経済成長と主観的幸福感――イースタリン・パラドックスの再検討
Economic Growth and Subjective Well-Being: Reassessing the Easterlin Paradox
Betsey Stevenson, Justin J. Wolfers(2008)Brookings Papers on Economic Activity, 2008(1), 1–87
国の豊かさと平均幸福度には明確な正の関連があり、飽和点も見られないとして、イースタリン・パラドックスに反論した。
要旨根拠:抄録
イースタリン・パラドックスは、社会の経済発展と平均的な幸福度の間には関連がないと主張してきた。著者らはこのパラドックスを、数十年にわたる複数の豊富なデータセットを用いて再検討した。より多くの国を含む最新データの分析から、一人当たりGDPと平均的な主観的幸福感の間には国家間で明確な正の関連があり、それ以上豊かになっても幸福が増えないという飽和点(=幸福が頭打ちになる所得水準)の証拠は見られなかった。この関係は多くのデータセットで一貫しており、国内で見られる所得と幸福の関係とも同程度であった。さらに国内の時系列変化を見ると、経済成長は幸福度の上昇と関連していた。著者らは、幸福の決定には絶対所得が明確な役割を果たし、相対所得の比較の役割はより限定的であると結論づけた。
関係メモ——この研究のその後
- 論争W2332 Easterlin(1974)のパラドックスに対し、国家間・国内・時系列のいずれでも所得の対数と幸福度に正の関連があり飽和点も見られないと反論した。W1070 Hagerty & Veenhoven(2003)の同趣旨の主張やW0263 Deaton(2008)のギャラップ世界調査分析を根拠とし、W0551 Easterlin(2010)は10年以上の長期トレンドでは成長と幸福は無関係だと再反論した
- 後続・発展個人レベルの飽和点をめぐり、W1028 Jebb(2018)が地域別に飽和点がありうることを示した一方、W1163 Killingsworth(2021)は経験的幸福も高所得まで上がり続けると報告し、W1246 Killingsworth・Kahneman・Mellers(2023)が頭打ちは最も不幸な層に限られると整理した
反証・修正は確信があるものだけ書いています。書かれていない=否定されていない、ではありません。
この論文が出てくる研究の系譜
研究のつながり
この一覧(世界 1,782本)の中での引用関係です。引用している=支持している、とは限りません。
先行研究(この論文が引用している) 11本
- W0076 相対所得、幸福、効用:イースタリン・パラドックスとその他の謎の説明 Clark(2008) Journal of Economic Literature 主要400 被引用 3,386
- W2332 経済成長は人間の暮らしを改善するか?――いくつかの実証的証拠 Easterlin(1974) Nations and Households in Economic Growth(書籍の章) 主要400 被引用 4,788
- W0163 全員の所得を上げれば全員の幸福は増すのか Easterlin(1995) Journal of Economic Behavior & Organization 主要400 被引用 3,137
- W0172 主観的幸福感の測定の発展 Kahneman(2006) The Journal of Economic Perspectives 主要400 被引用 2,538
- W0174 隣人はマイナス要因:相対所得とウェルビーイング Luttmer(2005) SSRN Electronic Journal 主要400 被引用 2,415
- W0263 所得・健康・ウェルビーイングの世界比較:ギャラップ世界調査からのエビデンス Deaton(2008) Journal of Economic Perspectives 主要400 被引用 1,728
- W0292 快楽の踏み車を超えて:ウェルビーイングの適応理論の改訂 Diener(2006) American Psychologist 主要400 被引用 1,854
- W0167 所得と幸福:統一理論に向けて Easterlin(2001) The Economic Journal 被引用 2,755
- W0348 幸福のマクロ経済学 Tella(2003) Review of Economics and Statistics 被引用 1,774
- W0591 お金持ちになれば幸せになれるか:焦点化の錯覚 Kahneman(2006) Science 被引用 1,189
- W1438 経済成長が幸福をもたらすのか、幸福が経済成長をもたらすのか Kenny(1999) Kyklos 被引用 248
後続研究(この論文を引用している) 4本
- W0189 主観的ウェルビーイング研究の進展 Diener(2018) Nature Human Behaviour 主要400 被引用 1,748
- W1163 経験的ウェルビーイングは年収7万5000ドルを超えても所得とともに上昇する Killingsworth(2021) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 主要400 被引用 226
- W0719 近隣環境が低所得成人の長期的ウェルビーイングに与える影響 Ludwig(2012) Science 被引用 707
- W0824 幸福度データを用いた公共財の価値評価:大気質の事例 Levinson(2012) Journal of Public Economics 被引用 539
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- Economic theories and models
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