幸せの名言集

楽観性の名言45選

「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」

Le pessimisme est d'humeur; l'optimisme est de volonté.

— アラン(エミール・シャルティエ) 『幸福論』(1925)

仏語原文

悲観は放っておいても自然に湧いてくる「気分」だが、楽観は意志の力で選び取る「態度」である、という区別。楽観的であることは能天気な性格のことではなく、意識的な決断と日々の実践の問題だとする

心理学では
アランの言う「意志としての楽観」は、セリグマンの学習性楽観主義(出来事の受け止め方は練習で変えられるという考え)を先取りしている。Meevissenら(2011)は大学生を対象に、「最高の未来の自分」を毎日思い描く課題を2週間続けてもらう実験を行い、比較群に比べて将来への前向きな期待が高まることを見いだした。さらにMalouff & Schutte(2017)のメタ分析(複数の研究を統合する手法)でも、心理的な介入によって楽観性が高まることが確かめられている。悲観が湧いたときは無理に打ち消さず、望む未来を数分かけて具体的に書き出すことが、楽観を選び直す助けになる。 参考:Meevissenら(2011)「Become more optimistic by imaginin…」 ↗/Malouff & Schutte(2017)「Can psychological interventions in…」 ↗
人物
フランスの哲学者(1868-1951)。三大幸福論の一つの著者
出典に諸説あり
「悲観主義者はあらゆる機会の中に困難を見出し、楽観主義者はあらゆる困難の中に機会を見出す」

A pessimist sees the difficulty in every opportunity; an optimist sees the opportunity in every difficulty.

— ウィンストン・チャーチル(とされる) 典拠不詳

※帰属に諸説あり

同じ現実でも注意の向け方で見えるものが変わる

心理学では
この名言は、楽観性(物事はよい方向に進むと期待する傾向)が、困難の「見え方」そのものを変えることを語っている。つらい出来事の中に得たものや意味を見いだすことを、心理学では「ベネフィット・ファインディング(恩恵の発見)」と呼ぶ。Helgesonら(2006)は病気などのストレス体験に関する研究をまとめたメタ分析で、楽観的な人ほど恩恵を見いだしやすく、恩恵を見いだす人ほど抑うつが低く前向きな気分が高いことを示した。Isaacowitz(2005)も視線計測の研究で、楽観性の高い人ほど不快な画像を見つめる時間が短いことを報告している。ただし本当に危険な兆しは、現実的な確認と組み合わせて見極めるとよい。うまくいかない日に「ここから何が得られるか」を一つ書き出すことが、機会に目を向ける練習になる。 参考:Helgesonら(2006)「A meta-analytic review of benefit …」/Isaacowitz(2005)「The Gaze of the Optimist」 ↗
人物
英国の政治家(1874-1965)。第二次大戦期の首相
出典に諸説あり
「下を向いていたら、虹を見つけることはできないよ」

You'll never find a rainbow if you're looking down.

— チャールズ・チャップリン 発言として流通

良いものは、上を向く者にしか見えない

心理学では
この名言は、楽観性(物事はよい方向に向かうと期待する傾向)と、注意の向け方の結びつきを言い当てている。気分が沈むと、悪い情報ばかりに目が向く注意バイアス(注意の偏り)が生じやすく、良いものがあっても視界に入らなくなる。Isaacowitz(2005)は視線計測を用いた研究で、楽観的な人ほど不快な画像を長く見つめない傾向があることを示した。またWilkesら(2017)の実験では、抑うつ傾向のある人が背筋を伸ばした姿勢でストレスのかかる課題に取り組むと、ふだんの姿勢のときより前向きな気分が高まり、疲労感が減った。つらい日こそ、まず顔と目線を上げてみる。それが身の回りにある小さな良いことに気づく入り口になる。 参考:Isaacowitz(2005)「The Gaze of the Optimist」 ↗/Wilkesら(2017)「Upright posture improves affect an…」 ↗
人物
英国出身の映画俳優・監督(1889-1977)。喜劇王
「人生に必要なもの。それは勇気と想像力、そして少しのお金だ」

That's all there is in life: courage, imagination... and a little dough.

— チャールズ・チャップリン 映画『ライムライト』(1952)の台詞

幸福の必要条件は意外なほど少ない

心理学では
勇気と想像力は、希望理論でいう「エージェンシー(目標へ向かう意志)」と「パスウェイ(目標への道筋を思い描く力)」に重なる。Snyderら(1991)は希望を測る尺度を作り、この二つが強い人ほど楽観的で、困難に前向きに対処しやすいことを示した。お金については、米国の大規模調査を分析したKahneman & Deaton(2010)やKillingsworth(2021)が、収入は幸福と関連するものの、同じ額の増収がもつ重みは豊かになるほど小さくなることを報告している。暮らしの土台を整えたら、一歩踏み出す意志と別の道を描く力を育てることが、よい人生への近道になる。 参考:Snyderら(1991)「The will and the ways: Development…」/Kahneman & Deaton(2010)「High income improves evaluation of…」/Killingsworth(2021)「Experienced well-being rises with …」
人物
英国出身の映画俳優・監督(1889-1977)。喜劇王
出典に諸説あり
「明けない夜はない」

The night is long that never finds the day.

— シェイクスピア『マクベス』由来とされる 「The night is long that never finds the day」(第4幕)

日本語の格言としての定着は近代以降。原文とはニュアンス差がある

どんな苦難にも必ず終わりが来る

心理学では
「明けない夜はない」は、心理学でいう説明スタイルの「永続性」(悪い出来事を一時的とみるか、ずっと続くとみるかという捉え方の癖)を、一時的なほうへ向ける言葉である。Gilbertら(1998)は、失恋や昇進審査の不合格などを経験した人を対象に調査と実験を行い、人はつらい出来事のあとの落ち込みが実際よりも長く続くと予測しがちであることを示した。心を立て直す力を見積もりに入れ損ねるのである。また、Petersonら(1988)の縦断研究では、若いころに悪い出来事を永続的なものとして説明していた人ほど、中年期以降の健康状態がよくなかった。苦しいときは「この状態はずっとは続かない」と言葉にし、かつて乗り越えた夜を思い出すことが、朝を待つ力になる。 参考:Gilbertら(1998)「Immune neglect: A source of durabi…」 ↗/Petersonら(1988)「Pessimistic explanatory style is a…」 ↗
人物
英国の劇作家(1564-1616)
出典に諸説あり
「夜明け前が、一番暗い」

The darkest hour is just before the dawn.

