どんな調査か
子どもの世界調査(Children's Worlds:International Survey of Children's Well-Being/ISCWeB)は、子どもの主観的ウェルビーイング(子ども自身が感じる幸福やよい状態)を調べる世界規模の調査である。各国の研究者がつくる国際ネットワークが実施し、ジェイコブス財団が支援している。目的は、子どもの生活や日々の活動、時間の使い方、そして何より子ども自身が自分の幸福をどう感じ、どう評価しているかについて、確かで代表性のあるデータを集めることである。その結果を子ども本人や親、地域社会だけでなく、オピニオンリーダー、政策決定者、専門職、一般の人々に知ってもらい、子どものウェルビーイングを高めることを掲げている。第1波(2011〜12年)から始まり、2020〜22年の第4波まで不定期に続いている。
何をどう測っているか
各国の研究者が学校で、主に8歳・10歳・12歳の子どもに共通の質問紙で尋ねる横断調査(ある時点の状態を一度に調べる調査)である。生活全体への満足に加え、家族・友だち・学校・住んでいる地域などへの満足、感情、時間の使い方を調べる。生活満足度は「子どもの主観的ウェルビーイング尺度(CW-SWBS)」で測り、生活全体についての5つの項目に0〜10で答えてもらう。感情は「ポジティブ・ネガティブ感情尺度(CW-PNAS)」で、楽しい気持ちとつらい気持ちの両方を測る。12歳には、生きる意味や成長の感覚などにあたる「心理的ウェルビーイング尺度(CW-PWBS)」も加わる。第4波のコロナ禍調査では対象を7〜15歳に広げ、コロナ前と比べた生活とウェルビーイングの変化を子ども自身の回答で調べた。
これまでの歩み
第1波は2011〜12年に14か国で実施された。第2波(2013〜15年)では、8歳に焦点を当てた比較報告書「Children's views on their lives and well-being in 16 countries」が2015年に出され、4大陸16か国の17,496人の8歳児の回答をまとめた。第3波(2016〜19年)は35か国・地域、128,184人に規模を広げ、2020年8月に比較報告書「Children's views on their lives and well-being in 35 countries」が無料公開された。同年11月には第3波の結果を紹介する国際ウェビナーがオンラインで開かれ、2021年7月には第3波のデータベースが申請により無料で利用できるようになった。2021年3月にはコロナ禍の子どもの生活の変化を調べるCOVID-19補足調査が始まった。これが第4波(2020〜22年)となり、2022年の比較報告書「Children's views on their lives and well-being during Covid-19」は20か国・23,803人の7〜15歳の回答を扱い、報告書自身はこの種の調査として過去最大規模と位置づけている。第4波のデータベースは24か国・27,359人分として、申請により無料で公開されている。
分かってきたこと
コロナ禍では、すべての国で子どものウェルビーイングが下がった
第4波の報告書によると、調べたすべての国で、コロナ禍の間の全体的なウェルビーイングと幸せはコロナ前より有意に低かった。友だちへの満足と学びへの満足は全ての国で下がった。家族への満足も1か国を除いて下がっている。多くの国で「退屈」の得点が特に高かった。
国の豊かさと子どもの幸福度の順位は一致しない
第3波では、10歳の生活満足度で下位5か国・地域がすべてアジアだった。国の豊かさと子どもの幸福度の順位は一致しなかった。ポジティブな感情の平均ではアルバニアが最上位で、香港・台湾・バングラデシュなどが下位だった。経済的に豊かな地域が上位に並ぶとは限らない。
8歳児の生活満足度は全体に高いが、国による開きがある
第2波の8歳児報告書では、生活全体の満足度の平均は0〜10換算で全体8.50と高かった。それでも国ごとの差はあり、最高はルーマニアの9.08、最低はエチオピアの7.49だった。報告書は、この年齢層でこれほど多様な国を対象に子ども自身の視点を調べた研究は国際的にも例がないと位置づけている。
国別平均を単純に並べて比べることには限界がある
第3波の報告書は、主観的ウェルビーイング尺度の国別平均を単純に比べることは統計的に支持されないと自ら明記した。子どもの答えは高い点に偏りやすい。そのため国どうしの差は小さく、わずかな点差で順位が入れ替わる。この調査は、順位表を作るためのものではない。子どもの生活のどの側面に満足や不満があるかを見るための資料として扱う必要がある。