幸せの名言集

利他の名言21選

「己を忘れて他を利するは、慈悲の極みなり(忘己利他)」

— 最澄 『山家学生式』(818)

「一隅を照らす」と並ぶ天台の中核理念

自分を忘れるほどの利他こそ慈悲の極致

心理学では
忘己利他は、心理学でいう自己超越(自分へのこだわりが薄れ、より大きなものとのつながりを感じる状態)と向社会的行動(他者のためになる行動)の結びつきを言い当てている。Piffら(2015)は一連の実験で、畏敬の念によって「自分が小さく感じられる」状態になった人が、他者に対してより寛大にふるまうことを示した。またWeinstein & Ryan(2010)の実験と日誌研究では、人を自ら望んで助けたとき、助けた側も助けられた側も幸福感が高まっていた。日々、自分の損得をいったん脇に置いて小さな手助けを重ねることが、慈悲の心を育てる一歩になる。 参考:Piffら(2015)「Awe, the small self, and prosocial…」/Weinstein & Ryan(2010)「When helping helps: Autonomous mot…」
人物
平安初期の僧(766/767-822)。天台宗開祖
「自利利他円満 ── 自らの利益と他者の利益は、ともに満ちてこそ完成する」

— 大乗仏教の理念 『無量寿経』等に基づく大乗の根本思想

利己と利他は対立ではなく両立の関係にある

心理学では
この理念は、「自分への関心(自己利益への配慮)」と「他者への関心(他者志向)」が綱引きの両端ではなく、それぞれ別々に高められる二つの軸だという心理学の見方に重なる。De Dreu & Nauta(2009)は働く人々を対象にした研究で、この二つが互いに独立した次元であることを示した。またWeinstein & Ryan(2010)は実験を含む一連の研究で、自律的な援助(義務感からではなく、自ら納得して行う手助け)が、助ける側の活力や満足感を高め、助けられる側が受け取る恩恵も大きくすることを示した。人に手を貸すときは、自分の余力と気持ちを確かめてから引き受けることが、長く与え続ける力につながる。 参考:De Dreu & Nauta(2009)「Self-interest and other-orientatio…」 ↗/Weinstein & Ryan(2010)「When helping helps: Autonomous mot…」
「あたかも母が、命を賭けて我が子を護るように、一切の生きとし生けるものに、無量の慈しみの心を起こすべし」

— ブッダ 『スッタニパータ』慈経(メッタ・スッタ)

「生きとし生けるものが、幸せでありますように」の一節で知られる

慈しみを親子愛から全存在へ拡張する

心理学では
この名言は、心理学で「慈悲の瞑想」(loving-kindness meditation:大切な人に向ける温かな願いを、見知らぬ人やすべての存在へと少しずつ広げていく心の練習)と呼ばれる実践の原典である。Hutchersonら(2008)は実験で、数分間この瞑想を行った成人が、対照群よりも見知らぬ人に対してつながりと好意を強く感じることを示した。Fredricksonら(2008)は会社員を対象とした数週間の介入研究で、この瞑想が日々のポジティブ感情を高め、周囲からの支えなどの心の資源を増やして人生満足度の向上につながることを見いだした。まずは身近な人を思い浮かべて「幸せであるように」と心で唱え、その願いを今日すれ違った人へも向けてみる。それが思いやりの輪を広げる第一歩になる。 参考:Hutchersonら(2008)「Loving-kindness meditation increas…」 ↗/Fredricksonら(2008)「Open hearts build lives: Positive …」
人物
古代インドの宗教家(BC5世紀頃)。仏教の開祖
「衆生が病む、ゆえに我も病む」

