を評価してもらう相関研究を行い、欲しい物を持っていることとは別に、いま持っている物を欲しく思えている人ほど幸福感が高いことを示した。McCulloughら(2002)の相関研究でも、感謝傾向の高い人ほど人生満足度が高く、ねたみや物質主義が弱かった。新しい物を求める前に、手元の物や身近な人の価値を味わい直すことが、満ち足りた日々につながる。 参考:Larsen & McKibban(2008)「Is Happiness Having What You Want,…」 ↗/McCulloughら(2002)「The grateful disposition: A concep…」
「持っていないものを欲して、いま持っているものを台無しにしてはならない」

Do not spoil what you have by desiring what you have not.

— エピクロス 『バチカン写本』断片35

欠乏への注目は現在の豊かさを損なう

心理学では
この言葉は、足りないものに注意が偏る「欠乏への焦点化」を戒め、すでにあるものへの感謝(恵みに気づき、ありがたく思う心の働き)を勧めている。Larsen & McKibban(2008)は、大学生の持ち物について「持っているか」「欲しいか」を尋ねる相関研究を行った。その結果、欲しいものを持っている人だけでなく、持っているものをなお欲する人ほど幸福感が高かった。Emmons & McCullough(2003)の実験では、感謝できることを毎週書き留めた人は、煩わしい出来事を書いた人より人生を前向きに評価した。一日の終わりに今日あってよかったものを三つ思い浮かべる習慣が、手元の豊かさを守る助けになる。 参考:Larsen & McKibban(2008)「Is Happiness Having What You Want,…」 ↗/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」
人物
古代ギリシャの哲学者(BC341-270)。静的な快を重んじた快楽主義の祖
「持っていないものを思うな。持っているもののうち、最も恵まれたものを思え」

Think not so much of what you lack as of what you have.

— マルクス・アウレリウス 『自省録』第7巻

注意の向け先を欠乏から充足へ切り替えよ

心理学では
この言葉は、注意の向け先を「足りないもの」から「すでにある恵み」へ移す「感謝」の構え(自分が受け取っている恵みに気づき、ありがたく思う心の働き)を勧めている。Emmons & McCullough(2003)は大学生らを対象にした実験で、毎週「恵まれていること」を書き出すグループが、「わずらわしいこと」を書くグループに比べて人生全体をより肯定的に評価し、先の見通しも明るくなることを示した。Seligmanら(2005)の介入実験でも、毎晩その日のよかった出来事を三つ書く「三つの良いこと」が幸福感を高め、その効果は数か月続いた。寝る前に、今日手にしていた恵みを一つ思い浮かべる習慣が、満ち足りた心を育てる助けになる。 参考:Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」/Seligmanら(2005)「Positive Psychology Progress: Empi…」
人物
ローマ皇帝・ストア派哲学者(121-180)
「賢い人は、持っていないものを嘆かず、持っているものを喜ぶ」

He is a wise man who does not grieve for the things which he has not, but rejoices for those which he has.

— エピクテトス 『断片』として伝わる

所有量ではなく評価の仕方が豊かさを決める

心理学では
この言葉は、心理学でいう感謝傾向(日々の恵みに気づき、ありがたく感じやすい性質)と、出来事そのものより受け止め方が感情を左右するという認知的評価(物事をどう意味づけるか)の考え方を先取りしている。Larsen & McKibban(2008)は大学生を対象にした相関研究で、持ち物の多さとは別に、手元にあるものを大切に思う人ほど幸福感が高いことを示した。またEmmons & McCullough(2003)の実験では、毎週ありがたいことを書き出した人は、煩わしいことを書いた人より生活全体を肯定的に評価するようになった。一日の終わりに、すでにある恵みを三つ数える習慣が、心の豊かさを育てる。 参考:Larsen & McKibban(2008)「Is Happiness Having What You Want,…」 ↗/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」
人物
古代ギリシャのストア派哲学者(55頃-135頃)。奴隷の身分から哲学者に
「我々の不満はすべて、持っているものへの感謝の欠如から生まれる」

All our discontents spring from the want of thankfulness for what we have.

