幸せの名言集

マイペースの名言25選

「琴の弦は、強く張りすぎても切れ、緩めすぎても鳴らない。精進も同じである」

— ブッダ ソーナ長老への教え(『増一阿含経』ほか)

琵琶(琴)の弦の喩えとして知られる

努力には、その人に合った張り具合がある

心理学では
この名言は、心理学でいう逆U字の関係(ほどほどの水準で成果がもっとも高まり、強すぎても弱すぎても下がる関係)を言い当てている。古くはYerkes & Dodson(1908)が、マウスの弁別学習の実験で、難しい課題では刺激が強すぎても弱すぎても学習が遅れることを示した。また、Vallerandら(2003)は、活動への打ち込み方を調べ、自分で選んで柔軟に取り組む「調和的情熱」の人ほど前向きな感情と結びつき、やめたくてもやめられない「強迫的情熱」の人ほど否定的な感情や無理な継続と関連することを報告した。疲れや気乗りの度合いを手がかりに、踏ん張る日と緩める日を自分で決めることが、ちょうどよい張り具合を保つ助けになる。 参考:Yerkes & Dodson(1908)「The relation of strength of stimul…」 ↗/Vallerandら(2003)「Les passions de l'âme: On obsessiv…」 ↗
人物
古代インドの宗教家(BC5世紀頃)。仏教の開祖
出典に諸説あり
「七走一坐 ── 七回走ったら、一度座れ」

— 禅語として流通 典拠不詳

※古典禅籍での典拠は確認されていない

走り続けず、定期的に立ち止まって省みる

心理学では
この名言は、心理学でいう「リカバリー(仕事などで消耗した心身の資源を取り戻す過程)」の大切さを言い当てている。Sonnentag(2003)は働く人に毎日の日誌調査を行い、前の晩によく回復できた日ほど、翌日の仕事への熱意や自発的な行動が高いことを見いだした。またSonnentag & Fritz(2007)は、仕事から気持ちを切り離す「心理的離脱」ができている人ほど、疲労感や心身の不調が少ないことを示している。座ることは怠けではなく、次に走るための準備であり、自分のペースを確かめ直す時間でもある。予定表に「座る時間」を先に書き込むことが、息の長い歩みにつながる。 参考:Sonnentag(2003)「Recovery, work engagement, and pro…」/Sonnentag & Fritz(2007)「The Recovery Experience Questionna…」
「急がば回れ」

— 日本のことわざ 宗長の連歌「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」に由来

速さより確実さが結局は早い

心理学では
このことわざは、認知心理学でいう「速度と正確さのトレードオフ」(速さを求めるほど誤りが増える関係)を言い当てている。Heitz(2014)のレビューは、知覚判断から体を動かす課題まで、急ぐほど誤りが増える関係が多様な課題で繰り返し確認されてきたことをまとめている。またBuehlerら(1994)は大学生を対象にした一連の研究で、人は過去の遅れを軽く見て、課題が実際より早く終わると見積もりやすいことを示した(計画錯誤と呼ばれる)。最短ルートを当てにした計画ほど、やり直しが重なって結局遠回りになる。急ぐときこそ、確認の手間と時間の余白を最初から計画に組み込むことが、着実な到着につながる。 参考:Heitz(2014)「The speed-accuracy tradeoff: histo…」 ↗/Buehlerら(1994)「Exploring the "planning fallacy": …」 ↗
人物
室町時代の連歌師・宗長(1448-1532)の歌が語源
「遅くとも着実な者が、競走に勝つ」

Slow and steady wins the race.

