どんな調査か
グローバル・フラーリシング・スタディ(Global Flourishing Study、GFS)は、人生のあらゆる面がうまくいっている状態を「フラーリッシング(flourishing)」と呼び、それを世界規模で測る国際パネル調査である。ベイラー大学のInstitute for Global Human Flourishingとハーバード大学のHuman Flourishing Programが共同で主導する。調査の実施はGallup、公開データの管理は研究の透明性向上を掲げる非営利団体Center for Open Science(COS)が担う。対象は6大陸22か国・地域の成人20万人以上で、100人を超える研究者が関わる。2023年の第1波から毎年、同じ人を追跡する設計である。資金はジョン・テンプルトン財団、フェッツァー研究所など複数の財団が提供している。
何をどう測っているか
中心となる物差しは、6つの領域を12問で測る「セキュア・フラーリッシュ指数(Secure Flourishing Index、SFI)」である。6領域は、幸福と生活満足、心身の健康、意味と目的、人柄と徳、人間関係、そして経済的・物質的な安定である。最初の5領域はそれ自体のために追い求められるもの、経済的な安定はそれらを支える土台と位置づけられている。経済面の2問を除いた5領域×2問の10問が「フラーリッシュ指数(Flourishing Index、FI)」で、各問は0〜10点で答える。これに加えて、フラーリッシングが育ちやすい環境を理解するための背景要因も尋ねている。同じ人を毎年追跡するパネル調査であるため、暮らしの要因とその後のウェルビーイングの関係を時間の順序に沿って調べられる点が特徴である。
これまでの歩み
第1波の調査は2023年に行われた。2024年2月13日、COSは第1波データを研究者向けに公開し、分析計画を事前登録した研究者はすぐに、事前登録なしの場合は各波の初回公開から1年後に機微でないデータを使える仕組みを告知した。2025年4月には第1波の結果がNature系の複数誌で一斉に発表され、その中心が研究の全体像と最初の結果をまとめた論文『The Global Flourishing Study: Study Profile and Initial Results on Flourishing』(Nature Mental Health、2025年)である。同じ2025年4月23日には、事前登録した研究者が第1波と第2波の両方を入手できるようになった。2026年4月8日には第1・2波のデータが正式な登録手続きなしで誰でもダウンロードできる形で公開され、研究者だけでなく記者、教育者、政策担当者も直接データを扱えるようになった。第3波は事前登録制での提供である。
分かってきたこと
若い世代ほどフラーリッシングが低い
幸福度は中年で落ち込み、その後回復するという「U字」が従来よく語られてきた。しかし第1波の主要論文では、このU字が見られず、若い成人ほど得点が低いという結果が示された。2026年のデータ公開の告知でも、若い世代のフラーリシングの低さが主な発見の一つとして紹介されている。
国の豊かさと人生の意味の感覚は逆向きの関係
国の豊かさと人生の意味の感覚のあいだには負の関係が見られた。1人あたりGDPが高い国ほど、総合点がやや低いという結果も出ている。これは国単位で見た相関であり、豊かさが意味の感覚を下げるという因果を示すものではない。
宗教参加との結びつき
宗教への参加とフラーリッシングの結びつきは、2026年の告知で紹介された3つの主な発見の一つである。公式サイトの記事によれば、週に1回より多く宗教行事に参加する人は、世界全体で希望の水準がもっとも高い。ただし同じ記事は、どの国に住んでいるかがそれ以上に大きく関わる可能性も指摘している。
国によって大きく異なる人間関係と信頼
所属感は、国によって年齢とともに強まる場合もあれば、薄れていく場合もある。周囲の人どうしが信頼し合っていると感じるかという「知覚された社会的信頼」では、米国が最下位で、国内のほとんどの人が互いを信頼していると考える米国人は10人に1人にとどまる。
生活評価の1問だけでは捉えきれない
公式サイトは、世界の幸福度ランキングに使われる質問(人生全体を評価する1問)が、人生を良いものにする全体像を見落としている可能性を論じる記事を掲げている。複数の領域を並べて測るGFSの考え方は、この問題意識に立っている。