— ダニエル・デフォー 『ロビンソン・クルーソー』(1719)

不満の正体は感謝の不在である

心理学では
この名言は、心理学でいう感謝傾向(日々の恵みに気づき、ありがたく思う性質)が、物質主義(もっと多くを持てば幸せになれるという信念)やそこから生まれる不満を和らげるという見方と重なる。Lambertら(2009)は大学生を対象とした調査研究で、感謝傾向が高い人ほど物質主義が低く、その関連が生活満足度の高さによって説明されることを示した。またEmmons & McCullough(2003)の実験では、ありがたかったことを毎週書き留めた学生は、わずらわしかったことを書いた学生に比べて、生活全体をより肯定的に評価するようになった。足りないものを数える前に、すでに手元にあるものを書き出す習慣が、満ち足りた気持ちにつながる。 参考:Lambertら(2009)「More gratitude, less materialism: …」 ↗/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」
人物
英国の作家(1660頃-1731)
「感謝は、私たちがすでに持っているものを「十分なもの」に変える」

Gratitude turns what we have into enough.

— メロディ・ビーティ 『Codependent No More』ほか

感謝は現実ではなく、充足の感覚を変える

心理学では
この名言は、感謝が快楽適応(手に入れたものに慣れて、喜びが薄れていくこと)にあらがい、すでにあるものへ注意を向け直す働きを言い当てている。Emmons & McCullough(2003)は大学生らに毎週「ありがたいこと」を書き出してもらう実験を行い、わずらわしい出来事を書いた群に比べて、生活全体への評価や前向きな見通しが高まることを示した。さらにChaplinら(2019)は青年を対象に感謝日記の介入を行い、物質主義(もっと物を持てば幸せになれるという考え)が弱まり、寛大さが高まることを見いだした。満ち足りた感覚は、持ち物の量よりも目の向け方から生まれる。寝る前に今日ありがたかったことを三つ思い出す習慣が、「足りない」を「十分」に変える助けになる。 参考:Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」/Chaplinら(2019)「The impact of gratitude on adolesc…」 ↗
人物
米国のセルフヘルプ作家(1948-)
「持っているものに感謝しなさい。そうすれば、もっと多くを持つことになる」

Be thankful for what you have; you'll end up having more.

— オプラ・ウィンフリー 発言・連載コラムより

感謝は豊かさの認知を拡張する

心理学では
この名言は、感謝(受け取っている恵みに気づき、ありがたく思う心の働き)がポジティブ感情を生み、視野を広げて人とのつながりなどの資源を育てるという拡張-形成理論(Fredrickson(2001))の考え方と重なる。Emmons & McCullough(2003)の実験では、感謝したことを毎週書き留めた大学生は、困りごとを書いた人に比べて人生を前向きにとらえ、運動にも多くの時間を割いた。Woodら(2008)の縦断研究でも、感謝傾向の高い人ほど、その後に周囲からの支えを多く感じ、ストレスや抑うつが低かった。寝る前にその日ありがたかったことを三つ思い出す習慣が、手元の豊かさに気づく助けになる。 参考:Fredrickson(2001)「The role of positive emotions in p…」/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」/Woodら(2008)「The role of gratitude in the devel…」
人物
米国の司会者・実業家(1954-)
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」

