どんなレポートか
世界幸福データベース(World Database of Happiness/WDH)は、幸福を測った研究の結果を世界中から集め、一か所で見渡せるようにしたデータベースである。ここでいう幸福とは「人生を主観的にどれだけ楽しんでいるか」、つまり生活満足度(自分の人生全体にどれだけ満足しているか)のことを指す。運営しているのは、オランダのエラスムス大学ロッテルダムにあるエラスムス幸福経済研究機構(EHERO)で、創設者・ディレクターはルート・ヴィーンホーヴェン(Ruut Veenhoven)である。公式ページは目的を「より幸福になるには、何が私たちを幸福にするのかを知らなければならない」と説明している。政策担当者にはどのような社会や組織で人々が最も幸福を感じるのかを、個人には自分と似た人々の幸福を増やしやすい生き方は何かを知る手がかりを示すことを狙っている。研究は1980年に始まり、現在はEHEROに置かれている。
何をどう測っているか
WDHは独自に調査を行うのではなく、すでに発表された幸福研究を集めて整理する「文献のまとめ」型のデータベースである。作業は3段階で進む。第一に「概念による選別」で、主観的な人生の楽しみ(生活満足度)を扱った研究だけを選ぶ。第二に「妥当な測定による選別」で、その幸福をきちんと測れている質問を使った研究だけを残す。第三に「研究知見の抽出」で、各研究の結果を統一した書式と用語で電子的な「知見ページ(finding pages)」に書き起こす。知見ページはテーマ・場所・時期・方法論で分類され、検索できる。収録の柱は、幸福研究の文献目録、幸福の測り方の一覧、国や集団ごとの幸福度の分布の知見、幸福と他の要因との相関の知見であり、国別の幸福度の順位や推移のレポートもある。2026年10月の閲覧時点の規模は、文献目録18,012件、分布の知見23,632件、相関の知見24,413件である。
これまでの歩み
WDHのもとになる研究は1980年に始まった。1984年には、集めた知見をまとめたデータブックが刊行された。その後、1998年からウェブ上で公開されるようになり、誰でも知見ページを検索できる形になった。2012年からは、エラスムス大学ロッテルダムのエラスムス幸福経済研究機構(EHERO)に置かれている。更新は年刊のような決まった版ではなく、不定期に知見を追加していく方式である。公式ページの要点説明は中国語、ドイツ語、英語、スペイン語、フランス語、オランダ語で用意されている。
分かってきたこと
幸福研究は急増し、全体を見渡すのが難しくなっている
公式ページによると、幸福に関する科学的研究は盛んになっており、その数は年に800件を超えている。一方で、研究ごとに用語がばらばらで、公式ページはこれを「用語のバベル」と表現している。研究の数の多さと用語の不統一が重なり、成果を見渡すことが難しくなっている。WDHはこの問題に対応するために作られたデータベースである。
統一した書式で、知見同士を比べられるようにしている
WDHは、各研究の結果を標準化した書式と用語で知見ページに書き直している。これにより、異なる研究の結果を同じ物差しのもとで並べて見られる。公式ページは、この作業が入手可能な研究知見の概観を与え、さらに数量的な研究統合(複数の研究結果をまとめて分析すること)の準備になると説明している。
「分布」と「相関」の二種類の知見を大量に集めている
収録された知見は大きく二つに分かれる。分布の知見は、ある国や集団で幸福度がどのくらいの水準にあるかを示すもので、2026年10月の閲覧時点で23,632件ある。相関の知見は、幸福と他の要因との関係を示すもので、同時点で24,413件ある。これらは関係の傾向を記録したものであり、相関の知見がそのまま原因と結果を示すわけではない。
「幸福」の定義と測り方を厳しく絞り込んでいる
WDHが集めるのは、生活満足度という意味での幸福を扱った研究に限られる。さらに、その幸福を妥当に測っている質問を使った研究だけが採録される。幸福の測り方そのものも一覧として整理されており、どの質問がどの研究で使われたかを確かめられる。