— 維摩居士 『維摩経』文殊師利問疾品

病の見舞いに来た文殊菩薩への答え

他者の苦しみを自分の苦しみとして生きる

心理学では
維摩の言葉は、心理学でいう共感的関心(他者の苦しみを案じ、心を寄せる気持ち)を生き方の根に置くものである。Batsonら(1981)の実験では、苦痛を受ける他者を見た人のうち、共感的関心が強い人ほど、その場を立ち去りやすい条件でも身代わりを申し出た。共感は、見返りを求めない利他の動機となるのである。またKlimeckiら(2014)の訓練実験では、他者の痛みに温かい思いやり(コンパッション)を向ける練習が、前向きな感情を高めた。ただし痛みを抱え込みすぎる場面では、この温かさと組み合わせるとよい。身近な人のつらさに気づいたら、まず「つらいね」と声をかけることが、相手と自分を支える一歩になる。 参考:Batsonら(1981)「Is empathic emotion a source of al…」 ↗/Klimeckiら(2014)「Differential pattern of functional…」 ↗
人物
大乗仏教の在家の理想像として描かれる人物
「布施(与える)・愛語(優しく語る)・利行(行いで助ける)・同事(同じ立場に立つ)」

— 仏教の教え(四摂事) 『阿含経』等に説かれる菩薩の四つの実践

道元『正法眼蔵』「四摂法」で詳述される

人と関わる利他の方法を四つに整理した実践論

心理学では
四摂事は、向社会的行動(他者のためになる行動)を四つの形に整理したものである。物を分け与える資源提供、温かい言葉による情緒的サポート、実際に手を貸す道具的サポート、相手の立場に身を置く視点取得(相手の目線で状況を想像すること)がそれにあたる。Dunnら(2008)の実験では、渡されたお金を他人のために使った人は、自分のために使った人より幸福感が高かった。またBatsonら(1981)の実験では、相手への共感が高まる条件に置かれた人は、その場を簡単に立ち去れる状況でも、相手の代わりに苦痛を引き受ける行動を選んだ。今日は四つのうち一つだけでも、言葉か手助けで誰かに関わってみることが、相手と自分の幸せにつながる。 参考:Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」/Batsonら(1981)「Is empathic emotion a source of al…」 ↗
「ポジティブ心理学を三つの単語で要約すれば、「他者が、重要(Other people matter)」である」

Other people matter.

— クリストファー・ピーターソン 講義・著作での定式(2006頃)

幸福研究の膨大な知見の最短の要約

心理学では
この言葉は、幸福の土台には良好な対人関係と向社会的行動(他者のためになる行い)がある、という幸福研究の知見を一言で表している。Diener & Seligman(2002)は大学生を対象に調査を行い、とりわけ幸福度の高い人ほど家族や友人との結びつきが強いことを示した。さらにDunnら(2008)の実験では、受け取ったお金を自分ではなく他者のために使うよう指示された人のほうが、その日の終わりの幸福感が高かった。人とつながることと、誰かのために動くことの両方が、幸せを支えているのである。今日だれか一人に感謝を伝えたり、ささやかな贈り物を選んだりする小さな行いが、日々の満ち足りた気持ちにつながる。 参考:Diener & Seligman(2002)「Very Happy People」/Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」
人物
米国の心理学者(1950-2012)。VIA強み分類の共同開発者
「他人のために生きる人生だけが、価値ある人生である」

Only a life lived for others is a life worthwhile.

— アルベルト・アインシュタイン ニューヨーク・タイムズのインタビュー(1932)

物理学者が語った人生の価値の所在

心理学では
この言葉は、心理学でいう向社会性(他者の役に立つ行動をとろうとする傾向)が、人生の意味(自分の生に価値や目的があるという感覚)の大きな源になるという考えと重なる。Baumeisterら(2013)は米国の成人を対象にした調査研究で、人に与える側に立つことが多い人ほど人生を意味深いと感じていることを見いだした。さらに、意味の感覚は単なる気分のよさとは別のものであることも示した。Van Tongerenら(2016)も複数の研究で、日ごろ人を助けたり支えたりする人ほど、人生の意味を強く感じていることを報告している。大きな献身でなくてもよい。今日だれか一人のためにささやかな手助けをすることが、自分の人生の手応えを確かなものにしていく。 参考:Baumeisterら(2013)「Some key differences between a hap…」/Van Tongerenら(2016)「Prosociality enhances meaning in l…」 ↗
人物
理論物理学者(1879-1955)。ノーベル物理学賞
出典に諸説あり
「本当に幸福になれるのは、いかに人に仕えるかを探し求め、見出した者だけである」

The only ones among you who will be really happy are those who will have sought and found how to serve.