— 日本のことわざ 詠み人知らず

成熟するほど謙虚に、感謝深くなる

心理学では
この名言は、謙虚さ(自分の長所も限界もありのまま認め、他者に目を向けられる性質)と感謝が深く結びついていることを表している。Kruseら(2014)は大学生を対象に、感謝の手紙を書く実験と日々の気持ちを記録する日誌研究を行った。その結果、感謝を表すと謙虚さが高まり、謙虚な人ほどその後に感謝を感じやすいという、両者が互いを強め合う「上向きの循環」が見いだされた。またDavisら(2013)は、周りから謙虚だと見られる人ほど集団に受け入れられやすく、関係がこじれた後も許されやすいことを示している。成果を上げたときこそ、支えてくれた人の顔を思い浮かべて「ありがとう」を言葉にする。それが実りを長く保つ姿勢につながる。 参考:Kruseら(2014)「An Upward Spiral Between Gratitude…」 ↗/Davisら(2013)「Humility and the Development and R…」 ↗
出典に諸説あり
「もし一生のうちに唱える祈りが「ありがとう」だけだったとしても、それで十分である」

If the only prayer you ever say in your entire life is thank you, it will be enough.

— マイスター・エックハルト(とされる) 典拠不詳

※著作に該当句は確認されておらず、帰属に諸説あり

感謝は祈りの本質である

心理学では
この名言は、感謝を一時の感情ではなく生き方の中心に据えることを説いており、心理学でいう感謝傾向(日々の恵みに気づき、ありがたいと感じやすい性質)にあたる。McCulloughら(2002)は質問紙による相関研究で、感謝傾向の高い人ほど人生満足感や前向きな感情が高く、信仰心や霊性とも結びついていることを示した。さらにLambertら(2009)は大学生を対象とした縦断研究と実験で、祈りが感謝の気持ちを高めることを報告した。祈りと感謝は互いを育て合う関係にある。信仰を持たない人も、一日の終わりに心の中で「ありがとう」と唱える時間を持つことが、満ち足りた心を育てる助けになる。 参考:McCulloughら(2002)「The grateful disposition: A concep…」/Lambertら(2009)「Can prayer increase gratitude?」 ↗
人物
中世ドイツの神秘主義神学者(1260頃-1328頃)
「恩を知り、恩に感じ、恩に報いる(知恩・感恩・報恩)」

— 仏教の教え 『大乗本生心地観経』の四恩思想などに由来

感謝を「知る→感じる→行動する」の三段階で捉える

心理学では
この教えは、感謝を認知(恩恵を受けたと気づくこと)、感情(ありがたいと感じること)、行動(お返しをすること)の三つの側面からとらえる心理学の見方と重なる。McCulloughら(2001)は感謝を、他者から恩恵を受けたと知らせる「道徳的なバロメーター」であり、相手に報いようとする向社会的行動(人のためになる行動)への動機を生む感情だと整理した。Bartlett & DeSteno(2006)の実験では、助けられて感謝を感じる場面を体験した参加者は、そうでない参加者より、手間のかかる頼みごとでも進んで引き受けた。恩に気づき、心で味わい、小さな行動で返すことを日々重ねることが、人との信頼を育てる。 参考:McCulloughら(2001)「Is gratitude a moral affect?」/Bartlett & DeSteno(2006)「Gratitude and Prosocial Behavior」
出典に諸説あり
「「ありがとう」の反対は「あたりまえ」」

— 出典不詳 日本の道徳教育・講話で広く流通

※出典不詳

当然視が感謝を殺す

心理学では
この名言は、感謝を妨げるものが「当然視」であることを突いている。心理学では、良いことにもすぐ慣れて喜びが薄れていく働きを快楽順応(ヘドニック・アダプテーション)と呼ぶ。Solomら(2017)の相関研究では、自分は特別に扱われて当然と考える権利意識(エンタイトルメント)が強い人ほど、感謝傾向が低かった。一方、Kooら(2008)の実験では、身近な良い出来事が「もし起きていなかったら」と想像して書いた人は、その出来事が起きた経緯を書いた人より気分が明るくなった。家族の支えや日々の仕事を、ときどき「もしなかったら」と思い描いてみることが、「ありがとう」を取り戻す助けになる。 参考:Solomら(2017)「Thieves of thankfulness: Traits th…」 ↗/Kooら(2008)「It's a wonderful life: Mentally su…」 ↗
「感謝は果たされるべき義務だが、誰もそれを期待する権利は持たない」

Gratitude is a duty which ought to be paid, but which none have a right to expect.