— イソップ 寓話「ウサギとカメ」の教訓

他人の速さに惑わされず、自分の歩みを続ける

心理学では
この教訓は、心理学でいう「グリット(長期的な目標への粘り強さと情熱)」と「自己一致(目標が自分の価値観や関心に根ざしていること)」に通じる。Duckworthら(2007)は、大学生や陸軍士官学校の候補生、スペリング大会の出場者などを対象とした研究で、グリットの高い人ほど学業成績や厳しい訓練の継続といった長期的な達成が高いことを示した。また、Sheldon & Elliot(1999)は大学生の目標追求を学期を通して追った縦断研究を行い、自分らしい目標を追う人ほど努力を持続し、達成度や幸福感も高いことを見いだした。他人の速さと比べるより、自分が納得できる歩幅で毎日少しずつ進むことが、遠くまで届く力になる。 参考:Duckworthら(2007)「Grit: Perseverance and passion for…」 ↗/Sheldon & Elliot(1999)「Goal striving, need satisfaction, …」
人物
古代ギリシャの寓話作家(BC6世紀頃)
「自分らしく演奏できるようになるまでには、長い時間がかかるものだ」

Sometimes you have to play a long time to be able to play like yourself.

— マイルス・デイヴィス インタビューでの発言

自分の音は、時間をかけてしか育たない

心理学では
この言葉は、本来感(自分らしくいられる感覚)や自己一致(行動が本心の価値観と合っている状態)が、年月をかけて育つものだと語っている。Sheldon & Kasser(2001)は幅広い年齢の成人を調べた相関研究で、年齢の高い人ほど自分の価値観に根ざした目標を持つことを示した。Ericssonら(1993)は音楽学生を対象に、優れた演奏者ほど長年にわたって計画的な練習(課題を絞った意識的な練習)を積み重ねていたことを報告している。自分らしさは、型を学ぶ年月の先に現れる。焦らずに、日々の練習や仕事で少しずつ自分の手ざわりを確かめていくことが、自分の音を見つける道につながる。 参考:Sheldon & Kasser(2001)「Getting older, getting better? Per…」 ↗/Ericssonら(1993)「The role of deliberate practice in…」 ↗
人物
米国のジャズトランペット奏者(1926-1991)。モダンジャズの帝王
「大器晩成 ── 大きな器は、遅くに完成する」

— 老子 『老子』第41章

馬王堆帛書では「大器免成(完成がない)」とする説もある

大成する者ほど、完成には時間がかかる

心理学では
この名言は、能力が花開く時期には大きな個人差があるという生涯発達心理学(人は一生を通じて成長し続けるとみる立場)の見方と重なる。Sinatraら(2016)は多数の科学者の経歴を分析し、その人の最も影響力のある論文が、キャリアの初期にも後期にも同じように現れうることを示した。Liuら(2018)も芸術家や映画監督、科学者の経歴を調べ、傑出した成果が続く時期(ホットストリーク)はキャリアのどの時点でも始まりうることを見いだした。ただし、どちらの研究でも大きな成果は作品を出し続けた中から生まれており、晩成には試みを重ねることが欠かせない。同年代と比べて焦るより、昨日の自分と比べて歩みを続けることが、遅れて開く大器を育てる。 参考:Sinatraら(2016)「Quantifying the evolution of indiv…」 ↗/Liuら(2018)「Hot streaks in artistic, cultural,…」 ↗
人物
古代中国の思想家。道家の祖
「ハラカ・ハラカ・ハイナ・バラカ ── 急ぎに急いでも、祝福はない」

Haraka haraka haina baraka.

— スワヒリ語のことわざ 東アフリカの口承のことわざ

キリマンジャロ登山の合言葉「ポレポレ」とともに知られる

「急げば急ぐほど、恵み(バラカ)は逃げていく」という語呂のよい戒め。東アフリカの時間感覚「ポレポレ(ゆっくりゆっくり)」と対をなし、速さそのものを価値としない生活哲学を表す

心理学では
このことわざは、心理学でいう時間的切迫感(常に時間に追われている感覚)が、人から豊かさを奪うという知恵に重なる。Kasser & Sheldon(2009)は四つの調査(相関研究)で、時間的豊かさ(時間にゆとりがあるという感覚)が高い人ほど、収入などの物質的豊かさとは別に幸福感が高いことを示した。またDarley & Batson(1973)の実験では、講演会場へ急ぐよう指示された神学生ほど、道端でうずくまる人を助けずに通り過ぎやすかった。急ぎは幸福感だけでなく、人とのよい出会いも見落とさせるのである。予定に余白を残し、歩く速さを一段ゆるめることが、身近な恵みに気づく助けになる。 参考:Kasser & Sheldon(2009)「Time Affluence as a Path toward Pe…」 ↗/Darley & Batson(1973)「"From Jerusalem to Jericho": A stu…」 ↗
「ドルチェ・ファール・ニエンテ ── 何もしないことの、甘美さ」

Il dolce far niente.