— トーマス・フラー(とされる) 17世紀英国の文献に類似句

※定型化の経緯には諸説あり

最悪の局面は好転の直前であることが多い

心理学では
「夜明け前が一番暗い」という見方は、心理学でいう楽観性(物事はいずれ良い方向へ向かうと期待する傾向)や、贖罪の語り(悪い出来事が良い結果へ転じたと捉える人生の物語)に通じる。McAdamsら(2001)は中年の成人と学生の人生の語りを分析し、苦境が好転へつながる場面を多く語る人ほど、生活満足度や自尊心が高く、抑うつが低いことを示した。またSeeryら(2010)の全国規模の縦断調査では、ほどほどの逆境を経験してきた人は、逆境がまったくない人や非常に多い人よりも、その後の苦痛が小さく生活満足度が高かった。つらい時期には、この経験が後でどう生きるかを一行書き出しておくことが、夜明けを待つ支えになる。 参考:McAdamsら(2001)「When Bad Things Turn Good and Good…」/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
人物
英国の聖職者・著述家(1608-1661)
「顔を太陽に向けていれば、影は見えない」

Keep your face to the sunshine and you cannot see a shadow.

— ヘレン・ケラー 随想より

注意を光に向ければ、影は視界から消える

心理学では
この名言は、心理学でいう「注意の配置」(何に目を向けるかを選んで感情を整える働き)を言い表している。Gross(1998)は感情調整のモデルの中で、注意の向け先が、感じる感情を左右する入り口になると整理した。Isaacowitz(2005)は視線計測を用いて若い成人が画像を見る様子を調べ、楽観的な人ほど不快な画像を長く見つめない傾向があることを示した。ただし健康や安全にかかわる知らせは、一度しっかり確かめてから光の側へ目を戻すとよい。一日の終わりにうまくいったことを思い返す習慣が、心を太陽へ向け直す助けになる。 参考:Gross(1998)「The Emerging Field of Emotion Regu…」 ↗/Isaacowitz(2005)「The Gaze of the Optimist」 ↗
人物
米国の著作家・社会活動家(1880-1968)
出典に諸説あり
「希望とは、目覚めている者が見る夢である」

Hope is a waking dream.

— アリストテレス(に帰される) ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』

※伝承による帰属

希望は覚醒時に意志的に見る夢である

心理学では
この名言は、スナイダーの希望理論とよく重なる。希望とは、目標への道筋を考える「経路思考」(方法を見つける力)と、「自分はやれる」と感じる「主体思考」(意志の力)から成る、覚めた頭での思考である。Snyderら(1991)は大学生などを対象にこの二つを測る尺度を作り、希望の高い人ほど楽観性や自分で状況を動かせる感覚が強いことを示した。Oettingenら(2001)の実験では、望む未来を思い描いたうえで現実の障害も見すえる「心理的対比」を行った人は、実現の見込みがある目標に強く打ち込んだ。夢を描いたら「何が壁になるか」「どの道で越えるか」もあわせて書き出すことが、希望を行動に変える助けになる。 参考:Snyderら(1991)「The will and the ways: Development…」/Oettingenら(2001)「Self-regulation of goal-setting: T…」 ↗
人物
古代ギリシャの哲学者(BC384-322)
「絶望は、愚か者の結論である」

Despair is the conclusion of fools.

— ベンジャミン・ディズレーリ 著作・演説より

絶望は事実ではなく、早すぎる結論である

心理学では
心理学では、この名言は「絶望感理論」(悪い出来事を「ずっと続く」「何もかもに及ぶ」と解釈する癖が絶望を生むとする考え)で説明できる。絶望は現実そのものではなく、出来事の解釈から導かれた結論なのである。Alloyら(2006)は大学生を数年間追跡する縦断研究を行い、こうした否定的な解釈スタイルをもつ人ほど、のちにうつ病を発症しやすいことを示した。一方、Gillhamら(1995)は子どもに悲観的な説明を見直す練習をさせる介入を行い、2年後も対照群より抑うつ症状が少ないという効果を確認した。つまずいたときは「これは本当にずっと続くのか」「すべてに当てはまるのか」と自分に問い直す。それが、早すぎる結論を手放す助けになる。 参考:Alloyら(2006)「Prospective incidence of first ons…」 ↗/Gillhamら(1995)「Prevention of Depressive Symptoms …」 ↗
人物
英国首相(1804-1881)・作家
「それでも人生にイエスと言う」

— ヴィクトール・フランクル 同名の講演録(1946)。収容所で歌われた歌の一節に由来

書名として知られる

どんな状況でも人生を肯定する態度は選べる

心理学では
この言葉は悲劇的楽観主義(苦痛や喪失、死を避けられないものと認めたうえで、なお人生に意味を見出す構え)を表している。Fredricksonら(2003)は、米国同時多発テロの前後で大学生を追った縦断研究で、危機のさなかにも感謝や愛情を感じられた人ほど抑うつ症状が少なかったことを示した。Helgesonら(2006)のメタ分析でも、つらい出来事から得たものを見出す(ベネフィット・ファインディング)人ほど抑うつが低く、前向きな心の状態が高かった。苦しみを打ち消すのではなく、苦しみと並べてよいものを見る姿勢が要である。つらい日にも悲しみを否定せず、「それでも今日あったよいこと」を一つ書き留める習慣が、人生への肯定を育てる助けになる。 参考:Fredricksonら(2003)「What good are positive emotions in…」/Helgesonら(2006)「A meta-analytic review of benefit …」
人物
オーストリアの精神科医(1905-1997)
出典に諸説あり
「人はみな、幸せになろうと決心した分だけ幸せになれる」

Most folks are as happy as they make up their minds to be.

— エイブラハム・リンカーン(とされる) 典拠不詳

※Quote Investigatorは典拠を確認できていない

幸福には意図と決心の要素がある

心理学では
この名言は、幸福を左右する要因のうち「意図的活動」(自分で選んで続ける行動や考え方)の力を言い当てている。Lyubomirskyら(2005)は、気質や環境に加えて、日々の意図的な取り組みが持続的な幸福の変化を生むというモデルを示した。さらにLyubomirskyら(2011)は、大学生に感謝の手紙を書く、最高の未来の自分を思い描くといった課題を数週間続けてもらう介入研究を行った。その結果、幸せになりたいという意欲をもって参加し、努力して取り組んだ人ほど、幸福感が大きく伸びていた。ただし、幸せかどうかを絶えず採点するより、行動そのものに目を向けると続けやすい。今日、感謝したことを一つ書き留めることが、決心を幸せに変える第一歩になる。 参考:Lyubomirskyら(2005)「Pursuing Happiness: The Architectu…」/Lyubomirskyら(2011)「Becoming happier takes both a will…」
人物
米国第16代大統領(1809-1865)
「失敗とは、転ぶことではなく、起き上がらないことである」

Failure is not the falling down, but the staying down.