— ジャン=ジャック・ルソー 『エミール』(1762)

感謝は強制ではなく自発であってこそ価値を持つ

心理学では
ルソーの言葉は、感謝を「負債感(お返ししなければという重荷の感覚)」と区別し、自発的な感情として守る知恵である。見返りを求められると、人は自由を脅かされたと感じて反発しやすい(心理的リアクタンス)。Watkinsら(2006)は、親切を受ける場面を想像させる実験で、相手が見返りを期待していると感謝が弱まり、負債感が強まることを示した。またLyubomirskyら(2011)の介入研究では、幸せになりたいと自ら望んで参加した人ほど、感謝の手紙を書く活動の効果が大きかった。親切は見返りを求めずに差し出し、受けた恩には自分の意思で礼を伝える。その姿勢が、互いの心を温める関係につながる。 参考:Watkinsら(2006)「The debt of gratitude: Dissociatin…」 ↗/Lyubomirskyら(2011)「Becoming happier takes both a will…」
人物
フランスの思想家(1712-1778)。『社会契約論』
「感謝とは、人生には自分の外からもたらされた良きものがある、と認めることである」

— ロバート・エモンズ 感謝研究の定義(Emmons & McCullough, 2003ほか)

感謝は「良きもの」と「その源泉」の二重の認知である

心理学では
この言葉は、心理学における感謝の定義そのものである。感謝は、自分に良いことがあったと気づく「恩恵の認知」と、その良さが他者や環境など自分の外から来たと見る「外的源泉への帰属」(原因をどこに求めるかの判断)の二つから成る。Emmons & McCullough(2003)は大学生を対象に、恵まれたことを毎週書き留める群と、わずらわしい出来事を書く群などを比べる実験を行い、感謝を書いた群で人生全体の評価がより前向きになることを示した。またAlgoeら(2008)は、女子学生クラブで先輩から贈り物を受けた新入生を追跡し、強く感謝した人ほど、その後の相手との関係を良好に感じていることを見いだした。一日の終わりに「今日の良いこと」と「それをもたらしてくれた人」を一つずつ思い浮かべる習慣が、気分と人とのつながりの両方を育てる助けになる。 参考:Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」/Algoeら(2008)「Beyond reciprocity: Gratitude and …」 ↗
人物
米国の心理学者。カリフォルニア大学デービス校教授。感謝研究の第一人者
出典に諸説あり
「少欲知足 ── 欲を少なくして、足るを知る」

— ブッダ 『仏遺教経』。入滅前の教えとされる

欲の抑制と充足の自覚が安らぎを生む

心理学では
少欲知足は、心理学でいう快楽適応(手に入れた喜びにすぐ慣れ、次を求めてしまう心の働き)への処方箋である。Larsen & McKibban(2008)は大学生を対象にした調査で、欲しいものを持っているかどうかとは別に、いま持っているものを大切に思えている人ほど幸福感が高いことを見いだした。またSchwartzら(2002)の相関研究では、つねに最善を求める「最大化」傾向(もっと良い選択肢を探し続ける傾向)が強い人ほど後悔が多く、生活満足度が低かった。足るを知るとは、手元にあるものの価値に気づき直すことである。寝る前に、今日すでにあって助かったものを一つ思い出す習慣が、その感覚を育てる助けになる。 参考:Larsen & McKibban(2008)「Is Happiness Having What You Want,…」 ↗/Schwartzら(2002)「Maximizing versus satisficing: Hap…」
人物
古代インドの宗教家(BC5世紀頃)。仏教の開祖
「いただきます ── あなたの命を、私の命にさせていただきます」