— イタリアの生活哲学 イタリア語の定型句

「何もしない」を怠惰ではなく、味わうべき甘美な時間として肯定する言葉。生産性から切り離された時間そのものを、人生の目的の一部と見なす南欧の時間感覚を象徴する

心理学では
この言葉は、何もしない時間を成果のための手段ではなく、それ自体に価値のある内発的な時間(外からの評価や見返りのためでなく、それ自体を楽しむ時間)として味わう姿勢を表している。Toniettoら(2021)は複数の調査と実験を行い、余暇を「時間の無駄」と考える人ほど余暇を楽しめず、幸福感が低く、抑うつや不安が高いことを示した。さらに、余暇を無駄とみなす考え方に触れさせると、その後の活動の楽しさが下がることも確かめている。働く人を対象にしたSonnentag & Fritz(2007)でも、仕事から心理的に離れ(心理的距離)、くつろぐ経験が多い人ほど、疲労や心身の不調が少ないことが報告されている。休むときは「役に立つか」を問わず、ぼんやりする時間そのものを予定に組み込むことが、心の回復につながる。 参考:Toniettoら(2021)「Viewing leisure as wasteful underm…」 ↗/Sonnentag & Fritz(2007)「The Recovery Experience Questionna…」
「ゆっくり行く者は、健やかに、遠くまで行く」

Chi va piano, va sano e va lontano.

— イタリアのことわざ Chi va piano, va sano e va lontano

速さを競わず自分の歩調を守る者が、結局は健康なまま最も遠くへ到達する。「ピアーノ(ゆっくり)・サーノ(健やかに)・ロンターノ(遠くへ)」と韻を踏んで、持続可能なペースの価値を説く

心理学では
この名言は、心理学でいう持続可能なペース配分と自己一致(目標が自分の本当の関心や価値観に沿っていること)の大切さを言い表している。Sheldon & Elliot(1999)は大学生の目標追求を学期を通じて追う縦断研究を行い、自己一致した目標を持つ人ほど努力が長続きし、目標を達成しやすく、幸福感も高まっていたことを示した。またSonnentag(2003)は働く人を対象にした日誌研究で、前日の夕方に十分休めた日ほど、翌日の仕事への熱意(ワーク・エンゲイジメント)や自発的な行動が高いことを見いだした。人と速さを比べず、納得できる目標を選び、休息を予定に組み込んで歩むことが、遠くまで行く力につながる。 参考:Sheldon & Elliot(1999)「Goal striving, need satisfaction, …」/Sonnentag(2003)「Recovery, work engagement, and pro…」
「ラーゴム ── 多すぎず、少なすぎず、ちょうどよく」

Lagom.

— スウェーデンの生活哲学 スウェーデン語の日常語(lagom)

「みんなにとってちょうどよく」という共同体的な含みも持つ

食事も、働き方も、持ち物も「ちょうどよい加減」を最上とするスウェーデンの中庸の美学。「もっと」を際限なく追う競争から、各自の「ちょうどよさ」へ基準を移す一語

心理学では
ラーゴムの「ちょうどよく」は、心理学でいう満足化(十分によい選択肢が見つかればそこで決める態度)に重なる。その対極にあるのが最大化(常に最善を求めて比べ続ける態度)である。Schwartzら(2002)の相関研究では、最大化傾向の強い人ほど後悔や抑うつが多く、幸福感や人生満足度が低かった。Iyengarら(2006)は、就職活動中の大学生を追った縦断研究を行った。その結果、最善の職を追い求めた学生ほど初任給は高い一方で、得た職への満足度は低かった。買い物や仕事の選択では「自分にとって十分」の基準を先に決めておくことが、比べ疲れから心を守る助けになる。 参考:Schwartzら(2002)「Maximizing versus satisficing: Hap…」/Iyengarら(2006)「Doing Better but Feeling Worse」 ↗
「牛の歩みも、千里」

