幸せの名言集

アルフレッド・アドラーの名言5選

オーストリアの精神科医(1870-1937)。個人心理学(アドラー心理学)の創始者

「劣等感は、病気ではない。健康で正常な、努力と成長への刺激である」

— アルフレッド・アドラー 『人生の意味の心理学』(1931)の趣旨

「劣等感」という言葉を広めた本人による、劣等感の名誉回復。理想の自分との差を感じるからこそ、人は工夫し、練習し、成長する ── 問題は劣等感そのものではなく、努力を放棄して言い訳に使うこと(劣等コンプレックス)だと区別した

心理学では
アドラーの言う劣等感は、心理学でいえば「理想の自分と現実の自分の差」(自己不一致)の自覚であり、その差を縮めようとする働きは成長への動機づけの源になる。Lockwood & Kunda(1997)は大学生を対象に実験を行い、優れた人物の成功談に触れたとき、その成功が自分にも手の届くものだと感じられる場合には、自己評価が高まり、刺激を受けて意欲がわくことを示した。またBreines & Chen(2012)の実験では、自分の弱点や失敗を思いやりをもって受け止める(セルフ・コンパッション)よう促された人は、改善への意欲が高く、試験に失敗した後の勉強時間も長かった。「自分はまだ足りない」と感じたときは、それを自分を責める材料ではなく、次の一歩を決める合図として受け止める。 参考:Lockwood & Kunda(1997)「Superstars and me: Predicting the …」 ↗/Breines & Chen(2012)「Self-Compassion Increases Self-Imp…」 ↗
「共同体感覚 ── 他者を仲間と見なし、そこに自分の居場所があると感じられること」

— アルフレッド・アドラー 個人心理学の中核概念(Gemeinschaftsgefühl)

世界を「敵だらけの戦場」と見るか、「仲間のいる共同体」と見るか。後者の感覚こそ精神的健康の指標であり、あらゆる対人の悩みの出口だとアドラーは考えた。他者信頼・自己受容・他者貢献の三つ組で育つとされる

心理学では
アドラーのいう共同体感覚は、心理学でいう所属感(集団に受け入れられ、そこに居場所があるという感覚)に近い。Baumeister & Leary(1995)は多くの研究を概観し、人には安定したつながりを求める根源的な欲求(所属欲求)があり、それが満たされないと心身の健康が損なわれやすいと論じた。Lambertら(2013)は相関研究と縦断研究に加えて実験も行い、所属感を思い起こさせると、人は人生の意味をより強く感じることを示した。身近な人を「敵」ではなく「仲間」として見る目線を持ち、小さな貢献を重ねることが、自分の居場所を育てることにつながる。 参考:Baumeister & Leary(1995)「The need to belong: Desire for int…」/Lambertら(2013)「To Belong Is to Matter」
「それは、誰の課題か ── 他者の課題には踏み込まず、自分の課題に他者を踏み込ませない(課題の分離)」

— アルフレッド・アドラー(アドラー心理学の定式) 『嫌われる勇気』で広く知られた実践原則

定式化は現代の解説による

「その選択の結末を最終的に引き受けるのは誰か」で課題の持ち主を判定し、他人の課題(あなたをどう評価するか等)を手放す ── 対人ストレスの大部分は、他者の課題への越境か、自分の課題への侵入の放置から生じる、という整理術

心理学では
課題の分離は、心理学でいえば対人関係における境界(自分と他者の責任の線引き)の考え方に重なる。Fritz & Helgeson(1998)は、自分をおろそかにしてまで他者の問題に深入りする傾向を「非緩和的共同性」(行き過ぎた世話焼き)と名づけた。相関研究の結果、この傾向が強い人ほど抑うつや不安などの心理的苦痛が大きかった。またCrocker & Park(2004)は先行研究を総覧し、他者の承認に自尊心を預けるほど自尊心が揺らぎやすく、人間関係も損なわれやすいと論じた。ただし手放すことは突き放すことではなく、相手が求めたときには援助する姿勢と組み合わせるとよい。迷ったら「この結末を引き受けるのは誰か」と自問することが、心配の荷を軽くする助けになる。 参考:Fritz & Helgeson(1998)「Distinctions of unmitigated commun…」 ↗/Crocker & Park(2004)「The Costly Pursuit of Self-Esteem.」 ↗
「重要なのは、人が何を持って生まれたかではない。与えられたものを、どう使うかである」

It is not what one is born with, but what use one makes of it, that counts.

— アルフレッド・アドラー 『人生の意味の心理学』ほか

器官劣等性(生まれつきの弱さ)の研究から出発したアドラーの結論。手札の中身は選べないが、切り方は選べる ── 「配られたカードで勝負する」思想の心理学における原典的定式

心理学では
アドラーは自らの立場を「所有の心理学ではなく使用の心理学」と呼んだ。この名言は、生まれ持った資質の有無より、手持ちの強み(その人らしい長所)をどう活用するかが充実を左右するという「強みの活用」の考え方に重なる。Woodら(2011)は成人を対象にした縦断研究で、日頃から自分の強みをよく使っている人ほど、その後の数か月で活力や自尊感情が高まり、ストレスが低くなる傾向を見いだした。またSeligmanら(2005)の介入実験では、自分の代表的な強みを毎日新しいやり方で使う課題が、幸福感を高め抑うつを和らげる効果を数か月にわたって示した。足りないものを数える前に、今日の仕事や家事で自分の得意をひとつ使ってみることが、確かな一歩につながる。 参考:Woodら(2011)「Using personal and psychological s…」/Seligmanら(2005)「Positive Psychology Progress: Empi…」
「幸福とは、貢献感である」

— アルフレッド・アドラー(アドラー心理学の定式) 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(2013)で広く流布した要約

定式化は『嫌われる勇気』による現代的要約

「誰かの役に立っている」という主観的な感覚 ── それが幸福の正体だとするアドラー心理学の結論。実際に感謝されたかどうかではなく、貢献「感」でよいという点が要諦で、承認欲求(他者の評価待ち)から幸福を切り離す

心理学では
アドラーのいう貢献感は、心理学の「善行感(beneficence:自分が他者に良い影響を与えているという感覚)」に近い。Martela & Ryan(2016)は、調査によって、他者の役に立っていると感じる人ほど幸福感が高く、この感覚が自律性などの基本的欲求とは別に幸福と関連することを示した。さらに実験で、人助けにつながる作業が善行感を通じて気分を高めることも確かめている。Dunnら(2008)の実験でも、受け取ったお金を他人のために使った人は、自分のために使った人より幸福感が高かった。日々の小さな手助けを「役に立てた」と自分で味わうことが、他人の評価に頼らない幸福につながる。 参考:Martela & Ryan(2016)「The Benefits of Benevolence: Basic…」/Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」

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