— アルベルト・シュバイツァー(とされる) 講演での発言として流通

※帰属に諸説あり

奉仕の発見が幸福の条件である

心理学では
この名言は、心理学でいう向社会的行動(他者のためになる行動)が幸福の源になるという見方と重なる。Thoits & Hewitt(2001)は米国の成人を二時点で追跡した縦断データを分析し、ボランティア活動に多くの時間を割く人ほど、その後の幸福感や人生満足度が高まっていく傾向と関連することを示した。さらにWeinstein & Ryan(2010)の実験と日記研究では、義務感からではなく自ら選んで行う援助(自律的動機づけ)のときに、助ける側の幸福感が高まることが分かった。「探し求め、見出す」という言葉は、まさにこの自分で選び取る奉仕を指している。家庭や職場で、心から役立ちたいと思える場面を一つ見つけ、小さく続けることが幸福につながる。 参考:Thoits & Hewitt(2001)「Volunteer Work and Well-Being」/Weinstein & Ryan(2010)「When helping helps: Autonomous mot…」
人物
フランス領アルザス出身の医師・神学者(1875-1965)。ノーベル平和賞
「精力善用・自他共栄 ── 心身の力を最も善く用い、自分と他人がともに栄える」

— 嘉納治五郎 講道館柔道の理念(1922定式化)

柔道が世界的な教育体系となった思想的基盤

柔道の目的は相手を倒すことではなく、鍛えた心身の力を社会のために善く用い(精力善用)、自他がともに成長し栄える(自他共栄)ことにある、とした教育思想。武術を人間教育へ転換させた宣言である

心理学では
「精力善用・自他共栄」は、心理学でいえば向社会的行動(他者や社会のためになる行動)と、協同的目標構造(互いの成功が結びついた関係)を重ねた考え方である。Rosethら(2008)は、思春期の生徒を対象とした研究をメタ分析し、協同的な目標のもとでは、競争的・個人的な目標に比べて学業成績が高く、仲間関係も良好であることを示した。またWeinstein & Ryan(2010)は実験と日誌調査により、自ら進んで行う援助が、助ける側と助けられる側の双方のウェルビーイングを高めることを明らかにした。ただし義務感からの援助では効果が薄れるため、自分で選んで行う形にするとよい。職場や家庭でも、相手に勝つより「ともに伸びる」目標を一つ掲げることが、自他の充実につながる。 参考:Rosethら(2008)「Promoting early adolescents' achie…」 ↗/Weinstein & Ryan(2010)「When helping helps: Autonomous mot…」
人物
日本の柔道家・教育者(1860-1938)。講道館柔道の創始者。アジア初のIOC委員
「陰徳あれば、必ず陽報あり」

— 『淮南子』人間訓 前漢の思想書(BC2世紀)

人知れず積んだ善行(陰徳)には、必ず目に見える良い報い(陽報)がある。誰も見ていないところでの善行こそ価値が高い、とする東アジアで広く定着した倫理観

心理学では
この名言は、人目や見返りを求めない向社会的行動(他者のためになる自発的な行い)が、やがて本人の幸福として返ってくることを語っている。Weinstein & Ryan(2010)は日誌研究と実験を組み合わせ、自分の意思で選んだ援助(自律的動機づけによる援助)は、義務感や体面から行う援助よりも、助けた側の活力や満足感を高め、助けられた側が受け取る恩恵も大きくすることを示した。またDunnら(2008)の実験では、他人のためにお金を使うよう割り当てられた人は、自分のために使った人より幸福感が高まった。誰にも知られない場面で小さな親切を一つ自分で選んで行うことが、確かな「陽報」につながる。 参考:Weinstein & Ryan(2010)「When helping helps: Autonomous mot…」/Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」
人物
日本でも処世訓・家訓として広く定着した
「サーバント・リーダーは、まず奉仕者である。人に仕えたいという自然な感情が先にあり、その後に、導きたいという意識的な選択が来る」

The servant-leader is servant first.

