セロトニントランスポーター遺伝子(5-HTTLPR)
5-HTTLPR多型(L/S型)と幸福・抑うつ
幸せへの効果の大きさ
ほぼ無: 米代表標本(N=2,574)でL型が人生満足高(p=.01)との初期報告は、独立標本での再現が混在。抑うつでは大規模解析(N=6.2万〜44万)で候補遺伝子効果なし
ほぼ無: ストレス×5-HTTLPRの交互作用も共同メタ(N=38,802)で支持されず
- ほかの幸福度指標
- 抑うつ(主効果・交互作用とも無)・ストレス反応
- なぜ効くのか
- セロトニン再取り込みの効率差という仮説だが、単一多型の効果は微小。幸福の遺伝率(約33%)は多数の微小効果の総和
- 幸せの4因子
- ありのままに ありのままに 単一遺伝子では説明できない(多遺伝子・微小効果)
こうすると更に効く
米国の代表標本でL型が人生満足と関連するという初期の報告(De Neve, 2011)は独立標本での再現が混在し、抑うつでは大規模解析で候補遺伝子の効果はなく(Border et al., 2019)、ストレスとの交互作用も共同メタで支持されませんでした(Culverhouse et al., 2017)。幸福の遺伝率(約33%)は多数の微小効果の総和で(Okbay et al., 2016)、単一の遺伝子では説明できないんです。つまり付き合い方としては、「自分は遺伝的に幸せになれない型」といった話を信じないこと、でしょうか。「ありのままに」因子の通り、遺伝は変えられないけれど単一遺伝子で運命が決まるわけではなく、残りの大部分は環境と行動の領域です。
気をつけること
候補遺伝子研究の再現性危機の代表例で、初期の正の関連は著者自身の追試でも混在しました。「ほぼ無」はゼロの証明ではなく、単一多型の効果は実用上は無視できるという意味です。観察データの関連なので、仮に小さな関連が見えても因果とは限りません。市販の遺伝子検査で「幸福度遺伝子」「ストレス耐性遺伝子」と称するものは、この行の根拠からすると裏付けが弱いです。既収載の「遺伝率」の行とは別の話で、確度はBです。
最初の一歩
今日からできるのは、「遺伝子で幸せが決まる」という言説を見たら、単一遺伝子の話か多遺伝子の話かを一度疑ってみることでしょうか。遺伝子検査の結果で落ち込んでいる人がいたら、この行の話を伝えてあげてください。
主要な研究
- Functional polymorphism (5-HTTLPR) in the serotonin transporter gene is associated with subjective well-being: evidence from a US nationally representative sample(De Neve, 2011, J Hum Genet)
- Collaborative meta-analysis finds no evidence of a strong interaction between stress and 5-HTTLPR genotype contributing to the development of depression(Culverhouse et al., 2017, Mol Psychiatry)
- No Support for Historical Candidate Gene or Candidate Gene-by-Interaction Hypotheses for Major Depression Across Multiple Large Samples(Border et al., 2019, Am J Psychiatry)
- Genetic variants associated with subjective well-being, depressive symptoms, and neuroticism identified through genome-wide analyses(Okbay et al., 2016, Nat Genet)
メモ:候補遺伝子研究の再現性危機の代表例。初期の正の関連(De Neve 2011)は著者自身の追試で混在(De Neve et al. 2012)。幸福のGWAS(Okbay et al. 2016 Nat Genet は未照合)では多数の微小効果。「遺伝率」の既収載行と弁別。v2.6.1:OpenAlexで1本を確認。Okbay et al. 2016 Nat Genet をOpenAlexで確認(De Neve et al. 2012は本回未検索)
原典と照合済み(3次)。効果の大きさは代表的な研究の値で、相関は因果を意味しません。
同じ「体質・遺伝・ホルモン」の項目
つながり ほかの保存版コレクションから、内容の近いもの
- 主要研究幸福は確率的な現象であるLykken(1996)・双生児研究から、幸福感の個人差の約半分が遺伝と関連し、安定した成分の遺伝率は80%近くに達すると推定した。
- 名言集幸福の約50%は遺伝的な設定値、約10%は環境、約40%は意図的な活動によって説明されるソニア・リュボミアスキー
- 主要研究幸福の追求:持続的な変化の構造Lyubomirsky(2005)・幸福の水準は遺伝的設定点・環境・意図的活動で決まり、意図的活動こそ持続的に幸福を高める鍵だと提案した。
- 名言集幸福は、進化が私たちの鼻先にぶら下げたニンジンである。完全には食べさせないことで、私たちを走らせ続けているダニエル・ネトル
- 発達マップ幸福観そのもの5つの発達段階で比べた表・根本の定義(段階とは何か)
- 思想マップポジティブ心理学1.0快い感情・没頭・意味・良い関係・達成(PERMA)という測れる要素を、自分の強み(性格の良い面)を使って増やしていけば、幸福(フラーリッシ…
- 調査・報告書仕事と幸福(世界幸福度報告2017 第6章)仕事があること、仕事の種類、職場の特徴が幸福とどう関係するかを世界のデータで調べた章。
- 禅語百選吾唯足知私は、足りていることを知っている。欲望を追いかける前に、すでに満ちていることに気づく。
内容の近さをAIで自動計算して選んでいます。保存版コレクションの一覧 →