幸せの4つの因子(前野隆司)の系譜
前野隆司研究室(慶應義塾大学SDM研究科)の幸福研究は、松本・前野(2010)の対人関係ネットワークと主観的幸福感の分析、佐伯・前野(2010)の主観的幸福度のセルフレコーディング手法から始まった。4因子の大元は蓮沼(2012)の修士論文で、日本人約1,500人に幸福に関わる心的要因の質問項目を実施して因子分析を行い、「やってみよう(自己実現と成長)」「ありがとう(つながりと感謝)」「なんとかなる(前向きと楽観)」「ありのままに(独立と自分らしさ)」の4因子を抽出した。
同じ分析は佐伯・蓮沼・前野(2012)として日本心理学会で発表され、前野隆司『幸せのメカニズム』(講談社現代新書、2013、別表)で広く知られるようになった。佐伯(2015)の博士論文は幸福度の文化差・地域差を扱い、佐伯・大石(2014)が幸福感研究の最前線を総説した。応用は、前野マドカ・加藤・保井(2014)、栗原・筧・楠(2015)、末吉ら(2018)の地域活性研究での地域評価、篠田(2015)の発想法・オフィスデザイン、前野マドカ・前野・櫻本(2017)のハッピーワークショップの効果検証、井上・金本・保井・前野(2022)の職業生活版尺度(主観的幸福感因子尺度/不幸感因子尺度)へ広がり、前野(2016)、前野(2018)、秋山・前野(2023)が解説と医療・作業療法への展開を示している。
企業向けには前野・太田『実践!ウェルビーイング診断』(ビジネス社、2023、別表)のWell-Being Circle診断が4因子を測定の軸にしている。
読むときの注意:4因子は日本人サンプルの探索的因子分析から得られたもので、海外の心理的幸福感(Ryff, 1989)や自己決定理論の基本的欲求(Ryan & Deci, 2000)と対応づけて読むと位置づけが分かりやすい。
解説に出てくるが一覧の外にあるもの:Ryff(1989)→もう一方の一覧 W0013 Ryff(1989)、Ryan & Deci(2000)→もう一方の一覧 W0001 Ryan(2000)、松本・前野(2010)
この系譜の論文(年順・13本)
- 2010J1164 主観的幸福度のセルフレコーディング手法の開発 佐伯(2010) 行動経済学 被引用 0 一日を○△×で記録するカレンダー・マーキング法を開発し、主観的幸福度の測定手法として使えることを示した。
- 2012J1155 主観的well-beingとその心理的要因の関係 佐伯(2012) 日本心理学会大会発表論文集 被引用 2 主観的幸福感とそれに関わる心理的要因の関係を調査し、幸せの4因子につながる分析結果を学会で報告した。
- 2012J1161 幸福・性格・欲求の調査アンケートに基づく幸福感の関係解析 蓮沼(2012) 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 修士論文(2011年度、指導:前野隆司) 日本人約1,500人への調査の因子分析から、幸せの心的要因として4つの因子を抽出した4因子研究の原点である。
- 2014J1152 幸福感研究の最前線 佐伯(2014) 感情心理学研究 被引用 4 天候・質問順序・快楽順応・お金などの古典的論点の最新知見と、人間関係が幸福に重要な理由を整理した。
- 2014J1159 主観的幸福の4因子モデルに基づく人と地域の活性化分析:NPO法人「吉備野工房ちみち」のみちくさ小道を事例に 前野(2014) 地域活性研究 主観的幸福の4因子モデルを用いて、NPOの「みちくさ小道」の取り組みが人と地域を活性化する様子を分析した。
- 2015J1158 地域とつながりが幸せに及ぼす影響:全国15000人アンケート調査をもとに 栗原(2015) 地域活性研究 全国15000人のアンケート調査にもとづき、地域や人とのつながりが幸せに及ぼす影響を分析した。
- 2015J1160 日本人の幸福度向上のための幸せの文化差・地域差の研究 佐伯(2015) 慶應義塾大学 博士論文(システムデザイン・マネジメント学、2014年度、指導:前野隆司) 日本人の幸福度向上を目的に、幸福度の文化差と地域差を幸せの4因子などを用いて分析した博士論文である。
- 2016J1163 幸せのダイナミクスとデザイン 前野(2016) Dynamics & Design Conference 被引用 0 幸せの4因子の考え方をもとに、幸福を動的に捉え設計の対象とする視点を論じた講演である。
- 2017J1156 “ハッピーワークショップ”の幸福度向上効果 前野(2017) 支援対話研究 被引用 1 幸せの4因子に基づくグループ学習プログラムを開発し、実施前後で幸福度と笑顔の共起率が高まることを示した。
- 2018J1157 地域経済をめぐる二つの対立的貨幣観をテーマにした協創型ビジネスゲームにおける地域住民の内的活力の分析:主観的幸福の4因子モデルによる定量評価を通じて 末吉(2018) 地域活性研究 対立する二つの貨幣観を題材とする協創型ビジネスゲームが地域住民の内的活力に与える影響を4因子で定量評価した。
- 2018J1162 『幸せ』の定量化・体系化と向上法 前野(2018) 日本看護評価学会誌 被引用 0 幸せを定量的に捉え体系化する方法として幸せの4因子を解説し、幸福を高める方法を論じた。
- 2022J1153 職業生活における主観的幸福感因子尺度/主観的不幸感因子尺度の開発 井上(2022) エモーション・スタディーズ 被引用 2 働く人の職業生活における幸福感7因子67項目と不幸感7因子62項目からなる尺度を開発した。
- 2023J1154 作業療法士のウェルビーイング向上のために 秋山(2023) 作業療法の実践と科学 被引用 1 作業療法士自身のウェルビーイング向上の柱として幸せの4因子を解説し、セルフ・コンパッションの重要性を論じた。
系譜図でこの流れの論文だけが浮かび上がり、左から右へ年代順に並びます。
つながり ほかの保存版コレクションから、内容の近いもの
- 名言集幸せの4つの因子:「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」前野隆司
- 調査・報告書はたらく人の幸せに関する調査(パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室)働くことを通じた幸せと不幸せを7因子ずつで測る尺度を作り、日本の就業者の実態を調べた調査。
- 名言集『しあわせはいつも』── 幸せの決定権を、状況や他人ではなく「自分のこころ」に返す代表作(本文は原典でご確認ください)相田みつを
- 発達マップ前野隆司先生の発達ストーリー(公開資料とご本人の語りによる解釈)5つの発達段階で比べた表・物語と言葉の中の段階
- 調査・報告書幸福度に関する研究会報告――幸福度指標試案(内閣府 経済社会総合研究所 幸福度に関する研究会, 2011)主観的幸福感を中心に、経済・健康・関係性の3本柱で日本の幸福度指標を試作した政府の報告。
- 思想マップポジティブ心理学3.0幸せは個人の中だけにあるのではなく、文化・関係・制度・生態系という複雑なシステムのなかで立ち上がる——だから幸せの物差しも一つではない
- 幸せに効くこと目標進捗・自己一致目標幸福度に強く効くのは『目標の達成』より『進んでいる実感』
- 禅語百選把手共行手を取り合って、ともに行く。師と弟子、仏と自分が一つになって歩む。あるいは、仲間と手を携えて道を行く。
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