— メアリー・ピックフォード 寄稿・発言より

転倒は失敗ではない。回復の放棄が失敗である

心理学では
この名言は、心理学でいうレジリエンス(逆境から立ち直り、適応していく力)の考え方と重なる。Masten(2001)は逆境の中で育つ子どもの研究を概観し、立ち直りは特別な人だけの資質ではなく、身近な人とのつながりや自分で考える力といった、ごく普通の適応の働きから生まれると論じた。転ぶことは誰にでも起こり、起き上がる力も誰もが持っているのである。Breines & Chen(2012)の実験では、難しいテストに失敗した後に自分への思いやり(セルフ・コンパッション)を促された人は、そうでない人より再テストに向けて長く勉強した。失敗した日は、自分を責める前に友人にかけるような言葉を自分にかけることが、次の一歩につながる。 参考:Masten(2001)「Ordinary magic: Resilience process…」 ↗/Breines & Chen(2012)「Self-Compassion Increases Self-Imp…」 ↗
人物
カナダ出身の女優・映画プロデューサー(1892-1979)。「アメリカの恋人」
「七転び八起き」

— 日本のことわざ

だるまの意匠とともに定着

何度倒れても、そのたびに起き上がる

心理学では
このことわざは、心理学でいうレジリエンス(逆境から立ち直る力)と、楽観的な説明スタイル(失敗を一時的で限定的なものと捉える考え方)を表している。Seligman & Schulman(1986)は、断られることの多い生命保険の営業職を追跡した。その結果、楽観的な説明スタイルをもつ人ほど成績が高く、離職しにくいことが示された。またSeeryら(2010)の縦断研究では、逆境をある程度経験してきた人は、まったく経験していない人よりも、その後の心の苦痛が少なく、生活満足度が高かった。つまずいた日は「今回はうまくいかなかっただけ」と言葉にしてみる。それが、次の一歩を踏み出す助けになる。 参考:Seligman & Schulman(1986)「Explanatory style as a predictor o…」 ↗/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
「冬来たりなば、春遠からじ」

If Winter comes, can Spring be far behind?

— パーシー・シェリー 「西風に寄せる歌」(1820)結句

パブリックドメインの詩の一節

最も厳しい季節は、次の季節の前触れである

心理学では
この名言は、苦境のさなかに視点を未来へ移す「時間的距離化(いまの出来事を遠い将来の自分の目から眺めること)」と、つらさは一時的なものだと捉える「無常性の認識」を言い表している。Bruehlman-Senecal & Ayduk(2015)は大学生などを対象に一連の実験を行い、ストレスのかかる出来事を数年後の視点から考えた人は、直近の視点で考えた人よりも苦痛が小さく、その背景には「これもいずれ過ぎ去る」という感覚の強まりがあることを示した。さらにBruehlman-Senecalら(2016)では、ふだんから長い目で物事を見る傾向の強い人ほど、ストレスへの反応が穏やかで、幸福感が高いことと関連していた。つらい時期には「一年後の自分はこの冬をどう振り返るか」と問いかけることが、春を待つ力になる。 参考:Bruehlman-Senecal & Ayduk(2015)「This too shall pass: Temporal dist…」 ↗/Bruehlman-Senecalら(2016)「Taking the long view: Implications…」 ↗
人物
英国のロマン派詩人(1792-1822)
「人は負けるようには造られていない。壊されることはあっても、負けはしないのだ」

A man can be destroyed but not defeated.

— アーネスト・ヘミングウェイ 『老人と海』(1952)

外的な敗北と内的な敗北は別のものである

心理学では
この名言は、状況としての敗北と「敗北感(defeat:自分は打ちのめされたという内的な屈服の感覚)」を区別する心理学の見方に重なる。Gilbert & Allan(1998)は学生や抑うつ患者を対象とした相関研究を行い、敗北感や閉塞感(逃げ場がないという感覚)が強い人ほど抑うつが重いことを示した。またBonanno(2004)は死別やトラウマに関する研究を概観し、大きな痛手のあとも心の働きを保つ人が少なくないことを示した。つまり、打撃を受けたこと自体よりも、心が屈服するかどうかが分かれ目になる。挫折の場面では「失ったもの」と「まだ手放していないもの」を分けて書き出すことが、心の内側で負けないための助けになる。 参考:Gilbert & Allan(1998)「The role of defeat and entrapment …」 ↗/Bonanno(2004)「Loss, Trauma, and Human Resilience…」
人物
米国の作家(1899-1961)。ノーベル文学賞
出典に諸説あり
「成功は決定的ではなく、失敗は致命的ではない。大事なのは続ける勇気である」

Success is not final, failure is not fatal: it is the courage to continue that counts.

— ウィンストン・チャーチル(とされる) 典拠不詳

※帰属に諸説あり(ビール会社の広告由来説など)

成功も失敗も通過点にすぎない

心理学では
この名言は、心理学でいう楽観的な説明スタイル(出来事の原因を一時的で限られたものと捉える考え方の癖)と、グリット(長期的な目標への粘り強さと情熱)を言い当てている。Seligman & Schulman(1986)は生命保険の営業職を追跡し、失敗を一時的なものと説明する楽観的な人ほど販売成績が高く、辞めずに働き続けていたことを示した。またDuckworthら(2007)の相関研究では、グリットが高い人ほど、学業や厳しい訓練課程で途中でやめずに最後までやり抜く傾向があった。うまくいかない日は「今回は」「この点は」と範囲を区切って振り返り、翌日もう一歩だけ進むことが、続ける勇気を支える。 参考:Seligman & Schulman(1986)「Explanatory style as a predictor o…」 ↗/Duckworthら(2007)「Grit: Perseverance and passion for…」 ↗
人物
英国の政治家(1874-1965)
「私たちは有限の失望を受け入れなければならない。しかし、無限の希望を失ってはならない」

We must accept finite disappointment, but never lose infinite hope.

— マーティン・ルーサー・キング・ジュニア 1968年の説教ほか

個々の失望と根源的な希望を区別せよ

心理学では
この名言は、個々の失望を「この件はうまくいかなかった」と限定して受け止め、人生全体への見通しにまで広げないことを説いている。心理学では、悪い出来事の原因を全般的で持続的なもの(何にでも、いつまでも当てはまるもの)と捉える癖が問題とされる。Abramsonら(1989)の絶望感理論は、失敗をこのように一般化する捉え方が絶望感や抑うつにつながる道筋を示した。また、Wroschら(2003)の相関研究では、達成できない目標から手を引き、新たな目標に意欲を向け直せる人ほど主観的ウェルビーイング(暮らしへの満足や心の安定)が高かった。うまくいかないときは、失望を「この目標」「この場面」に区切って言葉にし、次に向かう小さな目標を一つ立てることが、希望を保つ助けになる。 参考:Abramsonら(1989)「Hopelessness depression: A theory-…」 ↗/Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗
人物
米国の牧師・公民権運動指導者(1929-1968)。ノーベル平和賞
「希望があるところに、人生もある」

Where there's hope, there's life.

— アンネ・フランク 『アンネの日記』

希望は生きる力そのものである

心理学では
この名言は、心理学でいう「希望」(目標に向かおうとする意志と、そこへ至る道筋を思い描く力)の働きを言い当てている。Snyderら(1991)は、希望をこの二つの要素からなる心の力として定義し、それを測る尺度を作った。その反対にあたる絶望感(将来に良いことは起こらないという見通し)について、Eversonら(1996)はフィンランドの中年男性を長期にわたって追跡した。その結果、絶望感の強い人ほど、その後の死亡や心筋梗塞・がんの発症が多いことを報告している。希望を持つことと生きることは、心と体の両面で深く結びついている。苦しいときこそ、小さな目標とそこへ向かう道筋を一つ書き出してみる。それが、明日へ踏み出す力を取り戻す助けになる。 参考:Snyderら(1991)「The will and the ways: Development…」/Eversonら(1996)「Hopelessness and Risk of Mortality…」 ↗
人物
ドイツ生まれのユダヤ人少女(1929-1945)
「どの雲にも、銀の裏地がついている」

Every cloud has a silver lining.

