幸福と所得のパラドックス再考
The happiness–income paradox revisited
R. Easterlin, Laura McVey, M. Switek et al.(2010)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 107(52), 22463–22468
長期的には国の所得が増えても幸福度は上がらないという関係が、発展途上国や体制移行国を含む幅広い国々でも成り立つことを示した。
要旨根拠:抄録
幸福と所得のパラドックス(イースタリン・パラドックス)とは、10年以上の長期で見ると、国の所得が上がっても国民の幸福度は上がらないという現象である。これまでその証拠は先進国に限られていたため、本研究は発展途上国、社会主義から資本主義へ移行した東欧諸国、そして従来より広い先進国のサンプルでこの関係を検証した。その結果、三つのグループすべてで、長期的には幸福と所得の間にほとんど関係が見られなかった。一方、短期的には景気後退期に幸福度が下がり、拡大期に上がるというように、幸福と所得は連動していた。パラドックスへの近年の批判は、統計上の見かけの結果か、短期の関係と長期の関係を混同したものだと著者らは論じている。経済成長だけでは国民の幸福は持続的に高まらないという政策的含意を持つ研究である。
関係メモ——この研究のその後
- 先行・基盤W0163 Easterlin(1995)の主張を長期データで再確認した
- 論争W0263 Deaton(2008)がGallup世界調査で所得の対数と生活満足の直線関係を示し、W2341 Stevenson & Wolfers(2008)が時系列でも所得と幸福は連動すると反論したのに対し、本論文は短期の連動と長期の無相関を区別して再反論した。W0076 Clark(2008)は相対所得による説明を提示した
反証・修正は確信があるものだけ書いています。書かれていない=否定されていない、ではありません。
この論文が出てくる研究の系譜
研究のつながり
この一覧(世界 1,782本)の中での引用関係です。引用している=支持している、とは限りません。
先行研究(この論文が引用している) 7本
- W0073 経済学者は幸福研究から何を学べるか Frey(2001) Social Science Research Network 主要400 被引用 4,078
- W0076 相対所得、幸福、効用:イースタリン・パラドックスとその他の謎の説明 Clark(2008) Journal of Economic Literature 主要400 被引用 3,386
- W0163 全員の所得を上げれば全員の幸福は増すのか Easterlin(1995) Journal of Economic Behavior & Organization 主要400 被引用 3,137
- W0263 所得・健康・ウェルビーイングの世界比較:ギャラップ世界調査からのエビデンス Deaton(2008) Journal of Economic Perspectives 主要400 被引用 1,728
- W0334 幸福と経済パフォーマンス Oswald(1997) The Economic Journal 主要400 被引用 1,990
- W0562 幸福を説明する Easterlin(2003) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 被引用 1,107
- W1070 富と幸福の再検討:国民所得の増加は幸福の増大を伴う Hagerty(2003) Social Indicators Research 被引用 498
後続研究(この論文を引用している) 4本
- W0720 空気の中の幸福:汚れた空はメンタルヘルスと主観的幸福感にどう影響するか Zhang(2017) Journal of Environmental Economics and Management 被引用 611
- W1217 所得格差は社会的比較効果の強さと関連する:相対所得が生活満足度に与える影響 Cheung(2015) Journal of Personality and Social Psychology 被引用 283
- W2355 幸福は重要である:主観的幸福感による生産性の向上 DiMaria(2019) Journal of Happiness Studies 被引用 170
- W2276 前頭葉の機能としての人生の目的(生きがい)は自然な……(原題末尾が欠落) Ishida(2012) Psychology 被引用 15
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- https://doi.org/10.1073/pnas.1015962107
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文献表記(APA第7版)
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- 同年同分野で
- 上位 0.1%未満
- 分野(OpenAlex)
- Psychological Well-being and Life Satisfaction
- 主要400の選定
- 著名度スコア上位(概念・年代枠内)
被引用数の取得日:Semantic Scholar 2026-10-01、OpenAlex 2026-10-02。Google Scholar より少なめに出るデータベースの値なので、順位の目安としてお使いください。
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