— 日本の食前の挨拶 仏教の食事作法(五観の偈)とも関連して定着

「ごちそうさま(馳走=駆け回って用意すること)」と対をなす

食材となった動植物の命と、それを育て・運び・調理した人々の働きの両方に向けた感謝の言葉。「命をいただく」という自覚を毎食ごとに新たにする、世界的にも珍しい日常儀礼である

心理学では
「いただきます」は、感謝(受け取った恵みとその送り手に気づき、ありがたく思う心の働き)を食事のたびに呼び起こす儀礼である。同時に、セイバリング(よい体験に注意を向けて深く味わうこと)の入り口にもなる。Vohsら(2013)の実験では、チョコレートなどを食べる前に決まった手順の儀式を行うと、食べ物をより味わい、よりおいしく感じることが示された。またEmmons & McCullough(2003)の実験では、感謝していることを定期的に書き留めた人々は、そうでない人々に比べて人生をより肯定的に評価した。手を合わせる一瞬を、食材の命と、それを届けてくれた人の働きに思いをはせる時間にする。それが、毎日の食事を感謝と味わいの習慣に変えることにつながる。 参考:Vohsら(2013)「Rituals Enhance Consumption」 ↗/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」
「サントーシャ(知足)を実践する者は、無上の幸福を得る」

Santosha: from contentment, unsurpassed happiness is gained.

— パタンジャリ 『ヨーガ・スートラ』2.42(2-4世紀頃)

ヨーガの倫理項目(ヤマ・ニヤマ)の一つ

ヨーガ八支則の勧戒(ニヤマ)の一つ「サントーシャ(知足・満足)」の教え。いま与えられているものに満ち足りる練習を、姿勢や呼吸と同じ「実践すべき技術」として位置づけている点が特徴

心理学では
サントーシャは、心理学でいう感謝傾向(ありがたさに気づきやすい心の構え)や、「これで十分」と満足できる充足志向(サティスファイシング)に近い考え方である。Schwartzら(2002)の質問紙研究では、常に最善を求める人ほど幸福感や人生満足度が低く、後悔や抑うつが強い傾向が示された。またEmmons & McCullough(2003)の実験では、毎週ありがたかったことを書き出した人は、わずらわしかった出来事を書いた人などに比べ、人生全体への評価が高まり、前向きな見通しも増えた。知足は生まれつきの性格ではなく、練習で育つ技術である。寝る前に、今日満ち足りていたことを三つ思い出す習慣が、その第一歩になる。 参考:Schwartzら(2002)「Maximizing versus satisficing: Hap…」/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」
人物
古代インドのヨーガ学派の祖とされる編纂者
「あなたがたが感謝するならば、われは必ず、あなたがたに増し加えるであろう」

If you are grateful, I will surely increase you.

— クルアーン 第14章「イブラーヒームの章」7節

感謝(シュクル)は恵みへの「返礼」であると同時に、さらなる恵みの「入口」でもある、という循環の約束。イスラムの感謝実践(日々の礼拝や「アルハムドゥリッラー(神に讃えあれ)」)の根拠となる章句

心理学では
この章句は、感謝が恵みへの応答であると同時に次の恵みを呼び込む入口にもなるという「上方スパイラル」(よい感情と資源が互いを強め合う循環)を言い表している。大学生を追跡したWoodら(2008)の縦断研究では、感謝傾向の高い人ほど、その後に周囲からの社会的支援が増え、ストレスや抑うつが低いことが示された。またEmmons & McCullough(2003)の実験では、感謝したことを毎週書き留めた人は、そうでない人に比べて人生をより肯定的に評価し、運動の時間も増えた。一日の終わりに「ありがたかったこと」を一つ口にする習慣が、恵みの循環を回す入口になる。 参考:Woodら(2008)「The role of gratitude in the devel…」/Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」
人物
イスラム教の聖典(7世紀)
「果物を食べるときは、木を植えた人を思え」

