どんな調査か
欧州生活の質調査(European Quality of Life Survey、EQLS)は、EUの機関であるユーロファウンド(Eurofound、欧州生活労働条件改善財団)が実施する国際比較調査である。2003年に始まり、暮らしの質を多くの側面から捉える「監視の道具」として位置づけられている。国内総生産(GDP)や所得といった経済成長・生活水準の従来の指標を補う指標群として育ってきた。ユーロファウンドは、EQLSの指標がGDPと同じくらい分かりやすく、しかも進歩の環境面・社会面をより広く含むため、EUや各国の意思決定や公共の議論に取り入れやすいと説明している。調査の主な目的は、リスクを抱える集団や懸念される問題、進歩している点を見つけること、同じ基準の指標で傾向を追うこと、生活条件に関する欧州の政策づくりに貢献することの3つである。本調査は2003・2007・2012・2016年に行われ、第5回のEQLS 2026が準備中である。
何をどう測っているか
EQLSは、18歳以上の成人を代表するように選んだ人に質問票で尋ねる面接調査である。暮らしの客観的な状況と、その状況や人生全体を本人がどう感じているかの両方を、同じ人に尋ねる点が特徴である。扱う分野は雇用、所得、教育、住宅、家族、健康、仕事と生活のバランスなど、EUの機関が進める幅広い政策分野に対応しており、「生活の質」「社会の質」「公共サービスの質」の3つにまとめられる。主観的な項目としては、生活満足度や幸福感(1〜10で答える)、楽観性、社会や公共サービスの質をどう受け止めているかを尋ね、2016年版などではWHO-5精神的ウェルビーイング指数(世界保健機関が作った、最近の気分や活力を5問で測る指標)も用いている。2016年版はEU28か国と加盟候補5か国の計33か国で、各国原則約1,000人、合計3万6,908人に2016年9月〜2017年3月に対面で話を聞いた。EQLS 2026はEU27か国で2026年秋に実施され、面接ではなく、まずウェブで、答えない人には紙で回答してもらう自記式の順次混合方式に切り替わる。
これまでの歩み
第1回は2003年に行われ、欧州の人々の生活条件と社会的な状況を記録した。第2回の2007〜2008年版は、所得と家計、教育、住宅と地域環境、家族関係、仕事、健康、仕事と生活のバランス、主観的ウェルビーイング、社会参加、社会サービスの質、社会の質を重点的に扱った。2009年にはEQLS 2007〜2008の質問の一部がユーロバロメーター(EUの世論調査)に組み込まれ、2003〜2009年の生活の質の推移を分析できるようになった。第3回の2012年版は34か国で計43,636件の面接を行い、EU加盟国では2011年9月〜2012年2月に実施され、経済危機の影響を映し出した。第4回の2016年版は33か国・3万6,908人を調べ、3分野がおおむね改善したと結論づけた。2020〜2025年は本調査の代わりに、オンラインの「Living and Working in the EU」電子調査で生活満足度やWHO-5を追ってきた。EU拡大の見通しや欧州自由貿易連合(EFTA)諸国の関心を受けて対象国は広がってきたが、第5回のEQLS 2026はEU27か国に絞り、調査方式も自記式に変える。
分かってきたこと
経済危機で楽観性と幸福感が大きく落ちた(2012年版)
2012年版では、経済危機を背景に、EUの一部の国で楽観性と幸福感の水準が20%以上下がった。3分の1を超える人が、過去5年で家計が悪化したと答えた。政府や議会への信頼も下がり、経済的に深刻な国ほど落ち込みが大きかった。
2016年には3分野がおおむね改善したが、一様ではない
2016年版の全体の結論は、生活の質・社会の質・公共サービスの質の3分野がおおむね改善したというものである。ただし、すべての国、すべての社会集団で改善したわけではない。楽観性は前回より上がった一方、生活満足度と幸福感は横ばいだった。
仕事と生活のバランスや老後の不安は悪化した
2016年版では、仕事と生活のバランスが前回より悪化した。また、3分の2の国で老後の所得が足りなくなることへの深刻な懸念がみられた。全体として改善がみられる中でも、課題が残る領域があることを示している。
多面的な捉え方は版を重ねても保たれてきた
ユーロファウンドは、生活の質を多面的に捉える枠組みが版を重ねても揺らいでいないと説明している。新しい政策テーマに合わせて話題や指標は広がってきたが、基本の構図は保たれている。定期的に実施することで、人々の生活の質の主な傾向を時系列で追えるようになった。