世界の思想と宗教の幸福観マップ

← 17のマップ一覧

マップ10 成立時期 × 地域——幸福観はいつ、どこで生まれたか

この地図の結論
主要な幸福観の原型は紀元前の三つの地域で同時に出揃い、近代に新しい幸福観を作ったのは西洋だけである。紀元前の行に南アジア・東アジア・地中海が並ぶ(枢軸時代〔前8〜前3世紀、世界各地で主要な思想が同時に生まれた時代〕)。0〜1000年は一神教と仏教(大乗)・密教・チベット仏教・禅の形成、1000〜1800年は既存思想の内部潮流(新儒教・カバラ・ハシディズム・修験道・シク教)の時代で、1800年以降に新しく生まれた幸福観は西洋近代の哲学と深層心理学に限られる。口承思想は年代を持たず、この表に「置けない」こと自体が構造的な情報である。
実務上の帰結:近代に生まれた幸福観はほぼすべて分離型・現世型・個人主語であり(マップ3・4・8)、現代の幸福科学の前提はこの最も新しい一群に由来する。「人類の幸福観」を語るとき、時間的にも地域的にも、私たちが標準と見なしているものが最も特殊であることをこの表は示している。
この地図の目盛りの定義

◎○△×の件数は「47の思想をこの見方で分類した内訳(=見方の多様さ)」であって、実証研究の裏づけや、思想の優劣を表すものではありません。

目盛り定義
紀元前紀元前に成立。いわゆる枢軸時代(前8〜前3世紀)に主要な幸福観の原型が出揃った
0〜1000年紀元後1000年まで。一神教の成立・展開、仏教(大乗)・密教・チベット仏教・禅の形成、道教・神道の制度化
1000〜1800年中世〜近世。既存思想の内部潮流(新儒教・カバラ・ハシディズム・修験道・シク教)の成立
1800〜1950年近代。西洋近代哲学と深層心理学の成立
1950年〜現代。現代の徳倫理学の復興、ケイパビリティ・アプローチ(各人が実際に選べる生き方の幅で豊かさを測る立場)など
口承文字による成立年代を持たない口承思想。年代を割り当てることが構造的に不適切
地域成立地。伝播先ではなく、その幸福観の原型が形成された地域
南アジア東アジア日本西アジア地中海ヨーロッパ北米中南米アフリカオセアニア世界各地
紀元前仏教(上座部)、仏教(大乗)、ヒンドゥー(ヴェーダーンタ)、ヒンドゥー(ギーター)、ジャイナ教儒教(原始)、道家(老荘)プラトン、アリストテレス、ストア派、エピクロス派、キュニコス派・ピュロン主義
0〜1000年密教・チベット仏教禅、道教神道ユダヤ教、キリスト教、キリスト教観想的思想、イスラム教、スーフィズム
1000〜1800年シク教新儒教仏教(浄土)、仏教(日蓮)、修験道カバラ・ハシディズム、カント
1800〜1950年功利主義、ニーチェ、実存主義、アドラー(個人心理学)、ユング(分析心理学)プラグマティズム、世俗的人文主義
1950年〜現代の徳倫理学、ケイパビリティ・アプローチ、ポジティブ心理学3.0ポジティブ心理学1.0、ポジティブ心理学2.0
口承アイヌ北米先住民(Hózhó/Mino-Bimaadiziwin)スマック・カウサイUbuntu(「人は他者を通して人になる」という南部アフリカの人間観)、アフリカ哲学の共同体主義マオリ先住民的世界観(総論)
読み取れること
・紀元前の行に南アジア・東アジア・地中海が並ぶ——いわゆる枢軸時代(前8〜前3世紀)に主要な幸福観の原型が三つの地域で同時に出揃った。
・0〜1000年は西アジア(一神教三宗教とその神秘主義〔神や究極の実在との直接的な合一を目指す考え方〕)と東アジア(禅・道教・神道)。
・1800年以降はヨーロッパ・北米にほぼ限られる。近代の幸福論は地理的に偏っている。
・口承思想は年代を持たないが、それは「古い」ことを意味しない。学術的定式化・憲法化・モデル化はすべて1950年以降であり、現在進行形で作られている思想として読むべき。
はぴテックの二枚の地図 発達段階×ウェルビーイング統合マップ → この幸福観マップの姉妹版。あちらは「縦に5段階を貫く翻訳辞書」で、同じ言葉が段階ごとに別の意味で聞こえる(875行×5段階)。