この名言は、つらい経験がその後の喜びを「味わう力」(セイバリング:良い出来事を意識して深く味わうこと)を育てるという見方に重なる。Croftら(2014)は成人を対象とした調査で、過去に多くの逆境を経験した人ほど、いまの日常の良い出来事をよく味わえていることを示した。またSeeryら(2010)の縦断研究では、逆境をまったく経験していない人よりも、ほどほどの逆境をくぐってきた人のほうが心の健康や生活満足度が良好であった。ただし逆境が重なりすぎるときは、周囲の支えと組み合わせるとよい。苦しかった日々を思い出しながら目の前の温かい食事を噛みしめることが、人生の味わいを深めることにつながる。 参考:Croftら(2014)「From Tribulations to Appreciation」 ↗/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
この名言は、心理学でいう心的外傷後成長(つらい出来事と格闘するなかで、人生観や人間関係が深まる変化)に通じる。Tedeschi & Calhoun(1996)は大学生を対象にした質問紙研究で、深刻な出来事を経験した人ほど、人とのつながりや人生への感謝、精神的な深まりといった成長を強く報告することを示した。Seeryら(2010)も全米の成人を数年にわたって追跡し、ある程度の逆境を経てきた人ほど、逆境をほとんど経験していない人より心の健康が良好であることを見いだした。ただし苦しみは大きいほどよいわけではないため、ひとりで抱え込まず、支えを得ながら向き合うとよい。苦しい時期には、その経験が自分に何を教えたかを言葉にしてみることが、人としての深まりにつながる。 参考:Tedeschi & Calhoun(1996)「The posttraumatic growth inventory…」 ↗/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
人物
ドイツの哲学者(1844-1900)
「悲しみが心に深く刻み込まれるほど、それだけ多くの喜びをその心は容れることができる」
The deeper that sorrow carves into your being, the more joy you can contain.
— カリール・ジブラン 『預言者』(1923)「喜びと悲しみについて」
悲しみが喜びの容量を彫り広げる
心理学では
この名言は、悲しみと喜びが同じ心の器を分け合うという見方であり、心理学でいう感情の幅(つらさも喜びも深く味わう力)や逆境後の成長に通じる。Gross & John(2003)の相関研究では、感情を表に出さず押し込める「表出抑制」を習慣にする人ほど、ネガティブ感情だけでなくポジティブ感情の経験も少なかった。またSeeryら(2010)の全米規模の縦断研究では、逆境を一度も経験しなかった人より、ある程度の逆境をくぐってきた人のほうが人生満足度が高く、後のストレスにも強かった。ただし重い逆境が重なる時期は、周囲の支えを借りるとよい。悲しいときに無理に蓋をせず言葉にして味わうことが、やがて来る喜びを深く受け取る準備になる。 参考:Gross & John(2003)「Individual differences in two emot…」/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
人物
レバノン出身の詩人・画家(1883-1931)
「幸福は身体には良い。しかし、精神の力を育てるのは悲しみである」
Happiness is beneficial for the body, but it is grief that develops the powers of the mind.
この言葉は、快楽適応(恵まれた状態にも慣れて、喜びが薄れていく現象)とレジリエンス(逆境から立ち直り、強くなる力)の両面を言い当てている。Brickmanら(1978)は宝くじの高額当選者を調べ、当選者は一般の人に比べて、日常のささやかな出来事から得る喜びが小さいことを示した。またSeeryら(2010)の全米縦断研究では、ある程度の逆境を経験してきた人ほど、逆境がなかった人より、その後の心の健康や生活満足度が高かった。ただし逆境が重なりすぎると負担が上回るため、周囲の支えも頼るとよい。苦しい時期は力を蓄える時と捉え、順調な時ほど小さな喜びを意識して味わうことが、苦楽の循環を生かす助けになる。 参考:Brickmanら(1978)「Lottery winners and accident victi…」/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
人物
水戸藩第2代藩主(1628-1701)。「水戸黄門」
出典に諸説あり
「私はただ一つのことだけを恐れる。私の苦しみに値しない者になることを」
There is only one thing that I dread: not to be worthy of my sufferings.