— ロバート・グリーンリーフ 『The Servant as Leader』(1970)

リーダーシップの出発点を「支配欲」ではなく「奉仕の心」に置き直した理論。部下に仕え、成長させ、その人がより自由に、賢く、自律的になったかどうかで リーダーの成否を測る ── 権力型リーダー像の転換点となった

心理学では
この名言は、リーダーシップの出発点を権力欲ではなく向社会的動機(他者の役に立ちたいという動機)に置く考え方である。Lidenら(2014)は米国の飲食チェーンの店舗を調査し、店長がサーバント・リーダーシップを示す店舗ほど、従業員が互いに仕え合う「奉仕の文化」が育ち、従業員の職務成果や顧客への奉仕的な行動、店舗の業績も高いと報告した。Hochら(2018)のメタ分析(多数の研究を統合する分析)でも、サーバント・リーダーシップは変革型リーダーシップ(ビジョンで人を鼓舞する型)を考慮してもなお、部下の態度や行動を説明していた。仕える姿勢は周囲に広がる。人を導く前に「この人のために何ができるか」と一度問うことが、信頼されるリーダーへの第一歩になる。 参考:Lidenら(2014)「Servant Leadership and Serving Cul…」 ↗/Hochら(2018)「Do Ethical, Authentic, and Servant…」 ↗
人物
米国の経営思想家(1904-1990)。AT&Tで40年勤務の後に提唱
「人間がどれほど利己的なものと想定しても、その本性には、他人の幸福を目にすることを自分に必要とする原理が、明らかに存在する」

How selfish soever man may be supposed, there are evidently some principles in his nature, which interest him in the fortune of others.

— アダム・スミス 『道徳感情論』(1759)冒頭

「経済学の父」「利己心の擁護者」と見なされがちなスミスの、もう一つの主著の書き出し。人は他人が幸せそうにしているのを見るだけで嬉しい ── 共感(sympathy)こそ人間本性の土台だと、『国富論』より先に論じていた

心理学では
この言葉は、心理学でいう共感的喜び(他人の幸せを自分のことのように喜ぶ感情)や代理報酬(他者が得をする姿を見て、自分も報われたように感じる反応)にあたる。Mobbsら(2009)の脳画像実験では、他人がお金を得る場面を見るだけで報酬にかかわる脳の領域が活動し、相手が自分と似ているほどその反応は強かった。またAkninら(2012)は、2歳前の幼児が、おやつをもらうときより人にあげるときのほうが嬉しそうな表情を見せることを実験で示した。他人の幸福を喜ぶ力は、幼いころから人に備わっている。身近な人のうまくいった話に耳を傾け、一緒に喜ぶひとときが、自分の心も満たしていく。 参考:Mobbsら(2009)「A Key Role for Similarity in Vicar…」 ↗/Akninら(2012)「Giving Leads to Happiness in Young…」 ↗
人物
英国(スコットランド)の哲学者・経済学者(1723-1790)
「貧しい老女が、髪を売って捧げたたった一つの灯明は、王の献じた百千の灯が消えた後も、朝まで消えなかった」

— 仏教説話「貧者の一灯」 『阿闍世王授決経』ほか

「長者の万灯より貧者の一灯」の出典

布施の価値は金額ではなく、そこに込めた心の全量で決まる ──「長者の万灯より貧者の一灯」として日本語にも定着した説話。老女の灯は、神通力で消そうとしても消えなかったと語られる

心理学では
この説話は、向社会的行動(他者や社会のための行動)の価値が、金額の大きさではなく、本人が払った犠牲や込めた思いにこそ宿ることを語っている。Olivola & Shafir(2013)は一連の実験で、痛みや労力を伴う募金イベントのほうが、人々がより多く寄付しようとする「殉教効果」を見いだした。身を削る行為が、人の心を強く動かすことを示した研究である。また、Dunnら(2008)の実験では、受け取ったお金を他者のために使った人は、自分のために使った人より幸福感が高まり、その効果は金額の多少に左右されなかった。贈り物の大きさを競うより、小さくても心を込めた一灯をともすことが、相手にも自分にも温かさを残す。 参考:Olivola & Shafir(2013)「The Martyrdom Effect: When Pain an…」 ↗/Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」
人物
初期仏教から大乗まで広く伝わる説話
「一つの命を救う者は、全世界を救ったに等しい」

Whoever saves one life, saves the world entire.