— 日本のことわざ

「遅牛も淀、早牛も淀」(結局同じ所に着く)という類句もある

牛の歩みはどれほど遅くても、休まず歩き続ければ千里に達する。速い遅いは問題ではなく、止まるか続けるかが問題である ── 歩みの遅さに引け目を感じる人への、最短の励まし

心理学では
このことわざは、自己一致した目標(自分の価値観や関心に根ざした目標)を、自分のペースで追い続ける強さを言い表している。Sheldon & Elliot(1999)は大学生を学期を通じて追った縦断研究で、自己一致した目標を持つ人ほど努力が続き、目標を達成しやすく、幸福感の向上とも関連することを示した。Lallyら(2010)は、新しい行動が習慣になるまでを日常生活の中で追跡した。その結果、自動化(意識せずにできる状態)に至る速さには大きな個人差があり、ときに一日休んでも習慣づくりはほとんど損なわれなかった。人と速さを比べず、納得できる小さな一歩を重ねることが、遠くへ届く道になる。 参考:Sheldon & Elliot(1999)「Goal striving, need satisfaction, …」/Lallyら(2010)「How are habits formed: Modelling h…」 ↗
「メデン・アガン ── 何事も、度を越すな」

Μηδὲν ἄγαν (Nothing in excess.)

— デルポイのアポロン神殿の格言 「汝自身を知れ」と並び神殿に刻まれた箴言

古代ギリシャ人が神託を求めて集った聖地の入り口に、「汝自身を知れ」とともに刻まれていた言葉。快楽も、努力も、悲しみeven も、過剰は毒になる ── アリストテレスの中庸(メソテース)の思想に流れ込んだ、節度の古典的定式

心理学では
この格言は、心理学でいう「逆U字関係(ある程度までは良い働きをするが、多すぎると逆効果になる関係)」を言い当てている。Grant & Schwartz(2011)は、動機づけや意思決定、徳に関する幅広い研究を整理し、選択肢の多さや寛大さのように本来望ましいものでさえ、度を越すと成果や幸福感が下がる傾向を示した。またVallerandら(2003)は、趣味やスポーツに打ち込む人々を調べ、活動を自分の意思で選び区切れる「調和的情熱」の人ほど前向きな感情が多く、活動に支配される「強迫的情熱」の人ほど、できないときの反すうや否定的感情を抱えやすいことを報告した。好きなことや頑張りたいことほど、自分のペースで区切りを入れることが、長く楽しみ続ける力につながる。 参考:Grant & Schwartz(2011)「Too Much of a Good Thing」 ↗/Vallerandら(2003)「Les passions de l'âme: On obsessiv…」 ↗
人物
古代ギリシャの格言(BC6世紀頃)
「いっしょうけんめい、のんびりしよう」

— 野比のび太(藤子・F・不二雄『ドラえもん』) 『ドラえもん』(小学館)

「のんびり」と「いっしょうけんめい」という矛盾する語を重ねた、のび太の人生哲学。頑張ることと急ぐことは別であり、のんびりは怠惰ではなく、真剣に選び取る生き方でありうる ── 脱力の中の意志を表す名句

心理学では
この名言は、のんびりすることを怠けではなく自分で選び取る生き方として描いており、心理学でいう自律性(自分の意思で行動を選んでいる感覚)に通じる。また、時間に追われずにゆとりがあると感じる状態は「時間的豊かさ(タイム・アフルエンス)」と呼ばれる。Kasser & Sheldon(2009)は4つの調査から、時間的豊かさを感じている人ほど、収入などの物質的な豊かさを考慮しても幸福感が高いことを示した。さらにWhillansら(2016)の調査では、お金より時間を大切にする人ほど幸福感が高い傾向があった。予定を詰め込むのではなく、何もしない時間をあえて手帳に書き込んで守ることが、心のゆとりにつながる。 参考:Kasser & Sheldon(2009)「Time Affluence as a Path toward Pe…」 ↗/Whillansら(2016)「Valuing Time Over Money Is Associa…」 ↗
人物
藤子・F・不二雄(1933-1996)は日本の漫画家
「何やってもダメな時って、あるんだよ。そういう時はね……神様がくれたお休みだと思って、無理して走らない」

