どんなレポートか
荒川区民総幸福度(Gross Arakawa Happiness:GAH、グロス・アラカワ・ハッピネス)は、東京都荒川区が区民の幸せを区政の目標に据えて進める取り組みである。区は荒川区基本構想のもと、だれもが幸せを実感できるまち「幸福実感都市あらかわ」の実現を掲げている。GAHは、区民の幸福実感を測る指標を作り、それを測定・分析して、より良い区政運営につなげる仕組みである。指標の土台は、公益財団法人荒川区自治総合研究所が2011年・2012年の中間報告書で提案した。区民アンケートは平成25年(2013年)度から続き、令和7年(2025年)7月から9月にかけて12回目の調査が行われた。結果は行政評価の指標に取り入れられ、さまざまな施策の立案に使われている。
何をどう測っているか
指標の最上位には「あなたは、幸せだと感じますか?」という問いを置き、5段階で答えてもらう。これを幸福実感度とし、荒川区基本構想の6つの都市像に対応した「健康・福祉」「子育て・教育」「産業」「環境」「文化」「安全・安心」の6分野の指標と合わせて46指標で構成する。研究所は主観指標(本人の感じ方)と客観指標(統計などの数値)を区別し、指標を一つの数字にまとめず、属性ごとに分けて分析する方針をとる。2025年度調査は、住民基本台帳から18歳以上の区民4,000人を層化2段無作為抽出(地域などで層に分けたうえで2段階でくじ引きのように選ぶ方法)で選び、2025年7月30日〜9月1日に郵送で配布し、礼状兼督促はがきも送った。回答は郵送(1,030件、60.6%)と電子申請(667件、39.2%)などで集め、1,700件、回収率42.5%となった。調査票は日本語・英語・簡体中国語・ハングルの冊子とインターネット版(日本語)で、総設問数は71問(自由記述3問、属性を尋ねるフェイスシート15問を含む)である。各年の報告は単純集計の冊子と、地域・性別・年齢・居住年数・家族構成・住まい・職業・配偶者・世帯年収・子どもの年齢などで分けたクロス集計表の2本立てで公開されている。
これまでの歩み
調査は平成25年度に始まり、公式ページには平成25年度から令和元年度までと、令和3年度以降の結果が掲載されている(令和2年度の結果は一覧にない)。初期の平成25年度・26年度のクロス集計表は1冊にまとめて2015年3月に公表され、たとえば「体を動かしたり運動したりすることができていると思いますか?」「健康的な食生活を送ることができていると感じますか?」といった健康分野の設問を、地域や年代別に細かく示している。8回目にあたる2021年度は1,860人が回答し、幸せだと≪感じる≫(5段階の上位2つ)は53.4%、≪感じない≫(下位2つ)は8.9%だった。2022年度は1,739人が回答し、≪感じる≫は52.4%で、交通の便を良いと感じる人が68.5%にのぼる一方、地域が災害に強いと感じない人は54.1%だった。2023年度は1,607人が回答し、≪感じる≫53.9%、自由記述では約5割が幸せに重要なこととして「身体の健康・医療介護」を挙げ、不安の第1位は「仕事・経済状況」だった。2024年度は1,562人で≪感じる≫53.5%、重要な分野で「健康・福祉」30.7%と「安全・安心」29.4%がほぼ並んだ。2025年度は1,700人が回答し、≪感じる≫は55.3%、≪感じない≫は9.2%である。
分かってきたこと
幸せだと感じる区民は5割強で安定している
「幸せだと感じますか?」に上位2つを選んだ人は、2021年度53.4%、2022年度52.4%、2023年度53.9%、2024年度53.5%、2025年度55.3%と、5割強の水準が続いている。下位2つの≪感じない≫は8.6〜9.2%の範囲にとどまる。2023年度の内訳では最も多い回答が「4」の37.7%で、中間の「3」も29.9%ある。幸せだと感じる人が感じない人を大きく上回る一方、どちらとも言えない層も約3割いる。
幸せにとって重要な分野は「健康・福祉」と「安全・安心」
6分野のうち幸せにとって最も重要な分野の第1位には、毎年「健康・福祉」が最も多く挙げられている(2021年度34.7%、2022年度33.1%、2023年度33.9%、2024年度30.7%、2025年度33.9%)。2位は「安全・安心」で、2024年度には29.4%と「健康・福祉」にほぼ並んだ。2023年度の自由記述でも、約5割が幸せに重要なこととして「身体の健康・医療介護」を挙げている。
重視される防災面で実感が伴っていない
「安全・安心」は重要視される一方、地域が災害に強いと「感じない」人は2022年度54.1%、2024年度55.1%、2025年度54.2%と、毎年半数を超えている。2025年度の報告は、災害時の助け合いや地域に頼れる人の存在についても、否定的な回答が肯定的な回答を上回ったと示している。対照的に、2022年度には地域の交通の便を良いと感じる人が68.5%と多かった。
幸せを感じない人ほど仕事や経済の悩みを記す傾向
2022年度の自由記述の分析では、幸せを感じない人ほど「仕事・経済状況」に関する記述が多い傾向が示されている。2023年度も、不安の第1位は「仕事・経済状況」だった。健康が幸せの重要事項として挙がる一方、不安の中心は暮らしの経済面にある。