— 『タルムード』 ミシュナ・サンヘドリン4:5

映画『シンドラーのリスト』で世界的に知られた

一人の人間は一つの世界である ── だから一人を滅ぼす者は世界を滅ぼし、一人を救う者は世界を救う、というユダヤ法の人間観。「たった一人しか助けられない」という無力感を、「一人助ければ世界を助けたのだ」と反転させる

心理学では
この言葉は、心理学でいう「心理的麻痺」(犠牲者の数が増えるほど、かえって心が動かなくなる現象)を乗り越える考え方である。Kogut & Ritov(2005)は実験で、名前や顔の分かる子ども一人への寄付意向が、同じく名前や顔の分かる八人の集団への寄付意向より高いことを示した。Västfjällら(2014)の実験でも、困っている子どもが一人から二人に増えるだけで、思いやりの感情と寄付が弱まった。人は全体のうち救える割合を考えると無力感に陥りやすいが、一人に焦点を当てると心が動き、行動が生まれる。大きな問題に圧倒されたときは、助けられる一人を思い浮かべ、その人のための小さな一歩から始める。 参考:Kogut & Ritov(2005)「The “identified victim” effect: an…」 ↗/Västfjällら(2014)「Compassion Fade: Affect and Charit…」 ↗
人物
ユダヤ教の口伝律法の集成(2〜6世紀)
出典に諸説あり
「一時間、幸せでいたいなら昼寝をしなさい。一日なら釣りに行きなさい。一年なら財産を相続しなさい。一生幸せでいたいなら、誰かを助けなさい」

If you want happiness for a lifetime, help somebody.

— 中国のことわざとされる 出所不詳(幸福研究の文献で広く引用される)

※中国の古典には確認されておらず、出所不詳のまま世界で流通

快楽の持続時間で幸福の手段を格付けした、構造の美しいことわざ。昼寝・釣り・遺産と、手段が大がかりになるほど持続は延びるが、それでも一年止まり。一生続く唯一の方法として「他者を助けること」を置く ── 利他と幸福の研究のエピグラフの定番

心理学では
このことわざは、快楽適応(よい出来事にもやがて慣れ、喜びが元に戻る心の働き)をよく言い当てている。Brickmanら(1978)は宝くじの高額当選者を調べ、当選者は一般の人より特に幸福なわけではなく、日常の楽しみをかえって感じにくくなっていたと報告した。一方、Thoits & Hewitt(2001)は米国の成人を追跡した縦断研究で、ボランティア活動をする人ほど、その後の幸福感や人生満足度が高いことを示した。人助けはそのたびに感謝やつながりを生むため、色あせにくい。大きな幸運を待つより、身近な人の小さな困りごとに手を貸す習慣が、長く続く幸せにつながる。 参考:Brickmanら(1978)「Lottery winners and accident victi…」/Thoits & Hewitt(2001)「Volunteer Work and Well-Being」
出典に諸説あり
「魚を与えれば一日養える。魚の釣り方を教えれば、一生養える」

Give a man a fish and you feed him for a day; teach a man to fish and you feed him for a lifetime.

— 中国のことわざ・老子の言葉とされる 実際の初出は19世紀英国の作家アン・イザベラ・リッチーの小説(1885)とされる

※「老子」「中国の古諺」として流通するが、定型文の初出は英語圏(QI検証済)