— 瀬名秀俊(ドラマ『ロングバケーション』) 北川悦吏子脚本(フジテレビ、1996)

人生が停滞する時期を「長い休暇(ロングバケーション)」と名付け直した、90年代ドラマの代表的な台詞。走れない時期を「故障」ではなく「付与された休み」と再定義することで、焦りと自責を解除する

心理学では
この台詞は、不調の時期を「失敗」ではなく「休息」と捉え直す認知的再評価(出来事の意味づけを変えること)と、届かない目標からいったん手を離す目標離脱(無理な追求をやめる調整)を勧めている。Wroschら(2003)は複数の調査で、達成が難しい目標から離れられる人ほど抑うつ症状が少なく、幸福感が高いことを示した。またBreines & Chen(2012)の実験では、失敗を自分への思いやり(セルフ・コンパッション)で受け止めるよう促された人のほうが、かえって改善への意欲が高まった。調子の出ない週は予定を一つ減らし、「今はお休み期間」と言葉にすることが立て直しの助けになる。 参考:Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗/Breines & Chen(2012)「Self-Compassion Increases Self-Imp…」 ↗
人物
月9ドラマの金字塔とされる作品
出典に諸説あり
「人の一生は、重荷を負うて遠き道をゆくが如し。急ぐべからず」

— 徳川家康(に帰される) 「東照公御遺訓」より

※御遺訓は明治期の偽作説が有力(ただし家康の人生観の要約としては的確とされる)

人生は重い荷物を背負った長距離の旅なのだから、急いではならない。「不自由を常と思えば不足なし」と続く ── 250年の泰平の礎を築いた人物の人生観として広く親しまれるが、遺訓自体は後世の仮託とする説が有力

心理学では
この名言は、人生を短距離走ではなく長期の目標追求ととらえ、自分の歩幅を守る大切さを説く。心理学では、長期目標への情熱と粘り強さである「グリット(やり抜く力)」や、「自己一致(目標が本心の価値観と重なること)」に通じる。Duckworthら(2007)は陸軍士官学校の候補生などを対象とした研究で、グリットが高い人ほど厳しい訓練を最後まで続けやすいことを示した。Sheldon & Elliot(1999)の縦断研究でも、自己一致した目標を持つ学生ほど努力が長続きし、その達成が幸福感の向上と結びついていた。他人の速さに合わせて焦るより、納得できる荷を選んで一歩ずつ進むことが、長い道のりを支える。 参考:Duckworthら(2007)「Grit: Perseverance and passion for…」 ↗/Sheldon & Elliot(1999)「Goal striving, need satisfaction, …」
人物
江戸幕府初代将軍(1543-1616)。人質時代から70年を耐えて天下を取った
出典に諸説あり
「仁に過ぎれば弱くなる。義に過ぎれば固くなる。……気長く心穏やかにして、万(よろず)に倹約を用い、金銭を備うべし」

— 伊達政宗(に帰される) 「五常訓」として伝わる

※政宗の真作かは不明(後世の仮託説が有力)

優しさも正義も勇気も、過剰になれば毒に転じる ── 五常(仁義礼智信)のそれぞれに「過ぎれば」の弊害を並べた処世訓。徳目の礼賛ではなく過剰の警告から入る構成が独特で、デルポイの「何事も過度になさるな」と同じ知恵に到達している

心理学では
この訓えは、心理学でいう「良いことも過ぎれば逆効果」(too-much-of-a-good-thing効果:望ましい性質も度を越すと結果がかえって悪くなる、逆U字の関係)にあたる。Grant & Schwartz(2011)は寛大さや勇気、楽観などに関する多くの研究を検討し、美徳や強みの多くが中ほどの量で最もよく働き、過剰になると損失に転じることを示した。Freidlinら(2017)の成人を対象とした調査でも、性格の強み(親切さや誠実さなどの長所)を使いすぎる人ほど社交不安が強かった。美徳は増やすほどよいのではなく、場面に合った適量がある。自分の長所が空回りしていないかを時折ふり返ることが、気長く穏やかな、自分らしい歩みにつながる。 参考:Grant & Schwartz(2011)「Too Much of a Good Thing」 ↗/Freidlinら(2017)「Positive psychopathology: Social a…」 ↗
人物
戦国〜江戸初期の武将(1567-1636)。独眼竜。仙台藩祖
「「適当」ってのはさ、「いい加減」じゃなくて「程が良い」ってことなんだよ」