— 英語のことわざ ミルトンの詩句(1634)に由来

どんな暗い状況にも良い側面が潜む

心理学では
このことわざは、心理学でいう「ベネフィット・ファインディング」(逆境の中に良い面や得たものを見出すこと)にあたる。Affleckら(1987)は、初めて心臓発作を起こした男性を8年間追跡した。その結果、発作後に何らかの利点を見出していた人ほど、その後の再発作が少ないことが示された。King & Miner(2000)の実験では、つらい出来事から得たものについて書いた人は、その後の通院が減った。ただし、つらさの渦中にあるときは、まずその気持ちを受け止めることと組み合わせるとよい。落ち着いたら「この経験で得たものは何か」を書き出すことが、雲の裏の光に気づく助けになる。 参考:Affleckら(1987)「Causal attribution, perceived bene…」 ↗/King & Miner(2000)「Writing about the Perceived Benefi…」 ↗
「絶望の隣は希望です」

— やなせたかし 著書・発言

絶望と希望は隣り合わせにある

心理学では
この名言は、心理学でいう混合感情(悲しみと喜びのような相反する感情が同時に生じる状態)の考え方に重なる。Larsenら(2001)は、ほろ苦い映画を見た直後などの大学生を調べ、人は悲しさとうれしさを同時に感じうることを示した。さらにAdler & Hershfield(2012)は心理療法を受ける成人を縦断的に追い、つらさの中に前向きな感情が混じり始めた人ほど、その後に心の健康が改善していたことを報告している。絶望の只中にも、希望はすでに隣で芽を出しているのである。苦しいときほど、小さな安堵や感謝にも目を向け、それを言葉にしてみることが回復への一歩につながる。 参考:Larsenら(2001)「Can people feel happy and sad at t…」 ↗/Adler & Hershfield(2012)「Mixed Emotional Experience Is Asso…」 ↗
人物
日本の漫画家・絵本作家(1919-2013)。『アンパンマン』
「楽観主義は、学習することができる」

— マーティン・セリグマン 『オプティミストはなぜ成功するか(Learned Optimism)』(1991)

楽観は素質ではなく技術である

心理学では
セリグマンのいう楽観とは、生まれつきの性格ではなく「説明スタイル」(悪い出来事の原因を一時的・部分的と捉えるか、永続的・全般的と捉えるかという考え方の癖)である。この癖は、悲観的な思い込みに証拠を挙げて反論する練習で変えられる。Gillhamら(1995)は、この認知スキルを児童に教える介入研究を行い、2年後も対照群より抑うつ症状が少なく、説明スタイルも改善していたことを示した。Malouff & Schutte(2017)のメタ分析も、心理的介入が楽観性を高める効果を報告している。つまずいたときは「これはずっと続くのか、すべてに及ぶのか」と問い直す。それが楽観を育てる日々の練習になる。 参考:Gillhamら(1995)「Prevention of Depressive Symptoms …」 ↗/Malouff & Schutte(2017)「Can psychological interventions in…」 ↗
人物
米国の心理学者(1942-)。ポジティブ心理学の創始者。学習性無力感研究から転回
「ポジティブな感情は、思考と行動の幅を広げ、心理的な資源を築く」

— バーバラ・フレドリクソン 拡張形成理論(broaden-and-build theory, 1998)

ポジティブ感情は快楽ではなく資源形成の機能を持つ

心理学では
この言葉は、フレドリクソンの拡張形成理論(ポジティブ感情が注意や発想を広げ、その積み重ねが長く残る力を育てるという考え)の核心である。Fredrickson & Branigan(2005)は映像で感情を引き起こす実験を行い、喜びなどを感じた人ほど注意の範囲が広がり、やってみたい行動を多く思いつくことを示した。Fredricksonら(2008)は、社会人が慈悲の瞑想(自他の幸せを願う瞑想)を続ける実験で、増えたポジティブ感情が人とのつながりや人生の目的といった資源を育て、生活満足度を高めることを見いだした。日々の小さな喜びや感謝を味わうことが、困難に備える心の蓄えにつながる。 参考:Fredrickson & Branigan(2005)「Positive emotions broaden the scop…」/Fredricksonら(2008)「Open hearts build lives: Positive …」
人物
米国の心理学者。ノースカロライナ大学教授
「窮すれば則ち変じ、変ずれば則ち通ず」

— 『易経』繋辞下伝

「窮すれば通ず」として流通

行き詰まり(窮)は終わりではなく、「変わるべき時が来た」という合図である。行き詰まったからこそ変化が起き、変化すれば必ず道が通じる ── 「易(=変化)」の書の根本思想

心理学では
この言葉は、心理学でいう「行き詰まり(インパス)」と「再構造化(問題の見方を組み替えること)」の関係に重なる。Knoblichら(1999)はマッチ棒の数式パズルを使った実験で、思い込みによる制約をゆるめると行き詰まりが破れ、解決がひらめくことを示した。Wroschら(2003)も、達成できない目標から手を引き、新しい目標に向かい直せる人ほど、主観的ウェルビーイング(生活への満足感や心の安定)が高いと報告している。手詰まりを感じたら、それを失敗ではなく「前提を見直す合図」と受け止める。そのうえでやり方か目標を一つ変えてみることが、道を開く助けになる。 参考:Knoblichら(1999)「Constraint relaxation and chunk de…」 ↗/Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗
「捨てる神あれば拾う神あり」

— 日本のことわざ

一つの縁が切れても、別の縁が生まれる

心理学では
このことわざは、一つの道が閉ざされても別の道がひらけると見通す楽観性であり、心理学でいう目標の再関与(かなわない目標から離れ、新しい目標に力を向け直すこと)の大切さに通じる。Wroschら(2003)の一連の調査では、達成できない目標から手を引き、別の目標に取り組み直せる人ほど、主観的幸福感(暮らしへの満足や気分のよさ)が高いことが示された。またLinville(1987)の縦断研究では、自分を多くの役割や側面でとらえる人ほど、ストレスの多い出来事のあとも抑うつや体調不良が生じにくかった。仕事以外にも人間関係や趣味など複数の居場所を育てておくことが、縁が切れたときの支えになる。 参考:Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗/Linville(1987)「Self-complexity as a cognitive buf…」 ↗
「渡る世間に鬼はない」

— 日本のことわざ

世の中には思いのほか情け深い人がいる

心理学では
このことわざは、心理学でいう一般的信頼(見知らぬ他者も基本的には善意をもっていると期待する傾向)を言い表している。Cohnら(2019)は世界各地の都市で、拾った財布を公共施設の受付に届け、持ち主に連絡が入るかを調べる野外実験を行った。その結果、多くの財布が持ち主に返され、中のお金が多いほど返されやすかった。しかも人々は、事前の予想でこの正直さを低く見積もっていた。またYamagishiら(1999)は、人を信頼しやすい人ほどだまされやすいわけではなく、相手が信頼できないことを示す手がかりにむしろ敏感であることを報告している。人を信じる構えと、相手を見極める目は両立する。初対面の相手にもまず善意を前提に接することが、新しい協力やつながりを開く一歩になる。 参考:Cohnら(2019)「Civic honesty around the globe」 ↗/Yamagishiら(1999)「Trust, Gullibility, and Social Int…」 ↗
出典に諸説あり
「最後にはすべてうまくいく。もしうまくいっていないなら、それはまだ最後ではないということだ」

Everything will be okay in the end. If it's not okay, it's not the end.

