適応と主観的幸福感のセットポイント・モデル
Adaptation and the Set-Point Model of Subjective Well-Being
Richard E. Lucas(2007)Current Directions in Psychological Science, 16(2), 75–79
大規模パネル研究から、離婚・死別・失業・障害などの出来事後に幸福は完全には戻らず、適応は必然ではないことを示した。
要旨根拠:抄録
快楽順応(=生活環境が変化しても、時間とともに幸福度が元の水準に戻っていく過程)について、従来の主流モデルは、人はほぼどんな出来事にも適応し、幸福度は生物学的に決まったセットポイント(=個人に固有の基準値)の周りで変動するにすぎないと考えてきた。著者は、近年の大規模パネル研究(=同じ人を長期間追跡する調査)の証拠に基づいてこの結論を再検討した。その結果、生まれつきの要因は確かに重要であり、ある程度の適応も起こるものの、離婚、配偶者との死別、失業、障害といった出来事は主観的幸福感の持続的な変化と関連していた。また、適応の程度には大きな個人差があることも示された。著者は、幸福度は変わりうるものであり、適応は必然ではないと結論づけ、幸福を高める政策や介入の意義を支持した。
関係メモ——この研究のその後
- 先行・基盤W0470 Brickman(1978)の快楽のトレッドミル(どんな出来事にもやがて慣れる)とW0474 Lykken & Tellegen(1996)の遺伝的セットポイント論に対し、著者自身のW0532 Lucas(2003)(結婚・配偶者との死別)とW0535 Lucas(2004)(失業)のドイツ長期パネル分析をまとめ、適応は不完全で個人差が大きいことを示した
- 後続・発展W0292 Diener・Lucas・Scollon(2006)の適応理論の修正と合わせ、セットポイントは変わりうるという見方を定着させた
- W0449 Luhmann(2011)のメタ分析が、出来事の種類や幸福の側面(感情的幸福か人生評価か)によって適応の速さと程度が異なり、失業などでは完全には戻らないことを確認した
反証・修正は確信があるものだけ書いています。書かれていない=否定されていない、ではありません。
この論文が出てくる研究の系譜
研究のつながり
この一覧(世界 1,782本)の中での引用関係です。引用している=支持している、とは限りません。
先行研究(この論文が引用している) 8本
- W0032 喪失、トラウマ、人間のレジリエンス:極めて過酷な出来事の後に生き抜く人間の力を過小評価してきたのではないか Bonanno(2008) American Psychologist 主要400 被引用 6,471
- W0039 頻繁なポジティブ感情の効用:幸福は成功をもたらすのか Lyubomirsky(2005) Psychological bulletin 主要400 被引用 7,237
- W0133 主観的幸福感――30年の進歩 Diener(1999) Psychological Bulletin 主要400 被引用 3,418
- W0292 快楽の踏み車を超えて:ウェルビーイングの適応理論の改訂 Diener(2006) American Psychologist 主要400 被引用 1,854
- W0470 宝くじ当選者と事故の被害者——幸福は相対的か? Brickman(1978) Journal of Personality and Social Psychology 主要400 被引用 2,198
- W0474 幸福は確率的な現象である Lykken(1996) Psychological Science 主要400 被引用 1,641
- W0532 適応と幸福のセットポイントモデルの再検討――婚姻状態の変化への反応 Lucas(2003) Journal of Personality and Social Psychology 主要400 被引用 1,314
- W0535 失業は生活満足度のセットポイントを変える Lucas(2004) Psychology Science 主要400 被引用 1,272
後続研究(この論文を引用している) 8本
- W0189 主観的ウェルビーイング研究の進展 Diener(2018) Nature Human Behaviour 主要400 被引用 1,748
- W0449 主観的ウェルビーイングと人生の出来事への適応:認知的・感情的ウェルビーイングの違いに関するメタ分析 Luhmann(2011) Journal of Personality and Social Psychology 主要400 被引用 1,270
- W0464 強さと脆弱性の統合(SAVI):成人期を通じた感情的ウェルビーイングのモデル Charles(2010) Psychological bulletin 主要400 被引用 1,068
- W0479 セルフ・コンパッションとウェルビーイングの関係:メタ分析 Zessin(2015) Applied Psychology: Health and Well-Being 被引用 1,134
- W0638 マインドフルネスは気づきを広げエウダイモニックな意味を築く:マインドフルなポジティブ感情調整のプロセスモデル Garland(2015) Psychological Inquiry 被引用 686
- W0677 主観的ウェルビーイング研究の新知見と今後の方向性 Diener(2012) American Psychologist 被引用 680
- W0762 包括的スライビング尺度(CIT)と簡易スライビング尺度(BIT)の開発と妥当性検証 Su(2014) Applied Psychology: Health and Well-Being 被引用 546
- W0938 心理的レジリエンスの時間的要素:個人・家族・コミュニティ研究のための統合的枠組み Bonanno(2015) Psychological Inquiry 被引用 462
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- 同年同分野で
- 上位 0.2%
- 分野(OpenAlex)
- Psychological Well-being and Life Satisfaction
- 主要400の選定
- 専門家判断(古典・定番)
被引用数の取得日:Semantic Scholar 2026-10-01、OpenAlex 2026-10-02。Google Scholar より少なめに出るデータベースの値なので、順位の目安としてお使いください。
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