— 高田純次 発言・著書の趣旨

「テキトー男」の異名を持つ本人による、適当の再定義。適当=手抜きではなく、force を入れすぎない「ちょうど良い加減」── 60代70代でも軽やかな本人の生き方が、言葉の実証になっている

心理学では
この名言は、心理学でいう「満足化」(最善を求め尽くさず、自分の基準を満たせば良しとする判断の仕方)をみごとに言い当てている。Schwartzら(2002)は成人や学生を対象にした相関研究で、常に最善を追い求める「最大化」傾向の強い人ほど、幸福感や人生満足度が低く、後悔や抑うつを感じやすいことを示した。Iyengarら(2006)が就職活動中の大学生を追った縦断研究でも、最大化傾向の強い学生は給与の高い職を得ながら、その結果への満足度が低く、不安を抱きやすかった。ただし安全に関わる場面では、念入りな確認と組み合わせるとよい。日々の小さな選択を「これで十分」と区切ることが、心の余力を大切な場面に残す助けになる。 参考:Schwartzら(2002)「Maximizing versus satisficing: Hap…」/Iyengarら(2006)「Doing Better but Feeling Worse」 ↗
人物
日本のタレント(1947-)
「頑張らなくていいのよ。頑張ってできることなんて、たかが知れてるんだから」

— マツコ・デラックス 番組での発言の趣旨

「頑張れ」の氾濫への解毒剤。力んで積み増せる分は僅かで、無理は長続きしない ── それより自分の器と機嫌を保つ方が、結局は続くし遠くへ行く、という脱力の人生訓

心理学では
この言葉は、意志の力(自己制御:衝動や誘惑を抑える働き)で踏ん張り続けるより、習慣の仕組みづくりと、自分の本心に合った目標(自己一致:目標が心からの関心や価値観から生まれている度合い)を大切にせよという知恵である。Galla & Duckworth(2015)は学生や成人を対象とした複数の研究で、自己制御の高い人ほど良い習慣をもち、学業や健康などの良い成果との結びつきの一部がその習慣を通じていることを示した。またSheldon & Elliot(1999)の縦断研究では、本心から望む目標を追う人ほど努力が長続きして目標を達成しやすく、それが幸福感の向上とも関連していた。歯を食いしばる前に、続けやすい仕組みと「本当にやりたいか」を見直すことが、結局は遠くへ行く近道になる。 参考:Galla & Duckworth(2015)「More than resisting temptation: Be…」 ↗/Sheldon & Elliot(1999)「Goal striving, need satisfaction, …」
人物
日本のコラムニスト・タレント(1972-)
「分け入っても、分け入っても、青い山」

— 種田山頭火 句集『草木塔』(1940)

五七五の定型も季語も捨てた自由律俳句の代表作。どこまで歩いても山また山 ── 終わりのない道行きを嘆きではなく、そのまま詠む。到達ではなく歩行そのものを人生とした漂泊の俳人の代表句

心理学では
この句の構えは、心理学でいう自己目的的(オートテリック:活動そのものが報酬になる)な姿勢に重なる。Csikszentmihalyi(1990)は、到達点よりも目の前の行為に深く没入する体験をフロー(我を忘れて打ち込む状態)と名づけ、人生の充実感の源として描いた。またPham & Taylor(1999)は、試験を控えた大学生を対象とした実験で、良い成績を取った場面を思い描くよりも、勉強する過程を思い描いた学生のほうが、学習時間が長く、不安が少なく、成績も良いことを示した。ゴールを数えるより、一歩ごとの景色に目を向けることが、歩みそのものを支える。長い仕事や学びの途中では、今日の一歩を味わうことが、歩き続ける力につながる。 参考:Csikszentmihalyi(1990)「Flow: The Psychology of Optimal Ex…」 ↗/Pham & Taylor(1999)「From Thought to Action: Effects of…」 ↗
人物
日本の俳人(1882-1940)。家業の破産や家庭の悲劇を経て出家し、行乞の旅に生きた
「功遂げ、身退くは、天の道なり」

