第1章 | 日々・時間・平常 | 13語
今ここを生きる
禅語の多くは、「いつか」ではなく「今」を指さしている。過ぎた日を悔やみ、来る日を案じる心を離れ、今日という一日、今この一瞬に全体重をかける。雲門の「日日是好日」、南泉の「平常心是道」、道元の「而今」。この章には、日常をそのまま道として生きるための言葉を集めた。
1
日日是好日
にちにちこれこうにち(にちにちこれこうじつ)
どんな一日も、そのままで比べようのない「好い日」である。晴れの日も雨の日も、うまくいった日もいかなかった日も、二度とない一日として丸ごと受け取る。
2 平常心是道
びょうじょうしんこれどう
特別な心構えや悟りすました境地ではなく、ふだんの当たり前の心のままが、そのまま道(真理)である。
3 而今
にこん(じこん)
「今、この瞬間」のこと。過去でも未来でもない、いま現に生きているこの一点。
4 生死事大 無常迅速
しょうじじだい むじょうじんそく
生きて死ぬという一大事を前にして、時は矢のように過ぎていく。ぐずぐずしている暇はない。
5 歳月不待人
さいげつひとをまたず
年月は人の都合を待ってはくれない。時は過ぎ、二度と戻らない。
6 一期一会
いちごいちえ
この出会いは一生に一度のもの。だから、二度とない機会として心を尽くす。
7 無事是貴人
ぶじこれきにん
外に何かを求めてあくせくしない人こそ、本当に貴い人である。「無事」とは、求める心が止んでいること。
8 随処作主 立処皆真
ずいしょにしゅとなれば りっしょみなしんなり
どんな場所、どんな状況でも自分が主体となって生きれば、その立っている場所がすべて真実の場となる。
9 喫茶去
きっさこ
「まあ、お茶をお飲みなさい」。来る人を分け隔てなく、同じ一杯の茶で迎える心。
10 洗鉢盂去
せんはつうこ(はつうをあらいされ)
「食器を洗っておきなさい」。悟りは特別な場所にあるのではなく、食事をし、器を洗うその営みの中にある。
11 明歴々 露堂々
めいれきれき ろどうどう
真理は隠されてなどいない。すべてはこの上なくはっきりと、堂々と目の前に現れている。
12 一日不作 一日不食
いちじつなさざれば いちじつくらわず
一日働かなければ、一日食べない。労働を修行の外に置かず、日々の作務(さむ)をそのまま道とする態度。
13 寒時寒殺闍梨 熱時熱殺闍梨
かんじはじゃりをかんさつし ねつじはじゃりをねっさつす
寒いときは寒さになりきり、暑いときは暑さになりきる。逃げ場を探すのではなく、その只中に身を置くとき、寒暑は自分を苦しめるものではなくなる。