— ジョン・レノン(とされる) 典拠不詳(ブラジルの作家フェルナンド・サビーノ由来説が有力)

※帰属に諸説あり

「終わり」の定義を延長すれば希望は保てる

心理学では
この言葉は、心理学でいう楽観性(最終的には物事がよい方向に向かうという期待)を、時間の区切り方で言い表している。Scheier & Carver(1985)は大学生を学期末まで追跡する縦断研究を行い、楽観的な人ほど後に身体症状の訴えが少ないことを示した。またMcAdamsら(2001)は人生の語りを分析し、つらい出来事がのちに良い結果へ転じる「救済の筋書き(つらい経験が好転する物語の型)」で経験を語る人ほど、幸福感が高く抑うつが低いことを見いだした。苦境を物語の途中と捉え直すことが、希望を支える。つまずいたときは「いまはまだ途中の章だ」と区切りを先へ延ばし、次の一手に目を向ける。 参考:Scheier & Carver(1985)「Optimism, coping, and health: Asse…」/McAdamsら(2001)「When Bad Things Turn Good and Good…」
人物
英国のミュージシャン(1940-1980)。ビートルズ
「弱気は最大の敵」

— 津田恒実 座右の銘として知られる

自分を破るのは相手ではなく自分の弱気である

心理学では
この名言は、心理学でいう自己効力感(「自分ならやれる」という見通し)が実力の発揮を左右することを言い当てている。Moritzら(2000)は、スポーツ選手を対象とした研究をまとめたメタ分析で、自己効力感の高い選手ほど競技成績がよいという関連を示した。またSeligmanら(1990)は、大学の水泳選手に実際より遅いタイムを伝える研究を行った。その結果、失敗を悲観的にとらえる説明スタイル(出来事の原因をどう解釈するかの癖)をもつ選手ほど次の泳ぎで記録を落とし、楽観的な選手は記録を落とさなかった。大事な場面の前には、これまでの練習や成功を思い出して自分に前向きな一言をかける。それが、弱気に負けず力を出し切る助けになる。 参考:Moritzら(2000)「The Relation of Self-Efficacy Meas…」 ↗/Seligmanら(1990)「Explanatory Style as a Mechanism o…」 ↗
人物
広島東洋カープの投手(1960-1993)。「炎のストッパー」
「日はまた昇り、日は沈み、またその昇ったところに急ぎ行く」

The sun also rises, and the sun goes down.

— 旧約聖書 コヘレトの言葉(伝道の書)1:5

ヘミングウェイ『日はまた昇る』の題辞でも有名

世界は巡り、朝は必ず戻ってくる

心理学では
この一節は、心理学でいう「無常性の認識」(つらい状態もいずれ移り変わると捉えること)に通じる。悪い出来事を「ずっと続く」と捉える説明スタイル(出来事の原因の捉え方の癖)が無力感や落ち込みにつながることは、Abramsonら(1978)の改訂学習性無力感理論で論じられている。Bruehlman-Senecal & Ayduk(2015)は学生を対象とした一連の実験で、つらい出来事を数年先の視点から眺めるよう促すと苦痛が和らぎ、その背景に「この状況は永遠ではない」という感覚の高まりがあることを示した。苦しい夜には、朝がまた来ることを思い出し、今を長い時の流れの一部として眺め直すことが助けになる。 参考:Abramsonら(1978)「Learned helplessness in humans: Cr…」 ↗/Bruehlman-Senecal & Ayduk(2015)「This too shall pass: Temporal dist…」 ↗
出典に諸説あり
「やまない雨はない」

— 日本で流通する言い回し 出典不詳

※出典不詳。「明けない夜はない」と対で使われる

どんな悪天候にも必ず終わりがある

心理学では
この名言は、つらい感情は時間とともに薄れていくという「感情の一時性(苦しさはいつまでも同じ強さでは続かないこと)」への気づきを表している。Gilbertら(1998)は、失恋や昇進の見送り、選挙での落選などに直面した人の予測と実際の気持ちを比べた。その結果、人は嫌な出来事による落ち込みが続く期間を、実際よりも長く見積もりがちであることを示した(持続性バイアス)。さらにBruehlman-Senecal & Ayduk(2015)の実験では、ストレスのかかる出来事を「数年後の自分から見たらどうか」と時間的距離(時間を置いた視点)をとって考えるよう促すと、苦痛がやわらいだ。その背景には「この状況はいずれ過ぎる」という感覚の高まりがあった。落ち込んだときは一年後の自分を思い浮かべ、この雨にも終わりがあると言い聞かせることが、今日を乗り切る支えになる。 参考:Gilbertら(1998)「Immune neglect: A source of durabi…」 ↗/Bruehlman-Senecal & Ayduk(2015)「This too shall pass: Temporal dist…」 ↗
「死ぬまでは、すべてが人生だ」

Hasta la muerte, todo es vida.

— ミゲル・デ・セルバンテス 『ドン・キホーテ』後編(1615)

命ある限り、どんな状況もまだ「人生の途中」であり、挽回も転換も可能だ、という言葉。夢想家と笑われながら騎士道を生きたドン・キホーテの物語全体を貫く生の肯定

心理学では
この言葉は、心理学でいう希望(目標への道筋を見いだし、そこへ向かう意志をもつこと)を、人生の最後まで手放さない構えである。McAdamsら(2001)は中年期の成人と学生の人生の語りを分析し、つらい出来事を「そこから良いものが生まれた」と語る救済の筋書き(苦境が好転へつながる物語)をもつ人ほど、幸福感が高く、抑うつが低いことを示した。またLevyら(2002)の縦断研究では、年を取ることを前向きにとらえていた中高年ほど、その後長く生きていた。うまくいかない日も人生の評価をそこで確定させず、いまを「物語の途中」と見なすことが、次の一歩を選ぶ力になる。 参考:McAdamsら(2001)「When Bad Things Turn Good and Good…」/Levyら(2002)「Longevity increased by positive se…」 ↗
人物
スペインの作家(1547-1616)。近代小説の祖とされる
「雨が降らなければ、虹は見えない」

No rain, no rainbow.