— 老子 『老子』第9章

仕事を成し遂げたら、その座に居座らず退く ── それが自然の理にかなった身の処し方である。「持して之を盈たすは、其の已むに如かず(満たし続けるより、ほどほどで止めよ)」に続く、引き際の哲学

心理学では
この言葉は、心理学でいう「調和的情熱」(活動を自分で選び、手放す柔軟さも保てる打ち込み方)に重なる。Vallerandら(2003)は大学生などを対象とした一連の研究で、活動に縛られる「強迫的情熱」の人ほど、やめるべき場面でも固執しやすく、否定的な感情とも関連することを示した。反対に、調和的情熱の人ほど肯定的な感情と関連していた。またWroschら(2003)は、見込みの薄れた目標から離れ(目標離脱)、新たな目標へ向かえる人ほど主観的幸福感が高いことを報告している。一区切りを迎えた仕事は誇りとともに手放し、次の役割へ心を向ける。それが、しなやかに生き続けることにつながる。 参考:Vallerandら(2003)「Les passions de l'âme: On obsessiv…」 ↗/Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗
人物
古代中国の思想家。道家の祖
「出世なんかいらない。スーさん、明日も釣り、行きましょうよ」

— ハマちゃん(映画『釣りバカ日誌』シリーズ) やまさき十三・北見けんいち原作、松竹(1988-)(要旨)

万年ヒラ社員のハマちゃんは、出世競争を降りる代わりに、釣りと家族と友情に全振りして誰より幸せに生きる。社長のスーさんが彼を羨む構図 ── 地位と幸福が別物であることを、国民的シリーズとして22作描き続けた

心理学では
ハマちゃんの生き方は、内発的目標(人とのつながりや成長など、それ自体が喜びとなる目標)を、外発的目標(地位や富など、外からの評価を得るための目標)より優先する姿勢である。Kasser & Ryan(1996)は成人を対象とした調査で、富や名声を相対的に重視する人ほど幸福感が低く、つながりや成長を重視する人ほど幸福感が高いことを示した。また、Ngら(2005)のメタ分析(多くの研究を統合する分析)では、昇進や年収といった客観的なキャリアの成功と、仕事への満足という主観的な成功は、それぞれ関わる要因が異なる別の物差しであることが分かっている。肩書きの階段とは別に、心から楽しめる時間と仲間を予定に組み込むことが、満ち足りた毎日につながる。 参考:Kasser & Ryan(1996)「Further Examining the American Dre…」/Ngら(2005)「PREDICTORS OF OBJECTIVE AND SUBJEC…」 ↗
人物
西田敏行・三國連太郎主演の国民的シリーズ
「やりたくないことは、しないだけ」

— サチエ(映画『かもめ食堂』) 荻上直子監督(2006)

「なぜフィンランドで食堂を?」と問われた店主の答え。壮大な理由ではなく、消去法の自由 ── 「やりたいことをやる」より先に「やりたくないことをしない」を確保する、という人生設計の順序を示した台詞

心理学では
この台詞は、自己決定理論でいう自律性(自分の行動を自分で選んでいる感覚)を守る知恵である。義務感や他人の期待から来る「やらされ感」の行動を手放すほど、残る行動は自己一致(目標が本心の価値観と合っていること)したものになる。Sheldon & Elliot(1999)は大学生を学期を通して追う縦断研究で、自己一致した目標を持つ人ほど努力が続き、目標を達成しやすく、幸福感の向上もみられたことを示した。Milyavskayaら(2015)も、「したいから」追う目標ほど誘惑や障害を感じにくく、達成しやすいと報告している。まずは「やらないこと」を一つ書き出し、空いた時間を本当に望む営みに充てる。 参考:Sheldon & Elliot(1999)「Goal striving, need satisfaction, …」/Milyavskayaら(2015)「Saying “no” to temptation: Want-to…」 ↗
人物
群ようこ原作。小林聡美主演
「休むも、相場」

