どんなレポートか
地球幸福度指数(Happy Planet Index、HPI)は、各国が「地球の限界の中で、どれだけ長く幸せに生きているか」を測る国際指数である。2006年に始まり、考案者はニック・マークスである。以前の版は英国のニュー・エコノミクス財団(NEF)やWEAllが発行し、2026年版はドイツ・ベルリンのシンクタンク、ホット・オア・クール研究所(Hot or Cool Institute)が発行した。2026年版は第7回で、2025年までのデータで134か国を比べている。公式サイトは、HPIを国内総生産(GDP)に代わって「本当に大切なもの=すべての人の持続可能なウェルビーイング(よく生きている状態)」を測る指標と位置づけ、「良い暮らしは地球を犠牲にしなくてもよい」と訴えている。2026年10月22日には20周年を記念するウェビナーが予定され、次の段階として「学校でのHPI」を始めるとしている。
何をどう測っているか
HPIは3つの要素を組み合わせて計算する。1つ目は人生の評価で、キャントリルの梯子(0〜10の段のどこに自分の人生があるかを答える質問)を使い、ギャラップ世界世論調査(Gallup World Poll)の各国約1,000人の回答にもとづく。2つ目は平均寿命で、人生の評価と掛け合わせると「幸せに生きる年数」に当たる値になる。3つ目は1人あたりのエコロジカル・フットプリント(暮らしを支えるのに使う自然の面積で、グローバルヘクタール=ghaで表す)で、「幸せに生きる年数」をこれで割る。つまりHPIは、長く満足した暮らしを、それに使った環境資源の量に対してどれだけ効率よく実現しているかを示す。スコアは0〜100で表される。使うデータは各国の行政統計などで、版は不定期に出されている。
これまでの歩み
2021年版はWEAllが発行し、2019年のデータで152か国を順位づけた。首位はコスタリカ(62.1点)で、上位10か国のうち8か国を中南米が占め、世界平均は43.1点にとどまった。2024年版(第6回、2024年5月2日公表)は2006〜2021年のデータを扱い、環境負荷として炭素フットプリント(温室効果ガス排出量)を使い、公正な炭素排出枠との比較を行った。この版では2021年の首位が南太平洋の島国バヌアツ、2位がスウェーデンで、2009年から首位だったコスタリカはコロナ禍の打撃もあって4位に下がった。2026年版(第7回)はホット・オア・クール研究所が発行し、環境負荷の指標をエコロジカル・フットプリントとして134か国を比べ、コスタリカが首位に返り咲いた。2026年版は新たに、男女差、女性指導者の効果、4万人を超える個人データという3つの分析を加えている。
分かってきたこと
持続可能なウェルビーイングを達成した国は無い
どの版でも、長い寿命・高い人生の評価・地球の限界内の環境負荷の3つをすべて満たした国は1つも無い。2021年版では、3つの要素すべてで良い結果を出した国が無いことが最大の話題であった。2024年版でも、長い寿命と高い生活評価を公正な炭素排出枠の中で両立できた国は無かった。2026年版も、持続可能なウェルビーイングを達成した国は1つも無かったと報告している。
中南米が上位に来やすく、豊かな国は順位が下がりやすい
HPIは環境負荷で割るため、豊かな国は幸福度や寿命が高くても負荷が大きく、順位が下がりやすい。2021年版では上位10か国のうち8か国を中南米が占めた。コスタリカは2009年から首位を続け、2024年版で4位に下がったものの、2026年版で首位に戻った。2024年版ではバヌアツが首位、スウェーデンが2位であった。
世界全体ではまだ低い水準
2021年版の世界平均は43.1点で、首位コスタリカの62.1点とは大きな差がある。同じ版では、環境の限界内で消費している国は全体の3分の1にすぎなかった。公式サイトは「世界は着実に良くなっている」という広く共有されてきた考えに問いを投げかけ、時系列の推移を示している。
寿命と人生の評価は必ずしも一致しない
2026年版は、アジアの国々が寿命では好成績だが、人生の評価では上位に入らないと指摘している。2024年版では、平均寿命の上位5か国(香港、日本、オーストラリア、スイス、マルタ)がいずれも1人あたりGDP4万ドル超の国であった。このように、3つの要素はそれぞれ別の動きをするため、国ごとの強みと弱みが分かれる。