— ベトナムのことわざ Ăn quả nhớ kẻ trồng cây

「飲水思源(水を飲んで源を思う)」と同系の東アジアの感謝定型

いま口にしている甘い果実は、何年も前に誰かが植え、育てた木から来ている ── 目の前の恩恵の背後にいる、会ったこともない貢献者を思い起こせという、ベトナムで最も親しまれる感謝のことわざ。祖先や教師への感謝の文脈でも使われる

心理学では
このことわざは、心理学でいう感謝傾向(日常的に感謝を感じやすい性質)のうち、「密度」と呼ばれる側面をよく表している。McCulloughら(2002)は感謝傾向の構造を整理し、感謝深い人ほど一つの良い出来事について多くの人への恩を感じやすいと論じた。またKooら(2008)は大学生を対象とした実験で、恋人との出会いなどの良い出来事が「もしなかったら」と想像させると(メンタル・サブトラクション:恩恵を頭の中で差し引く方法)、気分がより良くなることを示した。植えた人のいない世界を思い描くことは、まさにこの方法である。食事の前や成果を手にしたとき、その背後にいる誰か一人を思い浮かべる習慣が、感謝を深める助けになる。 参考:McCulloughら(2002)「The grateful disposition: A concep…」/Kooら(2008)「It's a wonderful life: Mentally su…」 ↗
「恵みを、一つずつ数えなさい(Count your blessings)」

Count your blessings, name them one by one.

— 英語圏の格言 讃美歌「When Upon Life's Billows」(ジョンソン・オートマン作詞、1897)で定着

人生の波に翻弄され落ち込んだときは、恵みを「一つずつ、名前を挙げて」数えよ、と歌う讃美歌から英語圏の日常語になった表現。感謝を漠然と感じるのではなく、具体的に列挙する点が要点

心理学では
「恵みを数える」は、心理学でいう感謝の介入(ありがたい出来事を意識して振り返り、書き出す練習)にあたる。Emmons & McCullough(2003)は大学生を対象に、感謝したことを毎週書き留める群と、煩わしい出来事などを書く群を比べる実験を行った。その結果、感謝を書いた群で人生への満足感や楽観が高まることを示した。論文名も、この格言を借りた「Counting Blessings versus Burdens」である。Frohら(2008)も思春期前期の生徒を対象に同様の実験を行い、感謝の記録が生活への満足を高めることを報告した。一日の終わりに、ありがたかったことを具体的に名前を挙げて書き出す習慣が、落ち込んだ日の支えになる。 参考:Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」/Frohら(2008)「Counting blessings in early adoles…」
「直会(なおらい)── 神に供えたものを、神とともに、皆でいただく」

— 神道の儀礼 祭りの後の共食(神人共食)の伝統

祭りは神事だけでは終わらず、供え物を下げて参加者全員で飲食する「直会」で完結する。神と人、人と人が同じものを食べることで、恵みへの感謝と共同体の結び直しが一度に行われる ── 祭りの本体ともいわれる仕組み

心理学では
直会は、心理学でいう共食(コメンサリティ:同じ食べ物を分かち合って食べること)を、恵みへの感謝の儀礼と結びつけた仕組みである。Woolley & Fishbach(2019)は実験で、初対面の人どうしが同じ皿から取り分けて食べると、その後の交渉でより協力的にふるまうことを示した。Dunbar(2017)の英国の成人を対象とした調査でも、人と食事をともにする機会が多い人ほど、幸福感や他者への信頼、地域とのつながりが高かった。感謝を言葉にするだけでなく、同じものを分け合う場をもつことが、関係を結び直すきっかけになる。仕事や家庭の節目のあとに皆で同じ料理を囲む時間をつくることが、労いと結束を確かめ合う助けになる。 参考:Woolley & Fishbach(2019)「Shared Plates, Shared Minds: Consu…」 ↗/Dunbar(2017)「Breaking Bread: the Functions of S…」 ↗
人物
日本の神道の伝統的儀礼

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