援助の質を問う世界的な定番句。物資の提供(魚)は依存を生みうるが、能力の育成(釣り方)は自立を生む ── 開発援助・教育・子育てで引用され続ける「与え方」の原則

心理学では
この名言は、社会心理学でいう「自立志向の援助」(相手が自分で問題を解けるよう力を育てる助け方)と「依存志向の援助」(答えや物を直接渡す助け方)の違いを言い当てている。Nadler(2002)はこの二つを区別し、前者は受け手の有能感と対等な関係を保ち、後者は助けが一時的に役立っても、上下関係や依存を固定しうると論じた。子育ての場面では、Grolnick & Ryan(1989)が親子を対象に面接と質問紙で調べ、子どもの自主性を尊重して支える親ほど、その子どもは自ら学ぶ姿勢が強く、学校での有能さも高いことを示した。ただし相手が差し迫って困っている場面では、まず必要な物を渡し、そのうえで力を育てる助けを組み合わせるとよい。部下や子どもに頼られたら、すぐ答えを渡す前に「どう考えた?」と一緒に道筋をたどることが、相手の長い自立につながる。 参考:Nadler(2002)「Inter–Group Helping Relations as P…」 ↗/Grolnick & Ryan(1989)「Parent styles associated with chil…」 ↗
「アダムの子らは、互いに一つの身体の肢体である。一つの肢が痛めば、他の肢も安らかではいられない」

Human beings are members of a whole, in creation of one essence and soul.

— サアディー 『薔薇園(グリスターン)』(1258)

バニー・アーダム(アダムの子ら)として知られる詩

人類を一つの身体に喩え、他者の苦しみに無関心でいられる者は「人間の名に値しない」と続くペルシャ詩の名句。国連本部の壁面を飾る言葉としても知られ、イスラム圏の人道主義の象徴となっている

心理学では
この名言は、共感(他者の感情を自分のことのように感じる働き)と、人類全体を自分の仲間と感じる「全人類への同一視」を言い表している。Singerら(2004)は、恋人が痛みを受けると知らされた人の脳を調べる実験を行った。その結果、自分の痛みで働く情動の領域の一部が、相手の痛みにも反応することを示した。McFarlandら(2012)の一連の調査では、全人類への同一視が強い人ほど、人権や国際的な人道支援への関心が高かった。ただし他者の痛みに巻き込まれて疲れるときは、相手の幸せを願う思いやりの気持ちに切り替えるとよい。遠い国の出来事にも自分の身体の一部として心を寄せることが、小さな支援の一歩につながる。 参考:Singerら(2004)「Empathy for Pain Involves the Affe…」 ↗/McFarlandら(2012)「All humanity is my ingroup: A meas…」 ↗
人物
ペルシャの詩人(1210頃-1291/92)。イラン文学最大の詩人の一人
「世界を変えたいなら、まず自分が三人に善意を渡す。受け取った人は、また別の三人へ」

— 映画『ペイ・フォワード 可能の王国』の主題 ミミ・レダー監督(2000)(要旨)

11歳の少年が社会科の宿題で考えた「世界を変える方法」。恩を返す(pay back)のではなく、先へ送る(pay forward)── 善意を交換から連鎖へ切り替える設計は、映画から現実の運動になった

心理学では
この名言の仕組みは、心理学で「一般化された互恵性」(恩をくれた相手ではなく、別の誰かへ返すこと)と呼ばれる。Fowler & Christakis(2010)は、見知らぬ人同士が相手を替えながら協力ゲームを繰り返す実験を行った。その結果、協力を受けた人はその後に出会う別の相手にも協力し、善意が人から人へ三段階先まで広がることを示した。Chancellorら(2018)は職場で親切を交わす介入実験を行い、親切を受け取った社員がその後、周囲へより多くの親切をするようになることを確かめた。小さな親切は一人で終わらず、次の誰かへと受け継がれていく。今日、身近な三人にささやかな手助けやねぎらいの言葉を渡すことが、世界を変える最初の一歩になる。 参考:Fowler & Christakis(2010)「Cooperative behavior cascades in h…」 ↗/Chancellorら(2018)「Everyday prosociality in the workp…」 ↗
人物
キャサリン・ライアン・ハイドの小説が原作
「奇跡を見たければ、自分が誰かの奇跡になれ」

Be the miracle.