— ハワイのことわざ ハワイで広く親しまれる言い回し

虹の名所ハワイならではの楽観の言葉。うっとうしい雨(困難)は、虹(恵み)が生まれるための条件そのものでもある。困難と恩恵がひとつづきであることを、誰もが知っている景色で示す

心理学では
この言葉は、心理学でいう「ベネフィット・ファインディング」(逆境の中に得たものを見いだすこと)と重なる。Helgesonら(2006)は、病気などの逆境を経験した人々を対象とした研究をメタ分析し、困難から得たものを見いだす人ほど抑うつが少なく、前向きな気持ちが高いことを報告した。またSeeryら(2010)は全米規模の縦断研究で、ある程度の逆境を経てきた人ほど、逆境がまったくない人や非常に多い人よりも心の健康が良好で、最近の困難からも影響を受けにくいことを示した。ただし、つらさの渦中では無理に意味を探さず、落ち着いてから振り返るとよい。つらい出来事のあとに「何が残ったか」を書き出す習慣が、次の虹に気づく目を育てる。 参考:Helgesonら(2006)「A meta-analytic review of benefit …」/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
「彼らは私たちを埋めようとした。だが、私たちが種だとは知らなかった」

Quisieron enterrarnos, pero no sabían que éramos semillas.

— メキシコの民衆スローガン 原型はギリシャの詩人ディノス・クリスティアノプロスの詩句(1978)

原型はギリシャ語の二行詩。スペイン語圏で民衆の言葉として定着

「埋める(抹殺する)」つもりで土をかけても、種にとってその土は発芽の場所になる ── 抑圧をむしろ再生の条件へと読み替える言葉。メキシコの社会運動で広く唱えられ、世界に広がった

心理学では
この言葉は、心的外傷後成長(つらい出来事との格闘を経て、以前より強さや絆を得ること)と、集合的レジリエンス(集団で逆境を乗り越える力)を言い表している。Tedeschi & Calhoun(1996)は大学生への質問紙研究で、深刻な出来事を経験した人ほど、自分の強さや人間関係について肯定的な変化を報告することを示した。Druryら(2009)は緊急事態の生存者への聞き取りから、「私たち」という意識を共有した人ほど互いに助け合っていたことを見いだした。ただし痛みは無理に美化せず、仲間の支えと組み合わせるとよい。苦しい局面ほど、仲間と「ここから何が芽吹くか」を語り合うことが再生の力になる。 参考:Tedeschi & Calhoun(1996)「The posttraumatic growth inventory…」 ↗/Druryら(2009)「Everyone for themselves? A compara…」 ↗
「まことに、困難とともに、安楽がある。まことに、困難とともに、安楽がある」

Verily, with hardship comes ease.

— クルアーン 第94章「胸を開く章」5-6節

イスラム世界で最も暗誦される章句の一つ

同じ一文が二度繰り返されるのは強調のため。困難の「後に」ではなく「とともに(マア)」とあるのが要点で、苦しみの真っ只中にも安楽は同時に潜んでいる、と読まれてきた

心理学では
この名言は、心理学でいう混合感情(喜びと悲しみのような相反する感情を同時に抱くこと)の見方に重なる。苦しみが去った後ではなく、その最中にも安らぎは並んで存在するという理解である。Folkman(1997)は、エイズを患うパートナーを介護し看取った人々を追った縦断研究で、強い苦痛のさなかにも前向きな感情がたびたび生じていたことを示した。Adler & Hershfield(2012)も、心理療法を受ける人々の縦断研究で、つらさと前向きさが入り混じった体験が、その後の心の健康の改善に先立って現れることを見いだした。苦しい日にも、一杯の茶や誰かの一言に宿る小さな安らぎに目を留めることが、困難を乗り切る支えになる。 参考:Folkman(1997)「Positive psychological states and …」 ↗/Adler & Hershfield(2012)「Mixed Emotional Experience Is Asso…」 ↗
人物
イスラム教の聖典(7世紀)
「あらゆる災いが飛び出した箱の底に、最後に残ったのは「希望」だった」

— ギリシャ神話「パンドラの箱」 ヘシオドス『仕事と日』に原型(BC8世紀頃)

「希望まで閉じ込められた(人に届かなかった)」とする解釈もある

好奇心から箱(原典では甕)を開けたパンドラの手で、病や苦しみが世界に放たれた。しかし底には希望だけが残った ── 災いに満ちた世界でなぜ人が生き続けられるのかを説明する、希望についての最古の神話

心理学では
この神話は、災いが消えなくても希望は手元に残るという、希望理論(Snyderが提唱した、目標へ向かう意志と、そこへ至る道筋を思い描く力としての希望)の核心を物語っている。Snyder(2002)は、希望を苦難から目をそらす楽観ではなく、障害に直面したときにこそ働く心の資源として位置づけた。Ongら(2006)は高齢者が日々のストレスと感情を記録する日誌研究を行い、希望の高い人ほど、ストレスの多い日にも否定的な感情が強まりにくいことを示した。つらい時期には、問題を一気に消そうと急ぐより、明日できる小さな一歩とその道筋を一つ書き出す。それが箱の底に残った希望を取り出す助けになる。 参考:Snyder(2002)「TARGET ARTICLE: Hope Theory: Rainb…」/Ongら(2006)「Hope as a source of resilience in …」 ↗
人物
ギリシャ神話。ヘシオドスが記録した人類の起源譚の一部
「苦労の果てに、楽しみが来る」

— 韓国のことわざ 고생 끝에 낙이 온다(コセン クッテ ナギ オンダ)

「苦尽甘来(くじんかんらい)」という漢語形でも知られる

いまの苦労は永遠には続かず、やがて楽に転じる ── 「苦あれば楽あり」の韓国版として、受験や下積みの時期に励ましとして贈られる定番のことわざ。苦楽を直線ではなく交替のリズムとして捉える東アジア共通の時間感覚

心理学では
このことわざは、苦境を永続的なものではなく一時的なものと捉える楽観的な説明スタイル(出来事の見通しを解釈する心の癖)を表している。Jiら(2001)は中国と米国の学生を比べる実験を行い、中国の学生ほど物事の流れがやがて反転すると予測しやすいことを示した。苦楽が入れ替わるという東アジアの時間感覚を映す結果である。またSeeryら(2010)は米国の全国規模の縦断調査で、中程度の逆境を経験してきた人ほど、逆境のない人より心の不調が少なく、生活満足度が高いことを見いだした。ただし苦労が重すぎるときは、周囲の支えと組み合わせるとよい。つらい時期には「いまは通過点だ」と言葉にし、その先の楽しみを思い描くことが踏ん張る力になる。 参考:Jiら(2001)「Culture, Change, and Prediction」 ↗/Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」
「絶対、だいじょうぶだよ」

— 木之本桜(CLAMP『カードキャプターさくら』) 『カードキャプターさくら』(講談社・NHKアニメ)

困難な魔法に挑む少女の「呪文」のような決め台詞。根拠の提示ではなく、まず「だいじょうぶ」と自分と仲間に宣言することで、身体と場を挑戦に向けて整える ── 子どもたちに最も浸透した自己教示の型