この言葉は、心理学でいう意味づけ(meaning making:つらい出来事を自分の人生の物語の中に位置づけ直すこと)と重なる。Park(2010)は、強いストレスを経験した人々を対象とした研究を総説し、出来事に意味を見いだせた人ほど、その後の適応がよい傾向があることを整理した。Helgesonら(2006)のメタ分析でも、逆境から得たもの(ベネフィット・ファインディング)を見いだす人ほど、抑うつが低く、前向きな気分が高いことが報告されている。ただし、意味は急いで探さず、時間をかけて育つのを待つとよい。つらい時期には「この経験を通して何を大切にしたいか」を書き留めることが、苦しみを無駄にしない一歩になる。 参考:Park(2010)「Making sense of the meaning litera…」 ↗/Helgesonら(2006)「A meta-analytic review of benefit …」
人物
ロシアの作家(1821-1881)。死刑宣告とシベリア流刑を経験
「真冬のさなか、私はついに、自分の内に不屈の夏があることを知った」
In the midst of winter, I found there was, within me, an invincible summer.
この名言は、心理学でいう利得発見(つらい出来事の中に意味や恩恵を見いだすこと)や心的外傷後成長(逆境と向き合う中で人が成長すること)を言い当てている。Helgesonら(2006)は、病気などの逆境を経験した人を対象とする研究をメタ分析し、利得を見いだしている人ほど抑うつが低く、前向きな気分が高いことを示した。またSeeryら(2010)は全米の成人を追跡した縦断研究で、適度な逆境を経験してきた人ほど、逆境のない人より心の健康が良好であることを見いだした。ただし渦中では無理に意味を探さず、少し落ち着いてから振り返るとよい。苦しい経験の後に「ここで得たものは何か」と書き出すことが、醜い姿の奥に隠れた宝石に気づく助けになる。 参考:Helgesonら(2006)「A meta-analytic review of benefit …」/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
人物
英国の劇作家(1564-1616)
「泣くに時があり、笑うに時がある。嘆くに時があり、踊るに時がある」
A time to weep, and a time to laugh; a time to mourn, and a time to dance.
このことわざは、セルフコンパッション(自分への思いやり)の要素の一つである「共通の人間性」(苦しみや失敗は誰もが経験するものだと捉える見方)にあたる。Neff(2003)は、つらいときに「なぜ自分だけが」と孤立するのではなく、他者とのつながりの中で自分の痛みを見ることを、健全な自己との向き合い方の柱に位置づけた。Jordanら(2011)が大学生を対象に行った一連の研究では、人は他者の否定的な感情を実際より少なく見積もりがちであり、そう見積もる人ほど孤独感が強く、人生への満足度が低いことが示された。つらい時期には「同じ雨に打たれている人がいる」と思い出し、身近な人と悩みを打ち明け合うことが、心の重さを分かち合う助けになる。 参考:Neff(2003)「Self-Compassion: An Alternative Co…」/Jordanら(2011)「Misery Has More Company Than Peopl…」 ↗
この名言は、グリーフ研究でいう「継続する絆」(故人との心のつながりを保ち続けること)を言い当てている。かつては、故人への思いを断ち切ることが回復の条件とされていた。これに対しKlassら(1996)は、遺族が故人を思い出し、語り継ぐことで新たな関係を築く姿を描き、それを健全な悲嘆の一つの形と位置づけた。Root & Exline(2014)のレビューも、絆の保ち方によって適応との関連が異なることを整理している。そのうえで、故人の価値観を受け継ぐような内面的なつながりは、遺族の支えになりうると述べている。ただし悲しみが長く強く続く場面では、日常を立て直す時間と組み合わせるとよい。命日や家族の集まりで故人の思い出を語り合うことが、悲しみをつながりへと変える助けになる。 参考:Klassら(1996)「Continuing bonds」 ↗/Root & Exline(2014)「The Role of Continuing Bonds in Co…」 ↗
