研究の系譜と論争 ・ 世界 ・ 系譜3
自尊感情論争(高い自尊感情は良いことか)
1980〜90年代には自尊感情を高めることが教育や臨床の目標とされたが、Baumeister et al.(1996)が暴力の原因は低い自尊感情ではなく脅かされた自己愛だと論じ、Baumeister et al.(2003)の大規模レビューは自尊感情が成績や対人関係を改善する証拠は弱いと結論した。
これに対しOrth & Robins(2022)は縦断研究と事前登録研究の蓄積を踏まえ、自尊感情は幸福・人間関係・仕事・健康に小〜中の因果的効果を持つと再評価した。並行してCrocker & Wolfe(2001)の自己価値の随伴性、Kernis(2003)の安定性、Neff(2003)のセルフ・コンパッションが「高さ」ではなく「質」への転換を進めた。
日本では内田(2008)が自己価値の随伴性尺度を、伊藤・小玉(2005)が本来感を提案している。
この系譜の論文(年順・6本)
- 1996W0251 脅かされた自己愛と暴力・攻撃性の関係:高い自尊感情の暗い側面 Baumeister(1996) Psychology Review 主要400 被引用 2,416 暴力の主因は低い自尊感情ではなく、肥大した自己評価が脅かされることだと学際的レビューで論じた。
- 2001W2334 自己価値の随伴性 Crocker(2001) Psychological Review 主要400 被引用 1,555 自尊感情は人によって異なる領域(外見・承認・学業など)の成否に依存しており、その依存の仕方が感情と行動を左右するという理論を提案した。
- 2003W0041 セルフ・コンパッション:自分自身への健全な態度の代替的概念化 Neff(2003) Self and Identity 主要400 被引用 5,426 自尊感情に代わる健全な自己への態度として、3要素からなるセルフ・コンパッションの概念を提唱した。
- 2003W2307 高い自尊感情はより良い業績、対人的成功、幸福、健康的なライフスタイルをもたらすか Baumeister(2003) Psychological Science in the Public Interest 被引用 0 高い自尊感情が業績や対人関係を改善する証拠は乏しいが、幸福や失敗後の粘り強さとは関連することを示した。
- 2003W2333 最適な自尊感情の概念化に向けて(ターゲット論文) Kernis(2003) Psychological Inquiry 主要400 被引用 1,762 高い自尊感情には脆いものと安定したものがあり、本来感(オーセンティシティ)に根ざした「最適な自尊感情」が望ましいことを提案した。
- 2022W0837 高い自尊感情は有益か?古典的な問いの再検討 Orth(2022) American Psychologist 被引用 367 自尊感情は人間関係・学業・仕事・心身の健康・反社会的行動の各領域で有益な効果をもつことを多数の研究から示した。
系譜図でこの流れの論文だけが浮かび上がり、左から右へ年代順に並びます。
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