— 日本の相場格言 江戸期の米相場以来伝わる投資の格言

買う・売るに次ぐ第三の選択肢は「何もしない」── 判断に迷うとき、疲れているとき、地合いが読めないときは、降りて休むことが最良の一手である。行動しないことを戦略として認めた、実利の世界の知恵

心理学では
この格言は、心理学でいう行動バイアス(何もしないより、何かをしたくなる傾向)に気づき、「動かない」ことも主体的な選択として扱う知恵である。Bar-Eliら(2007)は、サッカーのペナルティキックの記録を分析した。その結果、ゴールキーパーは中央にとどまる方が止めやすいにもかかわらず、多くの場合に左右へ跳ぶことを示した。投資の世界でも、Barber & Odean(2000)が個人投資家の取引記録を調べている。売買の回数が多い世帯ほど、手数料を差し引いた運用成績が低いという関連が見いだされた。迷いや疲れを感じたときは、選択肢の一覧に「今日は見送る」をはっきり書き加えておく。それが自分のペースを守る助けになる。 参考:Bar-Eliら(2007)「Action bias among elite soccer goa…」 ↗/Barber & Odean(2000)「Trading is Hazardous to Your Wealt…」 ↗
「休みなさい。休んだ畑は、豊かな実りで応えてくれる」

Take rest; a field that has rested gives a bountiful crop.

— オウィディウス 『恋の技法』ほかの句に基づく

連作で痩せた畑が休閑で地力を取り戻すように、人も休息によってこそ実りを回復する ── 古代ローマの詩人が残した、休息の生産性の農業的比喩。「休み=サボり」ではなく「休み=地力の回復」という会計の書き換え

心理学では
この名言は、心理学でいう「回復(リカバリー:消耗した心身の資源を取り戻す過程)」の考え方と重なる。Sonnentag(2003)は働く人を対象にした日誌調査で、朝に「よく回復できた」と感じている日ほど、その日の仕事への熱意(ワーク・エンゲイジメント)や自発的な行動が多いことを示した。Fritz & Sonnentag(2006)が休暇の前後を追った縦断研究でも、休暇の後には疲弊感や体の不調が軽くなっていた。ただしこの効果は職場に戻ると次第に薄れるため、日々の小さな休息と組み合わせるとよい。疲れを感じたら自分のペースで手を止め、仕事から心を離す時間をもつことが、次の実りにつながる。 参考:Sonnentag(2003)「Recovery, work engagement, and pro…」/Fritz & Sonnentag(2006)「Recovery, well-being, and performa…」 ↗
人物
古代ローマの詩人(BC43-AD17/18)
「張りっぱなしで緩めないのも、緩めっぱなしで張らないのも、道ではない。一張一弛こそ、文王・武王の道である」

— 『礼記』雑記下(孔子の言葉として) 「一張一弛は文武の道なり」

弓の弦は、張りっぱなしでは傷み、緩めっぱなしでは使えない ── 名君の統治も人の暮らしも、緊張と弛緩の交互のリズムが要だという古典。祭りで羽目を外す民を咎めた弟子への、孔子の返答として語られる

心理学では
この名言は、心理学の「努力―回復モデル」(力を使ったあとに休んで元に戻る時間があってこそ、心身の資源が保たれるという考え方)とよく重なる。Sonnentag & Fritz(2007)は、働く人を対象に、勤務後に仕事から心理的に離れる「心理的距離化」(仕事のことを考えずにいられる状態)などの回復体験を測る尺度を作り、こうした体験が多い人ほど疲労感が低いことを示した。さらにSonnentagら(2008)の日誌研究では、夜にしっかり回復体験をもてた日ほど、翌朝の気分がよいことと関連していた。張る時間と緩める時間をあえて区切り、休むときは仕事を手放すことが、次の「張り」を支える力になる。 参考:Sonnentag & Fritz(2007)「The Recovery Experience Questionna…」/Sonnentagら(2008)「"Did you have a nice evening?" A d…」 ↗
人物
儒教の経典。「文武」は周の文王・武王

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