この言葉は、命の有限性の自覚(人生の時間には限りがあると意識すること)が、いまの経験の価値を際立たせるという心理学の知見と重なる。Friasら(2011)は大学生を対象とした実験で、自分の死を具体的に思い描いてもらうと、感謝の気持ちが高まることを示した。またKurtz(2008)は、卒業を控えた大学生に「残りの学生生活はわずかだ」と意識させる実験を行った。その結果、時間の希少性(残り時間が少ないという感覚)を意識させると、学生生活を味わう行動と幸福感が増すことを見いだした。ただし、死を漠然と考えると不安が勝つこともあるため、身近な日常の場面に結びつけて思い描くとよい。終わりがあることを恐れではなく味わいの合図と受け止め、今日の食事や会話を「限りある一回」として丁寧に過ごすことが、日々の充実につながる。 参考:Friasら(2011)「Death and gratitude: Death reflect…」 ↗/Kurtz(2008)「Looking to the Future to Appreciat…」 ↗
美輪のいう正負の法則は、心理学でいう弁証法的な見方(良い面と悪い面は共存し、状況は移り変わるとみる考え方)に重なる。Seeryら(2010)は米国の成人を数年間追跡した縦断研究で、これまでに適度な逆境を経験してきた人ほど、逆境がほぼない人や極端に多い人よりも心の健康と生活満足度が高く、その後の困難にも揺らぎにくいことを示した。不遇の経験が後の糧になりうるという見方と一致する結果である。ただし他人の不幸に当てはめると「自業自得」とみる見方に転じやすいので、自分の人生を見通す視点として使うとよい。苦しい時期は「これも収支の一部」と捉え直し、好調な時期は備えを忘れない。その構えが、長い人生の安定につながる。 参考:Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
死を「終わり」ではなく「くぐり抜ける門」と言い表すことは、心理学でいう喪失の意味づけ(死という出来事を、自分なりに納得できる物語へ組み込むこと)にあたる。意味再構成理論では、遺された人が死に意味を見いだせるかどうかが、悲嘆の行方を左右すると考える。Currierら(2006)は身近な人を亡くした大学生を調べた相関研究で、死の意味を理解できている人ほど複雑性悲嘆(長く続き、生活を妨げる強い悲しみ)が軽いことを示した。突然の死ほど悲嘆が重くなる関係も、意味づけの難しさによって説明された。大切な人を送るときは、自分にしっくりくる死のたとえを探し、故人を語り合う時間をもつことが助けになる。 参考:Currierら(2006)「Sense-Making, Grief, and the Exper…」 ↗
この名言は、社会情動的選択性理論(残された時間を限られたものと感じると、人は情緒的に意味のある経験や親しい人との関係を優先するようになるという理論)の核心を、恋の言葉で言い表している。Carstensenら(1999)はこの理論を体系化し、高齢者だけでなく、重い病気などで人生の終わりを意識した若い人も、深い絆を結べる相手との時間を選ぶ傾向を示す研究を整理した。また、Kurtz(2008)は卒業を控えた大学生を対象に実験を行った。残りの学生生活が短いことを意識させられた学生は、その期間に多くの活動へ積極的に取り組み、幸福感も高まった。終わりを意識することは、時間を短くするのではなく濃くするのである。「この日々もいつかは終わる」と時折思い出すことが、目の前の人との時間を深く味わう助けになる。 参考:Carstensenら(1999)「Taking time seriously: A theory of…」 ↗/Kurtz(2008)「Looking to the Future to Appreciat…」 ↗
この名言は、心理学でいう心的外傷後成長(つらい出来事と格闘するなかで、人生観や人とのつながりが深まる変化)を言い当てている。TedeschiとCalhoun(2004)は、それまでの研究を整理し、成長を生むのは出来事そのものではなく、苦しみと向き合い、その意味を問い直す「格闘」の過程であると論じた。また、Seeryら(2010)は米国の全国調査の参加者を数年にわたり追跡し、適度な逆境を経験してきた人ほど、逆境をほとんど経験していない人よりも精神的な健康や生活満足度が高い傾向にあることを見いだした。ただし逆境が重なりすぎる場面では、周囲の支えと組み合わせるとよい。苦しい時期には、それを避けるより出来事の意味を言葉にして書き留めることが、のちの喜びへの通り道になる。 参考:TedeschiとCalhoun(2004)「TARGET ARTICLE: "Posttraumatic Gro…」/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」