— 映画『ブルース・オールマイティ』 トム・シャドヤック監督(2003)

神の力を手にした男が最後に学ぶ答え。祈りを叶える全能の力より、一人の人間が別の一人に手を差し伸べること ── 「奇跡を待つ側」から「奇跡を起こす側」への転換を促す台詞

心理学では
この台詞は、助けを待つ側から、自ら手を差し伸べる向社会的行動(他者のためになる自発的な行動)の担い手へ移ることを促している。Darley & Latané(1968)の実験では、同じ緊急事態に居合わせる人が多いと思った参加者ほど助けに入るのが遅れた。これは責任の分散(周囲に人がいると一人ひとりの責任感が薄まる現象)を示した研究である。一方、Dunnら(2008)の実験では、受け取ったお金を他者のために使うよう指示された人は、自分のために使った人より幸福感が高かった。困っている人に気づいたら、自分が最初の一人になると決めて声をかける。その一歩が、身近な奇跡につながる。 参考:Darley & Latané(1968)「Bystander intervention in emergenc…」 ↗/Dunnら(2008)「Spending Money on Others Promotes …」
人物
ジム・キャリー主演のコメディ
「主よ、どうか、あと一人だけ、助けさせてください」

Lord, please help me get one more.

— デズモンド・ドス(映画『ハクソー・リッジ』) メル・ギブソン監督(2016)。沖縄戦の実話

武器を持たない衛生兵ドスが、断崖の戦場に一人残り、負傷兵を一晩中降ろし続けたときの祈り。「全員を救う」ではなく「あと一人」── 圧倒的な惨状を、実行可能な単位に切り分け続けた祈りが、75人を救った

心理学では
この祈りは、「精神的麻痺」(犠牲者が多すぎると、かえって心が動かなくなる現象)を乗り越える知恵である。Västfjällら(2014)の実験では、助けを求める子どもが一人のときに共感と寄付が最も大きく、人数が増えるほど薄れることが示された。またBandura & Schunk(1981)は、算数が苦手な子どもを対象にした実験で、遠い大きな目標より目の前の小さな目標(近接目標)を立てるほうが、自己効力感(やればできるという感覚)と意欲を高めることを示した。「あと一人」は、共感と行動力をともに保てる単位なのである。大きな課題に圧倒されたときは、次の一件だけに目を向けることが、一歩を踏み出す助けになる。 参考:Västfjällら(2014)「Compassion Fade: Affect and Charit…」 ↗/Bandura & Schunk(1981)「Cultivating competence, self-effic…」
人物
ドス(1919-2006)は良心的兵役拒否者として初の名誉勲章受章者
「規則の解釈を議論している間に、人は死んでしまう。命を守ることが先です」

— 緒方貞子 国連難民高等弁務官としての決断の言葉(要旨)

1991年、国境を越えられず山中に取り残されたクルド難民を前に、「国内避難民は管轄外」という前例を破って保護を決断した際の考え方。制度は人を守るためにあり、その逆ではない ── 小柄な学者が世界の人道支援を変えた瞬間の原則

心理学では
この言葉は、規則という手段が目的にすり替わる「手段の目的化」に抗い、自ら責任を引き受ける姿勢を示している。心理学では、責任の所在があいまいだと人は援助に動きにくくなる「責任の拡散(誰かが対応すると思い、自分の責任を感じにくくなる現象)」が知られる。Darley & Latané(1968)の実験では、発作を起こした人の声を聞いた参加者は、ほかにも聞き手がいると思うほど助けに動くのが遅く、動く人も少なかった。Darley & Batson(1973)の実験でも、急いでいた神学生ほど苦しむ人を素通りしやすかった。迷ったときは「この決まりは誰を守るためか」と問い直し、自分が動くと決めることが人を救う一歩になる。 参考:Darley & Latané(1968)「Bystander intervention in emergenc…」 ↗/Darley & Batson(1973)「"From Jerusalem to Jericho": A stu…」 ↗
人物
日本の国際政治学者(1927-2019)。日本人初・女性初の国連難民高等弁務官

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名言の収集・分類・解説はAI(Claude)を活用し、はぴテックが確認したものです。「出典に諸説あり」の名言は、その人物の言葉として流通しているものの一次資料での確認が難しいもの、「要旨」は趣旨を短くまとめたものです。心理学の補足は、名言の知恵を心理学・幸福研究の知見で読み解いたもので、引用した論文は学術データベースで実在を照合しています。 解説付き全選(PDF) / 一覧(Excel)
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