心理学では
この言葉は、心理学でいうセルフトーク(自分に向けて語りかける言葉)、とりわけ挑戦の直前に気持ちを奮い立たせる「動機づけ的セルフトーク」にあたる。Hatzigeorgiadisら(2011)はスポーツ場面のセルフトーク研究をメタ分析し、自分への前向きな声かけが課題の成績を高める効果をもつことを示した。またKrossら(2014)の実験では、緊張するスピーチの前に「私」ではなく自分の名前や「あなた」で語りかけるよう促された人は、不安が小さく、出来ばえも良かった。友だちに言うような「だいじょうぶだよ」という口調は、まさにこの距離をとった声かけである。大事な場面の前に、自分にも仲間にも短い合言葉をかけることが、一歩を踏み出す助けになる。 参考:Hatzigeorgiadisら(2011)「Self-Talk and Sports Performance」 ↗/Krossら(2014)「Self-talk as a regulatory mechanis…」 ↗
人物
CLAMPは日本の漫画家集団
「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまで、何が入っているか分からない」

Life is like a box of chocolates. You never know what you're gonna get.

— フォレストの母(映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』) ロバート・ゼメキス監督(1994、米国)

母が息子に人生を手渡すときの比喩。中身が分からないことを「不安」ではなく「チョコレートの箱」── つまり、何が出ても基本は甘い ── として枠づける。不確実性そのものを楽しみに変換する母の教育

心理学では
この名言は、先の見えなさを「脅威」ではなく「楽しみ」として受け止める、認知的評価(出来事の意味づけ)の転換を描いている。Lazarus & Folkman(1984)は、同じ出来事でも、その人がどう評価するかによってストレスの感じ方や対処が変わると論じた。さらにWilsonら(2005)は大学生を対象にした実験で、思いがけない親切を受けたとき、その送り主や理由が分からないままの人のほうが、よい気分が長く続くことを示した。不確かさは、喜びを長持ちさせる味わいにもなるのである。ただし不安が強いときは、小さな未知から楽しむ練習を重ねるとよい。予定のない散歩や初めての店といった「開けてみるまで分からない箱」を日々に一つ置くことが、先の読めない人生を味わう力につながる。 参考:Lazarus & Folkman(1984)「Stress, Appraisal, and Coping. New…」 ↗/Wilsonら(2005)「The Pleasures of Uncertainty: Prol…」 ↗
人物
アカデミー賞作品賞受賞作
「不満は探せばいくらでも出てくる。楽しいことも、探せばいくらでも出てくる。どうせ探すなら、楽しいことを探したほうがいい」

— 所ジョージ 発言・著書の趣旨として広く流通

不満も楽しみも「探した分だけ見つかる」── つまり量は世界側ではなく検索側で決まっている、という所流の楽観哲学。ガレージでの遊びと工夫を仕事にしてきた生き方そのものが、この言葉の実演になっている

心理学では
この名言は、心理学でいう選択的注意(膨大な情報の中から一部だけに目を向ける心の働き)の性質をよく言い当てている。同じ一日でも、何を探すかによって心に残る出来事は変わる。Emmons & McCullough(2003)は大学生を対象に、毎週「感謝したこと」を書く群と「わずらわしかったこと」を書く群を比べる実験を行った。その結果、感謝したことを書いた群のほうが生活への満足感が高く、翌週の見通しも楽観的になった。Seligmanら(2005)も、その日のよかったことを三つ書く介入に、幸福感を高め、抑うつ症状を和らげる効果を見いだしている。寝る前に今日の楽しかったことを三つ書き出す習慣が、楽しいことを探す目を育てる。 参考:Emmons & McCullough(2003)「Counting blessings versus burdens:…」/Seligmanら(2005)「Positive Psychology Progress: Empi…」
人物
日本のタレント・ミュージシャン(1955-)
「運は、貯金できる。困ったことが起きたら、「今、運を貯めてるんだ」と思えばいい」

— 萩本欽一 著書・発言の趣旨(欽ちゃんの「運の理論」)

不運や下積みを「運の支出」ではなく「運の貯金」と捉える独自の会計法。若手に雑用を頼むときも「これで運が貯まるよ」と声をかけたという ── 理不尽な時期の意味づけを変える、芸能界で語り継がれる運の哲学

心理学では
困ったことを「運の貯金」と受け止めるのは、心理学でいう肯定的再評価(出来事の意味を前向きに捉え直すこと)にあたる。Seeryら(2010)は成人を数年にわたり追跡した縦断研究で、逆境をまったく経験しなかった人より、ほどほどの逆境をくぐってきた人ほど心の健康が良好で、新たなストレスにも強いことを示した。Crumら(2013)の実験では、ストレスを「成長の糧」と捉える映像を見た会社員は、心身の不調の訴えが減り、仕事ぶりの自己評価が高まった。ただし、つらさが大きすぎるときは人に頼ることと組み合わせるとよい。不運に出会ったら「今、貯めている」とつぶやくことが、次の一歩を踏み出す助けになる。 参考:Seeryら(2010)「Whatever does not kill us: Cumulat…」/Crumら(2013)「Rethinking stress: The role of min…」 ↗
人物
日本のコメディアン(1941-)。「欽ちゃん」として国民的人気を博した
「下を向くんじゃねえ! バレーは、いつだって上を向くスポーツだ!」

— 烏養繋心(古舘春一『ハイキュー!!』) 『ハイキュー!!』(集英社)

ミスして下を向く選手への、コーチの一喝。ボールは常に頭上にあるのだから、うつむいた瞬間にプレーは終わる ── 競技の物理的性質と心の姿勢を重ねた、スポーツマンガの傑作比喩

心理学では
この一喝は、心理学でいう身体化された感情(体の姿勢や動きが、気分や意欲に影響を返す働き)をよくとらえている。Riskind & Gotay(1982)の実験では、うつむいて背を丸めた姿勢をとった学生は、背筋を伸ばした学生よりも難しい課題を早くあきらめた。またNairら(2015)の無作為化実験では、背筋を伸ばして座った人は、背を丸めた人よりも、ストレスのかかる課題の最中に自尊感情や気分を高く保ち、話す言葉も前向きであった。ただし落ち込みが深いときは、次の一手に注意を向ける声かけと組み合わせるとよい。失敗した直後こそ、まず顔を上げて胸を開くことが、次のボールに向かう力を取り戻す助けになる。 参考:Riskind & Gotay(1982)「Physical posture: Could it have re…」 ↗/Nairら(2015)「Do slumped and upright postures af…」 ↗
人物
古舘春一(1983-)は日本の漫画家
「曲がり角の先に何があるかは、わからないの。でも、きっと一番良いものに違いないと思うの」

— アン・シャーリー(モンゴメリ『赤毛のアン』) 『赤毛のアン』(1908)。高畑勲のアニメ(1979)でも親しまれる

パブリックドメインの原作に基づく

進学を諦めて故郷に残る決断をした場面で、アンが語る言葉。道が閉ざされたのではなく「曲がった」だけであり、見えない先には良いものがある ── 制約の中の楽観の古典的表現

