幸せの名言集

マルクス・アウレリウスの名言6選

ローマ皇帝・ストア派哲学者(121-180)

「持っていないものを思うな。持っているもののうち、最も恵まれたものを思え」

Think not so much of what you lack as of what you have.

— マルクス・アウレリウス 『自省録』第7巻

注意の向け先を欠乏から充足へ切り替えよ

心理学では
この言葉は、注意の向け先を「足りないもの」から「すでにある恵み」へ移す「感謝」の構え(自分が受け取っている恵みに気づき、ありがたく思う心の働き)を勧めている。Emmons & McCullough(2003)は大学生らを対象にした実験で、毎週「恵まれていること」を書き出すグループが、「わずらわしいこと」を書くグループに比べて人生全体をより肯定的に評価し、先の見通しも明るくなることを示した。Seligmanら(2005)の介入実験でも、毎晩その日のよかった出来事を三つ書く「三つの良いこと」が幸福感を高め、その効果は数か月続いた。寝る前に、今日手にしていた恵みを一つ思い浮かべる習慣が、満ち足りた心を育てる助けになる。 参考:Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」/Seligmanら(2005)「Positive Psychology Progress: Empi…」
「苦しみは出来事そのものからではなく、それに対する自分の評価から生じる。そしてその評価は、今この瞬間に取り消すことができる」

If you are distressed by anything external, the pain is not due to the thing itself, but to your estimate of it; and this you have the power to revoke at any moment.

— マルクス・アウレリウス 『自省録』第8巻

評価を変えれば、苦しみはいま消せる

心理学では
この言葉は、心理学でいう認知的再評価(出来事の意味づけを捉え直して感情を変える方法)を的確に言い表している。Gross(1998)の実験では、不快な映像を見る際に「医学的な目で客観的に見よう」と捉え直した人は、感情を押し殺した人と違って嫌悪感そのものが弱まり、体の興奮も高まらなかった。Gross & John(2003)の調査でも、日頃から再評価を使う人ほど前向きな感情や幸福感が高いことが示されている。ただし大きな喪失の直後は、まず気持ちを受け止めてから捉え直すとよい。心がざわついたら「別の見方はできないか」と一度問い直すことが、気持ちの切り替えの助けになる。 参考:Gross(1998)「Antecedent- and response-focused e…」 ↗/Gross & John(2003)「Individual differences in two emot…」
「まっすぐであれ。まっすぐに立たされるのではなく」

Be upright, not be kept upright.

— マルクス・アウレリウス 『自省録』第3巻・第7巻

外からの支えではなく、内から立つ

心理学では
この言葉は、自己決定理論でいう自律的動機づけ(自分で価値を認め、納得して行動すること)と、統制的動機づけ(罰や評価など外からの圧力で行動すること)の違いに重なる。Williamsら(1996)は減量プログラムの参加者を長期に追跡した縦断研究で、自律的な理由で参加した人ほど通い続け、減らした体重を維持しやすいことを示した。Pelletierら(2001)も競泳選手を追跡し、自ら価値を見いだして練習する選手ほど長く競技を続けることを報告している。外から支えられた姿勢は、支えが外れると崩れやすい。習慣や仕事のルールも「なぜ自分にとって大切か」を言葉にしておくことが、内から立つ力を育てる。 参考:Williamsら(1996)「Motivational predictors of weight …」 ↗/Pelletierら(2001)「Associations Among Perceived Auton…」 ↗
「他人の心の中を見ないことで不幸になる人はいない。しかし、自分の心の動きを見張らない者は、必ず不幸になる」

— マルクス・アウレリウス 『自省録』第2巻

注意を他人の内面詮索から自分の内面管理へ

心理学では
この名言は、注意の向け先を他人の内面の詮索(社会的比較:他人と自分を比べること)から、自分の心の動きへの気づき(マインドフルネス:いまの思考や感情にありのまま注意を向けること)へ移すよう勧めている。Lyubomirsky & Ross(1997)は大学生を対象とした実験で、幸福感の低い人ほど、隣で課題を解く他者の出来に気分や自己評価が左右されやすいことを示した。またBrown & Ryan(2003)の相関研究では、自分の心の動きに気づいている人ほど幸福感が高く、否定的な感情が少なかった。他人の胸の内を推し量りそうになったら、いま自分が何を感じているかに一度注意を戻す。その小さな習慣が、比較に振り回されない落ち着きにつながる。 参考:Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」/Brown & Ryan(2003)「The benefits of being present: Min…」
「幸福な人生を送るのに必要なものは、ごくわずかである。そのすべては、あなた自身の中に、あなたの考え方の中にある」

Very little is needed to make a happy life; it is all within yourself, in your way of thinking.

— マルクス・アウレリウス 『自省録』第7巻

ローマ帝国の全権力と全財産を手にした皇帝が、陣中の日記に書きつけた結論。外的資源を極限まで持った人物による「必要なものはごくわずか」という証言には、実験に近い説得力がある

心理学では
この言葉は、幸福を左右するのは外的な条件よりも、出来事の受け止め方(認知的評価)や何を大切にするか(価値観)だという考えに重なる。Dittmarら(2014)は多数の研究をまとめたメタ分析で、お金や持ち物を重視する価値観(物質主義)が強い人ほど、生活満足や心の健やかさが低い傾向にあることを示した。また、Lyubomirsky & Ross(1997)の実験では、幸福感の高い人は自分より成績のよい他者を目にしても気分が揺らぎにくく、同じ状況を不幸な人とは違う形で受け止めていた。足りないものを数える前に、すでにあるものへの自分の見方を点検することが、幸福の土台を内側に築く助けになる。 参考:Dittmarら(2014)「The relationship between materiali…」/Lyubomirsky & Ross(1997)「Hedonic consequences of social com…」
「人が生きるのは、現在というこの一瞬だけである。他はすでに生きられたか、不確かであるかだ」

— マルクス・アウレリウス 『自省録』第3巻

所有している時間は「今」だけである

心理学では
この言葉は、マインドフルネス(いまの体験に評価を加えず注意を向ける心の状態)の核心を言い当てている。Killingsworth & Gilbert(2010)は、スマートフォンで日常の気分と考えごとを随時尋ねる経験サンプリング研究(日常のその場で何度も回答を求める方法)を行った。その結果、心が目の前の活動から離れてさまよっているときほど、幸福感が低かった。またBrown & Ryan(2003)は、現在への気づきが高い人ほど心理的ウェルビーイング(心の健やかさ)が高いことを相関研究で報告している。食事や会話の最中に意識を目の前の感覚へ戻すことが、手の中にある唯一の時間を生きることにつながる。 参考:Killingsworth & Gilbert(2010)「A Wandering Mind Is an Unhappy Min…」/Brown & Ryan(2003)「The benefits of being present: Min…」

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