心理学では
アンの言葉は、心理学でいう気質的楽観性(先のことはおおむね良い結果になるという一般的な期待)を、行き先の見えない場面で発揮したものである。Scheier & Carver(1985)はこの楽観性を測る尺度を作り、大学生を対象とした縦断研究で、楽観的な人ほど試験期を経ても身体症状の訴えが少ないことを示した。さらにWroschら(2003)は、学生や重い病気の子をもつ親などを対象とした調査で、かなわない目標から離れ、新しい目標に取り組み直せる人ほど主観的幸福感(自分の暮らしへの満足や心地よさ)が高いことを報告した。道が閉ざされたのではなく「曲がった」と受け止めるアンの姿勢は、まさにこの切り替えである。予定が崩れたときは、失ったものを数えるより、次に向かえる目標を一つ書き出すことが助けになる。 参考:Scheier & Carver(1985)「Optimism, coping, and health: Asse…」/Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗
人物
L・M・モンゴメリ(1874-1942)はカナダの作家
「奇跡も、魔法も、あるんだよ」

— 巴マミ(『魔法少女まどか☆マギカ』) シャフト(2011、新房昭之監督)

絶望を描く物語の序盤で、先輩魔法少女が後輩に告げる言葉。作品全体はこの言葉を過酷に検証していくが、最終話で「本当にあった」ことが示される ── 希望の言葉が試練を経て回収される構造ごと愛される台詞

心理学では
この台詞は、絶望を直視したうえでなお可能性を信じる「悲劇的楽観主義」(フランクルが説いた、痛みを否定しない希望)に重なる。Oettingenら(2001)の実験では、望む未来を思い描くだけでなく、行く手の障害もあわせて考える「心的対比」(願いと現実を並べて考える方法)を行った人は、実現の見込みがある目標ほど、目標への関与や行動が高まった。またTedeschi & Calhoun(2004)は、逆境と格闘した人に新たな意味や強さが育つ「心的外傷後成長」(困難を経た心の成長)について、研究の知見をまとめて論じている。希望は、困難から目をそらさないときに力を持つ。つらい時こそ、願いと障害を並べて書き出し、次の一歩を探すことが支えになる。 参考:Oettingenら(2001)「Self-regulation of goal-setting: T…」 ↗/Tedeschi & Calhoun(2004)「TARGET ARTICLE: "Posttraumatic Gro…」
人物
虚淵玄脚本。深夜アニメの金字塔
「神様は、一つのドアを閉めるとき、どこかで窓を開けてくださる」

When the Lord closes a door, somewhere He opens a window.

— マリア(映画『サウンド・オブ・ミュージック』) ロバート・ワイズ監督(1965)

修道院を出されるマリアが、不安の中で自分に言い聞かせる言葉。閉じたドア(喪失)の事実を認めながら、開いた窓(代替経路)の存在を信じる ── ヘレン・ケラーの「扉」と同型の、機会の保存則への信頼

心理学では
この言葉は、希望理論でいう「経路思考」(目標への道を複数思い描ける力)と、叶わなくなった目標から新たな目標へ移る「目標の再関与」を表している。Snyderら(1991)は希望を「意志」と「経路」の二側面から測る尺度を作り、希望の高い人ほど困難に前向きに対処する傾向があることを示した。Wroschら(2003)は、大学生やがんの子をもつ親などを対象とした研究で、達成困難な目標を手放して新しい目標に取り組める人ほど、主観的幸福感が高いことを報告している。何かを失ったときは、閉じたドアを悔やむだけでなく「ほかにどんな窓があるか」を紙に書き出してみることが、次の一歩につながる。 参考:Snyderら(1991)「The will and the ways: Development…」/Wroschら(2003)「Adaptive Self-Regulation of Unatta…」 ↗
人物
ジュリー・アンドリュース主演。実話に基づくミュージカル映画
「幸福は、幸福を呼ぶ」

— 宇野千代 『幸福は幸福を呼ぶ』(1970)ほか

「幸福だと思っていると、本当に幸福がやってくる」── 98歳まで現役で書き、恋し、商いをした作家の実感論。機嫌の良さは人を呼び、機会を呼び、また機嫌を良くする、という上昇螺旋の生活哲学

心理学では
この名言は、ポジティブ感情の「上方スパイラル」(良い気分が発想や行動の幅を広げ、その成果がまた良い気分を生む循環)を言い当てている。Fredrickson & Joiner(2002)は、大学生に期間をあけて2回回答してもらう縦断研究を行った。その結果、ポジティブ感情が多い人ほど視野の広い対処(一歩引いて解決策を考える工夫)が増え、それがその後のポジティブ感情の増加とも結びつくという循環が見いだされた。Lyubomirskyら(2005)のメタ分析(多数の研究の統合)も、幸福感の高い人ほど仕事や人間関係がうまくいきやすく、幸福感が成功に先立つ傾向があることを示している。日々の小さな喜びを味わい、機嫌よく人と接することが、次の幸福を呼び込む入り口になる。 参考:Fredrickson & Joiner(2002)「Positive Emotions Trigger Upward S…」/Lyubomirskyら(2005)「The Benefits of Frequent Positive …」
人物
日本の作家・実業家(1897-1996)。「私、何だか死なないような気がするんですよ」の名言でも知られる
「心配すんな。全部上手くいく」

— 桓騎(原泰久『キングダム』) 『キングダム』(集英社)

絶望的な戦況で、元野盗の将軍・桓騎が事もなげに放つ口癖。根拠は示されない ── だが、この一言で兵の浮足立ちが収まり、視野が戻り、実際に打開の一手が生まれていく。楽観の言葉が集団の遂行を変える様を描いた台詞

心理学では
この台詞は、リーダーの落ち着きが部下にうつる「感情伝染(感情が周囲に広がる現象)」と、前向きな感情が視野を広げる「拡張-形成理論」の考え方で説明できる。Syら(2005)はリーダーの気分を操作した実験で、前向きな気分のリーダーのもとではメンバーの気分も明るくなり、集団の協調も良くなることを示した。Fredrickson & Branigan(2005)も、ポジティブ感情を引き起こすと注意の幅が広がることを実験で確かめている。ただし、楽観の言葉は現実の状況把握と組み合わせるとより力を発揮する。苦しい局面でこそ、まず自分が落ち着いた一言を口にすることが、周りの視野を取り戻す助けになる。 参考:Syら(2005)「The Contagious Leader: Impact of t…」 ↗/Fredrickson & Branigan(2005)「Positive emotions broaden the scop…」
人物
原泰久(1975-)は日本の漫画家

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名言の収集・分類・解説はAI(Claude)を活用し、はぴテックが確認したものです。「出典に諸説あり」の名言は、その人物の言葉として流通しているものの一次資料での確認が難しいもの、「要旨」は趣旨を短くまとめたものです。心理学の補足は、名言の知恵を心理学・幸福研究の知見で読み解いたもので、引用した論文は学術データベースで実在を照合しています。 解説付き全選(PDF) / 一覧(Excel)
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